The 心理学
御名前
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私は慌てて席に着いた。
「おっ、ギリギリだねー。」
千歳が悪い顔をしながら笑っていた。
「惜しかったなー。あと2分の遅刻であまねの奢りだったのになー。」
「もう、間に合ったんだからいいじゃん?エリックの頼んでるスコーン美味しそう。ちょっと頼んでくるね。」
あまねはドタバタと席に鞄を置き、早歩きでレジに向かって行った。
「なーんか最近、あまねの遅刻ギリギリ多くない?」
「そうか?一番もギリギリ遅刻するしそんなもんじゃねーのか?」
「それだけじゃなくてさ、連絡も」
「なんの話しー?私の事ー?」
あまねはトレーにコーヒーとスコーン、色とりどりのドーナツを乗せて戻ってきた。
「……それ、全部食べるのか?」
「千歳とエリックにお裾分け!ちょっとギリギリだったし。」
「ありがとー、あまね。……そう言えば連絡が朝に帰って来たんだけど、見てなかったー?」
「あ、ごめんね。ちょっとお手伝いとか色々あって、返信出来なかったんだよね。」
私の明らかな目の泳ぎに、2人は顔を見合せて頷きエリックがじっと見てきた。
「色々ってなんだ?返信くらいパッと返せるだろ?」
「えっと、昨日は天佑のお手伝いに行ってたんだよ。」
「……ねえあまね。昨日の事全部教えて?」
「いいよ。昨日はねー。」
――――――――――――――――――
今日は一日フリーの日。明日は千歳とエリックとカフェでお喋りするから、雑貨屋さんでも覗いて2人にプチプレゼントでも用意しようかなーとか、お出かけの準備をしている所に電話が鳴った。
「……天佑からだ。……どうしたんだろ?…………もしもーし、どうしたの?」
「今日フリーだから暇だと思って今から神室町行く?」
「……神室町?いやー、異人町で少し買い物するつもりだからまた今度にするよー。」
「そう?じゃあ一緒に行こうよ買い物。俺の店の買い出しもしたかったし。」
「そっか、天佑はお店の買い出しもやってるんだね。いいよ、お手伝いするよ。」
「家の近くまで迎えに行くよ。最近治安が少し悪いからね。」
「あははは、 横浜流氓元総帥様の隣なら安心そうだね。じゃあマンションの入り口の所で待ってるね。」
――――――――――――――――――
「って感じで天佑の買い出しと2人へのプレゼント探しに出たんだよね。」
あまねの話しをまだ少ししか聞いていないけど、少しずつ胡散臭そうな匂いに眉間に皺がよってしまう。……あまねはどう見てもプレゼントを持っていなかったから。
「……千歳、最後まで聞いて判断した方が良くないか?」
「分かってるよ、トミー。ごめんね、あまね。続きは?」
――――――――――――――――――――
私は玄関から出ると天佑がエントランスの所で待っているのが見えたので慌てて、階段を使って降りた。
うちのエレベーター遅いんだよね。2階だったら階段の方が早いし。
急いで走ると、私に気が付いた天佑が手を振っていた。
「お待たせー、天佑。ごめんね、待った?」
「いいや、全然。エレベーター使いなよ。疲れるでしょ?」
「天佑が見えたから急いだんだよー。」
「えらいねー。よしよししてあげようかー?」
「子どもじゃないからっ。」
「じゃあ何か奢ってあげるよ。何食べたい?」
「え……?じゃあー甘いもの!あっやっぱりたこ焼き!」
「どっちも奢るよ。今日は買い出しのお手伝いしてもらうし。」
それから、何件か回って注文の確認したり、購入したりして、お店に帰り着いた。
「重たかったでしょ。助かったよ。」
「いいよー。」
「じゃあたこ焼きと甘いものね。……そう言えばあまねの買い物って何だったの?聞いてなかったよね?」
