女
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三「ジョーカーゲームをもう一度やりたい?」
「ええ、次は絶対勝ってみせるから」
強く力を込めて言い切ると、実井が面白そうに目を細めて「良いじゃないですか。ここに入れた香坂さんがあの程度だなんて、僕も認めたくないと思っていたところです」と、相変わらず朗らかな口調に棘を含ませてくる。
三「それもそうか・・・。メンバーは君が選んで良い。誰を指名する?」
「メンバーはね・・・」
今回の宣戦布告は前回の意趣返しが目的なので、とりあえずは、三好、実井、甘利、田崎の4人を指名する。そして、福本も。
何人かが少しだけ驚いたように春を見るも、何も指名するのは4人だけと決められた記憶は無い。
そして自分がスマートに勝利を決めるには、テーブル外のプレイヤーが少ない方が都合が良かった。
三「それじゃあ、"ジョーカーゲーム"スタートだ」
「レイズ。・・・10枚」
カチャリ、と小さな音を立てて春の指が積まれたチップを前面に押し出す。
三好は面を上げ、一瞬だけ春に視線をやった。
実井は数刻悩んだ末に降り、甘利も「キツいなぁ」と苦笑い。
回ってきたのは三好の番である。
三「コール」
口から煙をぷかぷか燻らせ、真っ直ぐ射抜くような目を春に向ける。
それはまるで「さてどうする?」と問いかけているかのようであった。
春はそれに一瞥をくれると新たにカードを追加し、そして、迷わず、
「ビッド。5枚」
実「ふふ、やけっぱちですか?」
「そう思う?」
すでに頬杖を突いて観戦している実井の言葉に屈する様子もなく、ツンと鼻を上げながら春は言い返す。
残っているのは三好のみ。
今この瞬間は、春と三好の勝負となっていた。
三「・・・小賢しいブラフだな。レイズ、2枚追加」
「じゃあ」
三「ああ。ショーダウン」
ほぼ同時にひっくり返した手札は、春がフルハウス、三好がストレートであった。
テーブル上のコインのほとんど全てが手元に積み重ねられ勝利が決まった瞬間、春は持っていたカードを宙に放り投げた。
「やったぁ!」
神「No way!!やるじゃねーか!」
すぐさま笑顔の神永が駆け寄ってきて、春の腰を持ち上げてグルグルと回す。
そのとき、おそらく全員が気づいたのだろう。
何の交渉も無いまま、神永が春に協力していたことに。
三「・・・なるほど」
田「これは一本取られたな」
甘「そもそも神永と春ちゃんとの間に、そんなコミュニケーションが存在することすら知らなかったよ」
それはそうだ。神永と作戦を話したのは春の寝室なのだから。
基本的に紳士である機関員たちは誰も寄り付かない。
実「流石です、やはりあの試験を突破しただけはありますね。しかし・・・」
「な、何?不正はしてないよ?」
そもそもプレイヤー外が干渉すること自体が不正なのだが、それはそれだ。
三「違う。神永の協力だけと言うには、いくらか納得のいかない点があっただろう」
「ああ、そのことね」
春は、ニッコリと笑って小田切を振り返った。
彼は本のページを捲る手を止め、春の視線を受け止めて小さく頷く。
神「なんだ、小田切も春に持ち掛けられてたのかよ」
「いや、私もびっくりしたよ。そりゃ、最初に忠告してくれた小田切ならもしかしたら、とは思ったけど」
神「確信犯じゃん!」
波「じゃあ、俺のサインが全然伝わんなかったのも全部・・・」
田「おそらく小田切だな」
小田切は本をテーブルに置くと立ち上がり、少し微笑むと春の頭を撫でた。
・・・撫でた!?
小「よく頑張った」
温かくてゴツゴツとした大きな手のひらを頭上に感じて呆けている春。
一番初めに我に返ったのは神永で、慌てて春を抱き寄せて小田切から引き離す。
神「ちょ、オイ!お前は春と何の取り引きもしてないんだろ?なら俺が優先だ!」
田「優先?」
神「そう、優先」
神永はそう言って笑い、春を抱き寄せたまま唇を近づけた。
「お前こそ何してんだよ!」ともっともな波多野の怒号を無視して。
しかし春は余裕の笑みのまま、神永の口を手で塞いで止める。
「取り引きって、何の話?」
神「は?」
いけしゃあしゃあと宣う春に首を傾げ、そして、はて、と嫌な予感に襲われる。
神永がふと記憶を辿っても、たしかに"勝利のキスの方が好きだ"と嘯いていたという事実しかない。キスの約束なんて、これっぽっちもしていなかったのだ。
珍しく舞い上がっていたのだろうか?
「ね?取り引きなんてしてないでしょう?」
しかし、彼はそんなことで引くような諦めの良い男ではなかった。
「・・・え?いやッ」
ヌルッとした生暖かい感触が手のひらを襲い、咄嗟に手を離してしまった。
その瞬間唇に噛みつかれる。
そのあと再びヌルッとした感触が口内を好き勝手に舐め回し蹂躙し、ようやく解放されたときには春の息は上がっていた。
神「嘘ついて男騙す悪い女には、お仕置きが必要だからな?」
ニヤリと笑う神永はとても扇情的ではあったが、春にはその背後に音もなく近づく黒い影たちに気がついていた。
神「ぐがッ!!」
全「「「かーみなーがくーん・・・」」」
軍で訓練を受けた7人の男たちが、揃いも揃って聖人のような笑顔で神永を羽交い締めにしている。
春は他人事のように戦慄を覚えた。
全「「「あーそびーましょー」」」
神「え、ちょ、待っ・・・。やめっ、自白剤だけは勘弁・・・ああああああああああああ!!!」
まんまとニューフェイスにしてやられ、その原因かつ美味しいところを持っていかれた男たちの神永への怒りは、なんとか一晩で発散することができたらしい。