School Life & Parfait
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昼休みの学食
安い、早い、美味い
の3拍子が揃った食堂は、およそ3学年全員が入れるとは思えない狭さ
その中で座れる席を見つけるのは至難の技で、亜莉香はラーメンの丼片手に辺りを見回した
「やっぱベルと一緒に来た方が良かったかなぁ…」
ベルはいつもお弁当派で、学食の席を占拠するのは悪いから、とたまに学食派の亜莉香とは別になる時がある
もうこの際立ち食いもやもえまい、と思った時、緑色の何かが亜莉香の視界に入る
「キミ、席探してるの?」
「え、あ‥はい」
見た事ない人だな‥
ネクタイの色が違うから先輩か
なんて頭の隅で考えながら、亜莉香は頷く
「僕の前、今空いたとこだから座りなよ」
指差された席を見れば、確かに空席で、亜莉香は素直に従う事にした
「ここの食堂、もう少し広くなればいいのにね」
と言いながら、向かいの席に腰を下ろしたその人は、焼きそばパンの袋を開けて頬張る
「あの‥わざわざ声をかけてくれてありがとうございました。このままじゃ立ち食いかな、なんて思ってたんで」
「うん。そんな感じがしてたから思わず声かけちゃった。それより‥伸びるよ、ラーメン」
「あっ‥い、いただきます」
慌てて割り箸を取って手を合わせる亜莉香
席を探してるって子は沢山いるのに
今日はラッキーだったな、なんて思いながら、亜莉香は昼食を堪能した
次の授業、移動教室だから
と先に帰った先輩を見送って教室に戻ると、何かに手を引かれて亜莉香はこけそうになる
ずい、と女子数人に囲まれてたじろぐ亜莉香
「亜莉香!さっきN先輩といたんだって!?」
「N先輩‥って…緑色の髪したイケメンな感じの?」
「やっぱりー!ズルーイ!!」
口々に叫んで離れていくクラスメイトを見送りながら、亜莉香は自分の席に戻り、後ろに座るベルに尋ねた
「N先輩ってそんな有名なの?」
「変わり者って有名だよ」
答えたのはベルでなく、隣の席にいたチェレン
「そうなの?」
「う~ん‥鳥とか野良猫とかとよく喋ってて、あんまり人と喋らないんだって。でもそれがまたミステリアスでいいって評判だよ~」
再びベルに聞き返せば、のんびりとした口調で返事が返ってくる
「へぇ…」
生憎と恋愛には興味が持てないし、いわゆる鑑賞用に先輩や同級生を追いかける事も亜莉香の中では不可解でしかなかった
「普通に優しい先輩だったけどね」
そう呟いて、亜莉香は次の授業の準備を始める
人間、気まぐれが起こる事だってある
別に自分が特別な訳ではないのにな、なんてクラスメイトの声を聞きながらぼんやりと思った
放課後
亜莉香は一人で教室を出た
運悪くベルは6限目の小テストで点数が足りず、居残り組に
チェレンは委員会の会議に出席
今日は寄り道して帰ろうと思ったのになぁ~、なんて思いながら靴箱に向かうと、誰かの話声が聞こえた
「あの、N先輩!一緒に帰ってもいいですか?」
随分積極的だなぁ‥なんて思いながら、邪魔にならないようにその横を通り抜ける
チラと横目でNを見れば、凄く鬱陶しそうな顔をしていて思わずギョッとした
昼間のNからは想像できないような顔
でも、女子に絡まれる事を歓迎できない人なら仕方ないよね、と自分を納得させる
「悪いけど、先約があるから」
「‥そうですか」
あからさまな拒否と落胆の声を背中で聞きながら、亜莉香は靴をはく
断られた女子がパタパタと走り去るの見送って、亜莉香は恋愛って大変だな、としみじみ思った
今の自分には他人事でしかない
そりゃ、学生生活の彩りに彼氏の一人や二人いたら楽しいのかもしれないけど
「こればかりはなぁ‥」
ため息と共に思わず漏れる声
何で自分の恋愛センサーは永久冬眠中なのかと自分で聞きたくなるくらいだ
「何がだい?」
「へっ?」
振り返るとNの姿
「何が『こればっかりは』なんだい?」
「えっと‥あの…」
まさか独り言が聞かれてるとも思わず、亜莉香はあたふたと顔の前で手を降る
「いや、恋愛って大変だなーって。自分の好きな人が好きになってくれるって難しいじゃないですか」
ははは、と力無く笑ってごまかす亜莉香にNはにっこりと笑って同意した
「確かにそうだね」
うわ、それは反則物でしょ