「明日千歳とエリックとお茶するんだけど、プチプレゼントしようと思っててね。雑貨屋さんに行こうかなって感じ。」
「俺には無いの?」
「へ?だって今日買いに行くつもりだったから無いよー。」
「じゃあ俺の分もプレゼントしてよ。なんでも嬉しいから。」
「じゃあうまい棒とかでも?」
「勿論だよ。あまねが選んでくれたプレゼントだからね、嬉しいよ。」
「冗談だよ。いいよ、天佑の分も用意するよ。……でもそんな大層な物は買えないからね?しがないOLだよ?」
「プチプレゼント、楽しみだなー。」
「っっっハードル上げないでよっっ。」
「あはははー、別にプレゼントはあまねでもいいよー。」
「何言ってんのよ、食費かかるよー。」
「じゃあまずはたこ焼きとカフェに行こうか。」
「たこ焼きだーー!私2パック食べるからねー。」
――――――――――――――――
「って流れで買い出しが終わって、たこ焼きを食べに向かったの。」
「…………あんたねえ…………。」
「……あまねは元々何をしに家を出たんだ?」
「なんで2人とも深刻そうな顔してるの?ドーナツ食べる?」
あまねはまだまだトレイに詰んであるドーナツを指さすと、千歳とエリックは口々にお礼を言いながらドーナツに手を伸ばしていた。
「まあまあ、2人ともカリカリしないでよ。でねー、たこ焼き3パック買って座って食べて、雑貨屋さんに行ったの。はい、プレゼント!」
あまねはカバンから小さな袋をそれぞれ2人の前に置いた。
「開けてみてー。」
袋を開けると千歳は可愛い装飾の付いたヘアゴム。エリックにはメガネ拭きが入っていた。
「猫ちゃんのヘアゴムだね。可愛い。」
「こっちも猫のメガネ拭きだ。……俺が使って……変じゃないか?」
「2人が似合いそうな色味にしたよ。猫は私の趣味だけどね。マンボウと迷ったんだけど、天佑が猫のほうがいいんじゃない?って。」
「……もしかしてだけど、その鞄に付いているマンボウのキーホルダーがその迷ったマンボウ?」
「……可愛い……のか?……趙には何をプレゼントしたんだ?」
「マンボウだよ。天佑も同じキーホルダーが可愛いってー。」
「…………。」
「……じゃあ雑貨屋に寄って用事は終わったから、甘い物食べて解散したのね?」
「いやーそれが。」
――――――――――――――――――――
「じゃあ今からカフェでパフェ?ケーキでも食べる?」
「うーん、たこ焼き食べ過ぎちゃったからさっぱり系がいいなー。シェイクでも……」
「俺の店で杏仁豆腐でも食べる?あまねはすぐにお腹が空くから、ご飯もすぐ提供できるけど?」
「……それいいね!ちなみに炒飯もデザートだから奢りだからね。」
そのまま話しながらお店に戻って、約束通り杏仁豆腐を食べている間に、天佑が料理を何品も用意してくれて机に並べた。
「こ、こんなにいいの?」
「俺も食べるけどね?温かいうちに召し上がれ?」
「いっただきまーす!」
熱々の炒飯、麻婆豆腐、焼売、エビチリ、餃子っっ。
「せっかくだし、一緒に紹興酒なんてどう?」
「えー、昼からはちょっと……」
「じゃあ俺のお気に入りのボトル開ける?」
「いやいや飲まないよ!?」
「ボトルは冗談だよ。」
とりわけのお皿に炒飯をよそいながら、私の方ににコリと笑った。
「じゃあ一杯だけ付き合ってよ。乾杯だけ。」
「……一杯だけだからね?」
私は天祐に笑い返し、コップを準備するためにたち上がった。
⸻
「……紹興酒合うね!美味しい!」
「そうだよー。美味しく食べてもらうために用意したからね。」
「なんか奢り!って言ったけど流石にお金払うよ。キチッと請求してね。」
「えー?いいよ……って言ってもあまねは聞かないだろうから、今度奢ってよ。」
