片想いの憂鬱
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「‥はぁ…」
最近鞍明に会う度にため息が増えている
あたしも鞍明も
心につっかえがあるのだ
「‥……‥ねぇ、ベルー」
喫茶店で鞍明がソーダをストローで掻き回しながらあたしを呼んだ
「なぁに?鞍明」
鞍明は気まずそうに目を伏せてもう一度ため息をつく
「…片想いって‥しんどいね」
「…‥う、ん‥」
鞍明の言葉があまりにも唐突で思わず同意につまる
鞍明が誰かを好き?
好きになった?
それが彼だとしたらあたしはもうどうしたらいいんだろうか?
一人悶々としてたあたしに気づいてか、鞍明は机に突っ伏した顔をあげて『チェレンじゃないよ』と告げた
安心と、彼の失恋を知った複雑な気持ちが同時にやってきてあたしの心は更に乱れる
「Nっていうの‥ポケモンを『トモダチ』って言って…碧の綺麗な目がね、いつも寂しそうなんだ‥」
「…重症‥だね…」
「でも、まだ好きっていうのじゃなくて!…その‥気になるって言うか‥会いたくなるって言うか…」
俯いて恥ずかしそうに呟く鞍明
「…もしかして、ベルも‥チェレンにこんな気持ちになるの…?」
「っぐ!?」
思わぬ問いに口に含んだアイスティーを噴きこぼしそうになる
それをかろうじて堪えて口元を拭えば、鞍明の小さなため息が聞こえた
「やっぱり…そうなんだ‥」
一人納得したようにつぶやいた鞍明は、頬杖をついて窓の外を眺める
そしてガラス越しにもう一人の幼なじみを見つけて小さく手を振った
彼…チェレンは最初に鞍明を見て、それから明らかな落胆をその瞳に写す
それが何を意味してるか解るから辛い
店内に入って来たチェレンは『お待たせ』と一言、眼鏡のブリッジを押し上げる
「荷物、こっちおくから」
鞍明が言って手を差し出すのを断って隣に座るチェレン
鞍明を見ると笑ってあたしを見てるから、その意図に気づいて思わず飲みたくもないのにアイスティーを飲み干してしまった
「のど渇いてたの?」
チェレンが不思議そうにこちらを見つめるからあたしは首をふるので精一杯
「チェレンが一人で頼むのは気にするかと思ってじゃない?」
クスクスと笑う鞍明を少し疎ましく思いながら、そのフォローに頷く
「気にしなくていいのに…で、ベルは何頼むの?」
苦笑いにも似た笑いを浮かべてチェレンがメニューを開く
二人でそれを覗き込んでいる事を考えれば、それは幸せな時間に違いないのに、ストローをくわえて窓の外を見ている鞍明をチラチラと見ているチェレンに気づけばそれも一瞬の事
「…っ!?」
突然立ち上がった鞍明が慌てて帽子と鞄を掴む
「「鞍明!?」」
声をあげたのはあたしもチェレンもほぼ同時
「ごめんっ!アタシ行かなきゃっ…えっと、お金っ…」
財布を取り出しながら窓の外を気にする鞍明に、あたしは"彼"がいたんだと思って
あたしと違うところで"彼"を察知したチェレンが、お金を置いて去ろうとした鞍明の手首を掴んだ
「アイツに関わるのは辞めた方がいいって言っただろう」
いつもより強い口調のチェレンに鞍明も顔を強張らせる
それも一瞬だけの事
直ぐに掴まれた手を振り払って鞍明はグッと手を握りしめる
「っ…アタシが誰と関わるかはアタシが決めることだものっ…チェレンには関係ないでしょ!?」
「鞍明!いくらなんでも‥」
「‥ごめん…」
流石に声を上げれば、鞍明もハッとして小さく呟いた
「‥でもアタシ、自分の気持ちに嘘つくような事したくない…後悔したくないのっ‥」
顔を背けて、それでも言葉はしっかりと鞍明は言う
「‥そう…気をつけて」
チェレンの背中を見つめながら、彼がそれをどんな気持ちで、どんな顔で言ったか想像が出来て、思わず自分の胸元をわしづかんだ
駆けていく鞍明の背中を見送るチェレンも小さくため息をついて、ゆっくりと座る
「まったく‥頑固というか、頑なというか…そういうところはキミたちそっくりだよね」
「‥そう…かな‥?」
隣に腰を下ろして空になったグラスの氷をストローでもてあそぶ
あたしは鞍明みたいにぶつかっていく勇気はない
鞍明みたいに強くはない
「‥Nが気になるって?」
「う、ん…まぁ‥」
「そっか‥」
妙な沈黙
素直に答えてしまった自分に後悔
隣にいるのに、チェレンの頭は鞍明の事ばかり
「‥あたしも、行こうかな」
「え?」
いたたまれなさから席を立てば、あたしを見上げたチェレンと目があった
「お茶、付き合ってくれるんじゃないの?」
思わぬ言葉に二の句を告げないでいると、チェレンは小さく笑って開きっぱなしのメニューを見つめる
「幼なじみが失恋したんだ。付き合ってくれてもいいだろう?」
「ぁ‥うん…」
元の席に座り直して、頭にも入ってこないメニューを眺めた
「ねえ、ベル。片想いってしんどいんだね」
先程の鞍明と同じ台詞に、あたしは何も言えなくって
僕はこれからどうしたらいいのかな
なんて呟くチェレンに
あたしを好きになればいい、なんて
そんな言葉が頭を過ぎった
END
++++++++++++++++++++
【あとがき】
鞍明様リクのNとくっついてない幼なじみ三角関係でした
ちょっとどころじゃないお時間かかりまして、申し訳ありませんでした(__)
お受け取りいただけましたら幸です
しかも若干切夢系で…
リクの主旨からは外れてしまったかもしれません
三角関係の噛み合わない感じには注意しました
2011/3/1
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