短編集
御名前
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「ただいまー。悠いるー?」
「お、おう。居る。居るけどもよ。」
靴を脱ぎ終えたあまねが部屋へレジ袋を手に引っ掛けて来ていた。
「ちょっと今日は仕事が早めに終わったから、一緒に夕飯にしようと思って買ってきたんだけど、夕飯まだ食べてないよね?」
「………………………………。」
返事が無く不思議に思ったので、悠の顔をまじまじと見た。
「…………聞いてる、悠?」
「…………ただいまって、なんか、その……グッと来てだな、話が入って来ないんだ。」
「え?ああ、そう言うこと?私も一人暮らしだから中々言う機会無いけど……何となく言っちゃった。……その言い方から嫌じゃ無かったみたいだから良かったけど……。」
「おお、俺にも言わせてくれっ、……おかえり、あまね。」
「ただいま、悠。……なんだか新婚さんみたいだよね。」
「…………お、おう。」
相変わらずな不器用さを愛おしく思う私も病気だな……と思いながら悠に抱きついた。
――――――――――――
「…………はー、疲れたー。」
突然決まった休日出勤……。
可愛い後輩のミスが発覚して、取引先に謝罪の連絡をして、済代替案を出し、改めて取引先まで向かい謝罪を済ませなんとか取り繕う事が出来た……が。
今日は悠と久々に遠出しようと決めてたのに……。朝早く家を出て、真っ暗闇の中ドアを開けなきゃいけない……もう寝てるかな……。
ゆっくりと扉を開けると、部屋の電気はついていた。
「おかえり、あまね。帰ったか。こんな夜遅くまで休日出勤は大変だったな。」
「……悠……。」
「お腹空いてるだろ?いや、もう食べたか?」
「…………ごめんね。出掛けるの……もう無理だよね、間に合わなかった。」
「俺とのお出かけなんていつでも出来るだろ?な?今日は後輩を助けたいっていうかっこいい姿、俺は誇らしかったぞ?」
ボロボロと涙が零れてきた。
「……真っ直ぐなあまねは好きだ。だがな、わがままなあまねも好きだからな。」
「ごめんね。……うぅ、悠と出掛けたかった、今日は電車で遠出して、ジェラート食べて、団子食べて、コロッケ食べて、美味しい珈琲もおさえてて、…………一緒に行きたかったっ。」
「調べてくれてたんだな。……食べ歩きか。……ダイエットするとか言って無かったか?あまね。」
私を優しく抱き締めてくれ、頭を優しく撫でてくれる。
「ダイエットは今度から、するから、……お土産も買いたいの、決まってた。」
「うんうん、行きたかったなー。」
「…………お腹空いた。」
「お、今日は肉じゃがと味噌汁とポテトサラダだ。」
「……じゃがいも使い回してる……、味噌汁にも入ってるでしょ。」
「まあまあ、食べてみろ。味には自信あるぞ。」
「ふふ……食べたい。」
涙を拭い、ゆっくりと立ち上がった。
「…………ただいま、悠。」
「おかえり、あまね。」
どちらからともなく差し出した手を繋ぎ、二人で台所へ向かった。
(終)
