ガラス越しに背中
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あれから
どれくらいの時間が流れたんだろう
あれから
何度キミを思っただろうか
バサッ、という音と共に強烈な風が吹いて、シュウは思わず目をつぶった
風の収まりを感じて目を開けば、ゼクロムが翼を畳んだ所だった
「ぇ…あ…‥ゼクロム‥?」
なんでこんな所にいるんだろうか
「シュウ、探したよ」
懐かしい声
幾分か大人びた雰囲気を纏ったNがゼクロムから降りて、芝生の上に降り立った
「何年ぶり‥かな…」
「5年だよ」
Nの言葉にシュウは『そう』とだけ呟いた
「ここはキミの?」
「そうよ。傷ついたポケモン達の療養所…あんな事があったのに、ポケモンを傷つける人達は後を絶たない」
悔しそうに唇を噛むシュウの手を何かが引っ張る
「タブンネ?」
耳が片方ないタブンネがシュウを見上げていた
「あぁ、ゴハンの時間だったね。N、良かったら手伝ってくれる?」
「勿論だよ」
頷いたNにシュウは『こっち』と手を引いて案内する
傷ついた、というのは何も心の傷だけではない
悪戯に危害を加えられて傷つく者もいる
そんなポケモン達を保護しているのがシュウの今の仕事だという
「チェレンがね、ポケモンドクターの資格を取ったから、たまに様子を見に来てくれるし、ベルは保護活動の地区リーダー」
あのベルが凄いと思わない?
なんて笑って、シュウはソファーに腰掛けたNにコーヒーの入ったカップを差し出した
「みんな、それぞれの道を選んだんだね」
受け取りながら答えるNをシュウはジッ、と見つめる
「なんだい?シュウ」
温かいコーヒーを一口飲んで、Nはシュウを見上げた
「Nは変わらないな、と思っただけ」
「そうかな?背だって伸びたし、髪も伸びたよ」
「そういう事じゃないの」
シュウがそう言った時、机に置かれていた時計がアラーム音を立てる
「ごめんね、薬の時間なの。少し待っててくれる?」
聞きながら戸棚の薬箱を抱えてシュウは部屋を出ていく
開けっ放しの扉の奥では、ポケモン達に薬を飲ませるシュウの姿
嫌がって声を上げるポケモンを宥めたり、追いかけるシュウの忙しない声が聞こえてくる
一方のポケモン達の声は様々だ
あえて見知らぬ存在である自分が手を出す事ではない、とNはゆっくりコーヒーを味わう事にした
コーヒーを味わいながら、ぐるりと部屋を見回す
女性の部屋をあまりそうやって見るのは趣味が良いとは言えない、と自分自身で思いながら、Nは低めの棚の上に飾られた写真立てに目を止めた
ソファーから立ち上がり、近づいてみれば、シュウの写った写真ばかり
その周りには沢山の人々
幼なじみのチェレンやベルは勿論、見覚えあるジムリーダーの面々
そして
彼女が連れていたポケモン達
「シュウ、僕は帰るよ」
薬を与えているシュウに一声
その横を通り抜けて玄関を開けると、Nは外にいるゼクロムを呼んだ
降り立った時と同じ場所で丸くなっていたゼクロムはゆっくり身体を起こすとその翼を伸ばして飛び立つ準備をする
「ちょっと待って!」
慌てて追いかけたシュウを半身だけ振り返って見やるも、ゼクロムへ向かう足は止めない
「待ってってば、N!」
シュウの手がNの服の裾を掴む
「シュウ、君がいきなり飛び出したから、みんなビックリしてる」
ハッとして振り返ったシュウの手を優しく解いて、Nはゼクロムの背に乗りかかる
「ダメっ!Nっ…」
Nの背中に抱き着いて引き止めるシュウ
「何か、用事があって来たんでしょう?」
ギュッ、としがみついたシュウがNに問う
それはどこか『そうであって欲しい』という願いも込められているような声
「いや、ただキミがどうしてるかと思っただけだよ」
シュウの手をもう一度解いて、Nは言う
「元気そうで良かった」
「タブンネ」
Nの声に被った突然の声
足元には先程のタブンネがいて、Nのズボンの裾をしっかりと掴んでいる
「タブンネ」
繰り返されるタブンネの声に戸惑うシュウ
Nは小さくため息をついて身を屈めると、タブンネの頭を優しく撫でた
「多分、なのかい?」
「タブンネ」
返事なのかタブンネは再び声をあげる
困ったな、とNは半笑いでシュウを見上げた
「…N‥貴方と私の間には、いつもガラスの板があるみたいに思えるの」
キュッ、と心臓の辺りを掴んで、シュウは小さく呟いた
「あの時だって‥その背中に手を伸ばす事さえ許してくれなかった」
「またあの時みたいに、私に背中を向けてどこかに行くの?」
シュウの言葉に何も返せないでいるNの肩にマメパトが止まり、Nの頭をつつく
「ちょ、いたっ‥痛いよ」
立ち上がったNの周りをバサバサと飛ぶマメパト
「参ったね‥」
肩を落として苦笑いを浮かべるNを、シュウは不思議そうに見つめる
「‥キミがどうしてるかと思って…それは嘘じゃないよ」
語りはじめたNに満足してか、マメパトがNの肩に止まる
「キミはキミの夢をちゃんと叶えて、新しい道に進んでた…だからー」
「だから自分はいらないって?」
Nの言葉を食ってシュウが言う
「Nって…ホントに私の話聞いてくれないね。変わってない」
シュウがNの手を取って、ギュッと握る
「私が頑張れたのは、夢を叶えろ、ってNが言ったからだよ?頑張ってたら、きっとまたNが会いに来てくれるって思ったから…」
Nに会えて嬉しかったのに、と続けて言葉に詰まるシュウをNが優しく抱き寄せる
「…ごめん」
「また背中なんて嫌よ。ちゃんとこっち向いて」
私たちは、ちゃんと触れ合えるんだから
抱きしめ返したシュウをより一層強く抱きしめて、Nは小さく呟く
「ずっとキミを抱きしめたかった」
END
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【あとがき】
もしかしなくても煉夜、スランプとかいう奴でしょうかorz
シュウ様よりいただきました、N切甘夢でしたが、またなんか不発くさい感じがしなくもないですよ!
ゼクロムが降り立ったのは牧場みたいなイメージでしたが、なんか説明いれそこね…
どちらの視点描写でもない感じにしたらなんか説明くさい…
だ‥だめかもしれません…
こんなのですが、お受け取りいただけますと嬉しいです
2010/10/27