『よろしくお願いします！』
「はーいよろしくね」

冷たいコンクリートに声が何重にも反射する。私たちの拠点は主な施設は地下にある。私がいる訓練場もそうだ。ナイフを持つ手に力を入れて目の前の敵、おついちさんを見据える。

「うん、いい目をするようになった。じゃあいつも通り来なよ」

緑色の優しい目は、殺気を含んで鈍くひかっている。いつになく挑発的なおついちさんに背筋が震えた。

『いきます』

一気に間合いを詰めると彼の首筋を狙ってナイフを滑らせる。おついちさんは難なく避けると私の右足を蹴った。

『いっ！』

バランスを崩されれば立て直すのはかなり難しい。重心を左に切り替えると左足を軸に肋に回し蹴りを叩き込む。おついちさんはそれを腕でガードすると後ろに飛び退いた。

「っやるじゃん」
『おついちさんのおかげです』

弾かれて、斬り込んでを繰り返す。と、足元がもつれて軽くよろめいたその時、おついちさんの隙が一瞬見えた。その一瞬を逃さず体勢を整えると彼の鳩尾に1発、拳を入れた。

「ぐっ？！」
『やった！入った！』

おついちさんが苦しそうに顔を歪めた次の瞬間。私は地面に転がっていて私のナイフは首に当てられていた。

「あきちゃん、敵を確実に倒してから安心しないと」
『あ、れ？』
「鳩尾のあれは効いたよ〜おついちさん遂に本気出させられたわ」

そう言って差し出された手を取って立ち上がる

『参りました…今回はいけたと思ったんだけどなぁ』
「いい動きできるようになってきてるから、あとはすぐ気を抜かないこと。まぁ僕を倒すんだったらあと1年、いや2年だな」
『ええ〜…そんなに…』
「そんな事言うんだったら、もうおついちさんあきちゃんの訓練つけませーん」
『ええ？！それは嫌です！ごめんなさい！』
「えー？どーしよっかなー」
『ちょっおついちさん！』

逃げるように走っていくおついちさんを慌てて追いかける。相手がおついちさんだからか、おちょくられても嫌な気は起こらず、逆に楽しかった。いつまでもこんな日が続きますように