って内心で思って、それでも動じない自分の恋愛感情に、亜莉香は胸中でため息をつく
「ねぇ、今から時間ある?」
「‥ありますけど?」
「じゃあちょっと付き合ってよ」
言って返事も聞かずに歩きだしたNを慌てて追う亜莉香
「そういえば、キミ、名前は?」
「亜莉香です」
「ふーん」
聞いといてそれだけかよ、と思いながら、亜莉香はチェレンの言葉を思い出す
『変わり者って有名だよ』
確かに変わった人かもしれないけど、悪い人じゃない
ただ、興味ない物にはとことんそっけないだけで
こんな人好きになったら大変だな、とやっぱり人事に感じながら、亜莉香はNがゆくままに着いていくのだった
「亜莉香、ここだよ」
「こ‥ここ、ですか…」
学校から少し離れた所でNは立ち止まった
そこは最近出来たばかりのカフェで、ここのパフェが絶品だという噂は、女子の間では有名な話だった
ただし
店員さんもさる事ながら
店のフワフワピンクな外見と内装に女子でさえ入るのを躊躇う、というオマケつきで
噂に違わぬピンクっぷりに躊躇う亜莉香にNはまたもにっこりと笑う
「さすがに男一人で来にくいでしょ?女の子がいないとさ」
スッ、と当たり前のように手を繋がれて、亜莉香が止める間もなくNはレースに装飾された扉を開いた
フカフカソファーの坐り心地は最高だが
度を越えたレースとピンクとスィーツのオブジェに目眩を覚えて亜莉香はため息をついた
「先輩、どうしてさっきの子じゃダメだったんですか?」
綺麗なグラスに入った水を一口飲んでNに問う
「僕の事、好きになってたから」
片肘をついて窓の外を見ていたNは、視線すらよこさず事もなげに言った
そして続けて
「こんな所に連れて来たら、無駄に気を持たせるでしょ」
「まぁ…そうですね‥」
あまりにさっくりした言葉にたじろぐ亜莉香
まぁつまるところ、ここに誘われた自分は『安全』ということだ
確かに今日会ったばかりの人に恋愛感情抱く事はない
が
なんか悔しい
「お待たせしました~」
フリフリフワフワのメイドさんが、これでもか!とデコレーションしたパフェを二人の前に置いた
「付き合ってくれたお礼に奢ってあげるから」
そう言ってNはパフェにスプーンを入れる
「‥じゃあ、お言葉に甘えて」
釈然としないながらも亜莉香はパフェを口に運んで、その味に舌鼓をうつ
「美味しい‥」
流石は口コミならず、雑誌やテレビで紹介されるだけある
イケメンの先輩に奢ってもらう美味しいパフェ
まぁ役得には違いない
今はパフェを楽しもう
そう決めてスプーンを進めた亜莉香はふ、とNがこちらを見ている事に気づいて手を止める
「こっちのパフェ、気になりますか?」
違う種類のパフェを頼んだから、気になるのかと思い尋ねるも、Nは黙って首を振った
「キミの事が気になって」
「は‥?」
あぁ‥もう少し可愛い返事はないものかと自分でげんなり
「亜莉香は、僕の事が気にならないの?」
「ええ。不思議な人だとは思いますけど‥特には…」
「ふーん」
名前を聞いてきた時の興味なさ気な返事とは違って、興味がある、というように満面の笑み
「今日会ったばかりの人に、いきなり恋愛感情抱いたりしませんから安心してください」
誰でも自分に興味あると思ったら大間違いだ
そう言ってやりたくて少しぶっきらぼうに答えると、Nは嬉しそうに声をあげて笑った
「…な、何ですか‥?」
パフェを口に運びながら亜莉香は問う
「いや、君の言うとおりだと思って」
「はぁ‥」
「じゃあ、これから毎日会えば、亜莉香は僕に興味を持つって事だね」
変わり者
という評価に再び納得
返す言葉を思い付かずにポカンとする亜莉香をNは楽しそうに見ていた
END
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【あとがき】
亜莉香様からのリクで学パロNでした
学パロなんて‥というか現代パロディなんて初めて書いたので無駄に長くなりました
自分に興味ないヒロインが気になるN
『いつ僕を好きになる?』のセリフと迷ったんですが、あくまで興味の枠内に納めたくてボツにしました
どっかで使うかも知れません
イケメンだとか長身だとか騒ぐ女子を遠目で見てしまう煉夜の感覚で書きましたが、なるたけ普通の学校生活をイメージして考えました
お受け取りいただけると幸いです
(補足:Parfait=パフェ)
2010/10/28