短編集
御名前
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「少し冷えるな。」
「最近寒いよねー。桐生さんは厚着しないの?」
「厚着すると動きにくくなるからな。常に絡まれるからそこまで寒くない……あまねも一緒に絡まれるか?」
「嫌だよ!桐生さん喧嘩ばっかりで……ていうか本当に絡まれるんだから。」
「俺と一緒に居るから絡まれるんだろ?……まあ春日と居ても同じか。」
顔を見合せてケラケラと笑った。
「あまねは春日の方に居た方が良かったんじゃないか?ハワイを楽しめた……と思うけどな?」
「私は桐生さ……いや、食べ物も居心地も日本が好き。ハワイの食べ物って……すぐに胃もたれしたし。」
桐生さんが日本に戻る時に私も一緒に戻った。心配で堪らなかった。
正直、ナンバの言ってた満足して死ぬためのエンディングノートなんてやって欲しくない。
……死ぬために準備なんてして欲しくない。
「あまね、来たぞ?」
桐生さんはフッと笑い前を見ていて、私も直ぐに前から走って来る3人組に対して鞄から1本鞭を取り出した。
「……あームカつく。桐生さんとの時間を邪魔しないでよね!みんな好き勝手して!もー!」
あまねはすぐに鞭を振り回し輩を退かせた。
「無理はしなくていい。俺もそこまで落ちてないぞ?」
「ムカつく事思い出して暴れたかったんで丁度良かったの。……弱いくせに絡んで来るなんて、本当に時間の無駄過ぎる!」
まだポコポコ怒っているあまねの頭を撫でると、あまねはのびていた男をもう一蹴りだけして歩き始めた。
「……喉乾いたか?」
「乾いた!……もしかして桐生さんが買ってくれるの?」
「フッ、用心棒にはお礼しないとな。」
「……まあ?桐生さんの為なら頑張るけどねー。お礼も別に望んでもないし。」
「いらないのか?」
「……いる。」
自動販売機を見つけて前に立つと電気が付いた。
桐生は無言で1000円札を入れ、あまねを見た。
「………………。」
あまねは悩んでいるのか、ボタンを押すための指すら出さずにキョロキョロ商品を見ていた。
「いつものココアでいいんじゃないか?」
「……いつものは嫌なの。……いつもと違う味がいいから。時間かかるから先に選んで。」
「分かった。」
そう言うと桐生さんはココアを押した。
「……桐生さんもココア飲むの?」
取り出し口からココアとお釣りを取る桐生さんは少し微笑んでいた。
「あまねがいつも飲んでたから、俺も飲もうと思ってな。」
「……甘くて美味しいよ。」
なんだか少し恥ずかしくて、視線を自動販売機へ戻した。いつものラインナップなのに。
今日は特別。桐生さんに買ってもらえた特別な飲み物にしたい。
そう思うと中々に選べない。
「………………。」
「悩んでるのか?」
「……だって……、桐生さんが買ってくれるから……凄く悩む……。」
桐生さんはお金を入れてすぐにカフェラテを迷わず押した。
「甘いコーヒーなんてどうだ?嫌ならココアと交換するぞ?」
「……貰う。」
桐生さんからカフェラテを受け取り、缶をギュッと握り締めた。
「……ありがとう。」
「自分で決めたかったか?」
「いや………凄く嬉しいよ。」
「…………、それは良かった。」
しかし何時まで経ってもあまねはプルタブに指をかけたまま開けようとしない。
「あまね?」
「……また買ってくれる?」
「……ん?……勿論だ。」
「……来年も?」
「……ああ、来年も。」
「再来年も?」
「勿論だ。……あまねが望むなら、いつでもな。」
あまねの目には涙が溜まっていて、唇を噛み締めていた。
「……約束だからね。」
カフェラテは甘くて少し苦くて……温かかった。
(終)
