〇〇してみた!シリーズ
御名前
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「お姉さん、1人?」
「分からない。」
「分からないのー?じゃあさー、うちの店おいでよ。1人かどうか分かるよー。」
キャッチに肩を掴まれて、歩く向きを変えられた。
「……やめた方がいい。……私は1人なのか彼氏いるのか分からないから。」
「お姉さん、今楽しくないの?俺たちと楽しも?初回サービスで安くするしー。」
そう言ったホストの手が肩から離れ、目の端のゴミ箱に吹っ飛んでいた。直ぐに私の身体も引っ張られ、抱き寄せられた。
「何しとるんや、あまね。」
「……何も。歩いていたら絡まれていただけです。……こんばんは、真島さん。」
「やっぱりワシがおらんとダメやないか。」
「……出来れば神室町に出て来たくないんですけど……。物騒なので。」
「アホか。ワシがおるやないか。安心せい。……飯や、いくで?」
物騒なのが貴方も込みなのですが……とは口に出せず、そのまま俯いた。
「あの……真島さん。今日は区切りに……しようと思っていて。」
「なんやそれ?」
「……私と真島さんは付き合っていません……よね?」
「なんや?あまねチャンはわしの女やで?」
「……………いえ…………違います。」
「何言うてんねん。……なーんや気になる男でも出来たんか?」
「……気になる……というか、ネットで知り合った人と会うんです。」
「ほな、会ってみたらええやん。」
まさかの許可が出て、私は驚きのあまり真島さんの顔を見た。真島さんとの関係は電話が掛かり神室町に顔を出すとご飯に行ったり、ホテルに行ったり。
……断ったら家まで迎えに来たのでそれ以降は必ず神室町に向かうようにしている。
「……許してくれるんですか?」
「ええで?あまねチャンが選んだ男や……。ワシの女と会う男や。どないな顔してるんかのぅ?」
「……真島さん、……あの、そろそろ行こうと思います。……この辺で……。」
私は肩を掴む黒い手袋に目をやったが、直ぐに顎を掴まれ、真島さんの方を向かされた。
「っっ……真島さん……?」
真島さんはニカッと笑った。
「ワシもついてったるわ。大事なあまねチャンの『お相手』や。挨拶くらいさせーや?」
「……それはっっ。」
「……なんや、あまねチャンが身体張ってワシを止めるっちゅーんか?……スマホ出しや。」
「……あ……ダメですっっ……。」
鞄を奪い取られて、あっさりと鞄の中からスマホも取り出されてしまい、そのままスマホを操作し始めた。
どうやっても時間の問題。
………………。
「…………アルプス……で待ち合わせをしています。」
「ええ子やないかー、あまねチャン。ほな、行くで。」
半ば引き摺られる様にアルプスに着いてしまった。
扉を開けると、クラシックが流れる静かな店内に、真島さんが足を踏み入れた瞬間、空気が物理的に重くなったのが分かった。
「ええー雰囲気や。……で、どいつや?あまねチャン。」
真島さんの楽しげな声とは裏腹に、静まり返った店内を鋭い眼光で見回していた。
ボックス席でキョロキョロと入り口を気にしていた小太りの男と、目が合った。
彼は私と真島さんを見て、直ぐに真っ青に顔色を変えた。
すかさずに真島さんはニカッと口角を上げ、男に向かってひらひらと大きな手を振ってみせる。
「お前か……あまねチャンの連れや。仲良くしよーや?」
男はガタガタと椅子を鳴らして立ち上がると、注文したばかりのコーヒーにも手をつけず、転がるようにして裏口へと逃げ出した。
「あ……っ本当にっごめんなさいっ。」
真島さんは逃げていく背中を追いかける風でもなく、鼻で笑って私の肩をさらに強く引き寄せた。
「……なんやー。あないな根性なしをあまねチャンは選んだんか?……なっさけないでー。」
私は放心していた。ただネットで恋愛相談をして……ご飯とホテルの為に呼び出される事を聞いてくれて、都合のいい女は止めよう、逃げようと話をしに来たのに……。
耳元で囁かれる、低く楽しげな声。
「……満足したか? ほな、帰るで。」
「………………。」
既に泣きそうなあまねをそのまま店から引き摺る様に出した。
「ワシの女や……あまねチャンは。……次は見逃さへんで?」
「……ごめん……なさい。」
(終)