「さっすが天佑、分かってるね!お店探しておくね。」
「じゃあ、もう少し飲もう?」
「えー。そんな高級なお店は予約できないからねー。」
「分かってるよ。あまねの胃袋を満たせるお店は個人的に気になるからおすすめでよろしく。」
「迷うなー。美味しいお店多いからー。しかも天佑におすすめでしょー。難しいーー。」
「人の好みは評価しないよ。好みでしょ?」
「私は期待しちゃうよ?仮に天佑が美味しいと思うお店でしょ?期待するよー。」
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「……で、まんまと飲んだ訳ね?……どのくらい?」
「覚えてないんだよね……。最初とおかわりの1杯までしか。」
「……まさかお持ち帰りはされてないよな、あまね?」
「…………多分……。」
「多分ってどういう事だ?多分って?」
「ちょっと待ってー、思い出すから……。」
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ゆっくりとご飯を食べて話して飲んでいたらあっという間に夜になっていた。
「うー、そろそろかえろうかなー。」
「一人で歩ける?」
「うーーん、だいじょおーぶそう。」」
「大丈夫そう……ねぇ。」
立ち上がることすら出来ないあまねを見て、少し飲ませ過ぎたと思いはしたが、直ぐに手を差し出した。
「送るよ。今日はもう帰ろう。」
「ごめんねー、てんゆー。ちょっとおしっこいきたいっ。」
「了解、まずはトイレまで手を貸そうか。」
それから、おんぶして貰って私の家まで送ってくれて、気持ち悪いと言うと天佑は少し急いで私の部屋に入り、私をソファー寝かせた。
「ちょっと待ってて。水持ってくるから。」
「……ごえんねー、冷蔵庫に水入ってるからー。天佑も好きなの飲んでー。」
少しして、天佑が2本ペットボトルを持ってきた。
「ありがとねー、ごえんねー。」
「飲みすぎちゃったみたいだね、大丈夫?」
「うー、横になってたら大丈夫そう。」
「しばらく様子みてから帰るよ。心配だし。」
「そう……?でも遅くなっちゃうし……。じゃあうちに泊まっちゃえば?ベッド使っていいよー。シャワーとかも好きに使っていいから。」
「普通、家主がベッドじゃない?」
「トイレに近いからここがベストなんだよー。」
「じゃあ手伝える様に俺もこの辺で休むよ。シャワーだけ借りるね。」
「うんー。私は明日にしよおかなー。」
他愛もない会話をして、シャワーを浴びて戻るとあまねはぐっすり眠っていた。
「……俺以外にはお酒飲んだり、簡単に部屋に入れたりしちゃダメだよ……おやすみ、あまね。」
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「……ん゛ん゛……」
ゆっくりと起き上がり時計を見た。
「……え……っ!?」
「おはよ。」
「天佑!?あれ?昨日?」
「昨日、あまねがベロベロに酔っ払ってたから送ってあげて介抱したんだよ。」
「……そうだった。……時間やばい!?」
「大丈夫だよ。昨日は風呂キャンしたからシャワー浴びてきなよ。俺は帰るよ。鍵はちゃんと閉めてね。」
「ごめんね、天佑。お茶が終わったらお店に寄るよ。埋め合わせはそこで。昨日はありがとうね。」
⸻
「って感じで、朝バタバタで飛び出してきたの。」
「…………。」
「よく分かった。」
「なんだかんだ間に合ったからね。」
「……はあ。」
「いいようにコントロールされてんな?」
「なんだかんだ……ね。」
「っていうかここのドーナツ美味しいから、天佑に買って帰ろう。」
「トミー、でも本人が幸せならいいんじゃない?」
美味しそうにドーナツを頬張るあまねを二人で見守った。
(終)
