君の隣に帰るから
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一緒にいたかと思えば
翌朝にはいなくなってる
いなくなったと思えば
ふらり、とどこからか現れる
Nはそんな人だった
「ねぇ、コウ。観覧車に乗りたい」
「は?」
唐突な提案に思わず持っていたヒウンアイスを取り落としそうになる
いつものようにふらりと帰ってきたNが唐突に『アイスが食べたい』と言い出したのは1時間前
事もあろうにヒウンアイスが非常に食べたい、というNに『買える日と買えない日がある』と言って聞かせるが効果なし
「好きにしたら‥」
と
言ったのが早かったか、空を飛んだのが早かったか、あっという間にヒウンシティに到着
運よく並ぶ事ができ、彼は念願のアイスを手に上機嫌で広場のベンチに座っていた
幻とまで言われるヒウンアイスを口にして一言
「コウ‥アイスって…名前の通り冷たいんだね‥それに甘い」
の言葉に喉元まで出かかった文句が飲み込まれる
「‥食べた事無かったの…?」
「うん。どうして?」
どんな生活してたんだ、と思う半面、納得する自分もいて、コウは小さくため息をついた
自由になってみて色々やりたいんだろう
付き合ってやるしかない
そう腹を括った途端の発言に、思わずコウは固まらずにはいられなかった
再び空を飛んでライモンシティ
ヒウンシティとは違った賑わいを見せる街にNはまた瞳を輝かせている
子供だなぁ…って思うけど、それも愛しい
思い詰めて冷めた目をしていたあの頃よりもずっと素敵だ
「コウ!」
ふいに差し出された手に何事かとNを見返せば、Nはじれったそうにコウの手を握った
「こういう所じゃ手繋ぐのが当たり前でしょ?」
ね?と聞き返されて、コウは頷く
夢中になる事があってもちゃんと振り返って手を繋いでくれる
そんな安心感に満たされてコウはNに笑いかけた
それを見てNも満足げに笑う
「観覧車の前に行きたい所はある?」
「ううん。Nの好きにしていいよ。今日はN付き合うって決めたから」
「本当に?」
と更に目を輝かせてNは問う
「嘘言ってどうするの?」
と返せば、Nはコウと繋いでいた手を引いてギュッと抱きしめた
「ちょ‥N!こんなとこで恥ずかしいよ!」
往来のど真ん中で抱きしめられて赤くなるコウをNは更に強く抱く
「コウ‥ありがとう。君がいてくれて、僕は本当に幸せだよ」
「‥N」
大袈裟だな‥なんて思いつつ、心からの声にNを抱きしめ返せば、Nはゆっくりと体を離した
まず最初はピカチュウ
空気が入って膨らんだビニールの中でポンポン跳ねて遊ぶそれにNは夢中だった
バランスを崩してこけては笑い
一人で跳ねては笑い
Nをこんなに笑わせるなんてピカチュウは偉大だと、コウは不安定な足場の中で思った
ひとしきり暴れた後は、ジェットコースター
言うまでもなくジムなのだけども、遊園地の中にあるアトラクションでもある為に色んな人が並んでいた
ジェットコースターに乗りながら、ポケモン勝負が見れるというのもウリの一つ
残念ながらジムリーダーは撮影に出掛けているとの事で挨拶は出来なかったが、6周もするとコウは流石に目が回った
「はい、コウ」
ベンチで休んでいたコウの頬に触れた冷たい感覚
「目回した時はお水の方がいいでしょ?一応ソーダもあるけど‥どうする?」
隣に座って缶を見せながらNは首を傾げる
「Nの好物のソーダ、奪うわけにはいかないでしょ」
クスクスと笑っておいしい水を受け取り口をつけるコウに、ソーダの口を開けながら『別にいいのに』と小さくNは呟いた
そう言いながら、コウがソーダを選べば、Nは再び自動販売機にソーダを買いに行くのは予測出来ていた
それがおかしくてコウは笑い続ける
「何?そんな笑って‥」
不思議そうに尋ねるNに首を振って、コウは立ち上がって伸びをした
「観覧車、行こうか!綺麗な夕日が見えそうだよ。…これを待ってたんでしょ?」
聞くとNはニッコリと笑って頷く
缶を捨てて手を繋げば、Nは感慨深げに観覧車を見上げた
「初めてコウとこれに乗った時、僕はプラズマ団の王様だった…」
返事に詰まったコウを見て、Nは小さく笑う
「乗ろうか」
「‥うん」
さほど人もない列に並んで、観覧車に乗り込む
あの時と同じように向かい合って座るけども、二人の間にある空気は違う物だった
ゆっくりと昇っていく観覧車から外を見つつ、Nはいつになく深刻そうに頬杖をついた
「‥どうしたの?」
やはりプラズマ団に
ずっと抱いていた理想に未練があるのだろうか
不安で聞く事も出来ずにいるコウに気がつき、Nは視線をコウへと移す
「僕ね、本当は君の前からいなくなろうかって思ってたんだ」
突然の告白に、コウは息を飲む
「いつも、ここにいちゃいけないって気持ちばかりが募って…コウの優しさに甘えるのはよくない、って」
「だから…いつも急にいなくなるの‥?」
「まぁ…そうだね‥」
自嘲気味に笑うNを見て、コウの胸がツキンと痛む
Nが落ち着ける場所、安らげる場所であるように努めてきたつもりだった
それは別に義務感からじゃなくて
Nの事が本当に好きだからだ
でもそれがただの自己満足で、Nにとってただの重荷だったとしたら
思い違いもいいところだ
「…でもね」
Nがゆっくりと立ち上がり、コウの隣に腰を下ろす
「あぁ…泣かないで、違うんだ」
困った顔でNはコウの涙を指先で拭う
「聞いてくれる?」
声に出すとまた泣きそうになるから、コウは黙ったまま一度だけ頷いた
「‥遠くに行こうとする度に、キミの顔が浮かぶんだ。今すぐ帰って、コウの声を聞かなくちゃ…って」
それで? とコウは視線で話を促す
「コウの顔を見て、声を聞いたら、凄く幸せになる。やっぱりここにいようって思うんだ。‥でも少ししたらまた同じ事を考えてしまう」
不思議だね
と言ってNは苦笑いを浮かべた
沈みかけた夕日が、眩しいくらいに差し込んで、観覧車の中を赤く染めている
もう夕日はピークを迎えようとしていた
「コウ、僕は観覧車なんだって気づいたんだ」
意味がわからず戸惑いを浮かべるコウを抱きしめて、Nはそのまま続ける
「どんなに地上から離れても、同じ所を回って最後は必ず地上に戻る…。‥僕も同じ‥コウからどんなに離れようとしたって、どんな遠くに行こうとしても、最後にはコウの隣に帰ってきてしまう」
僕の帰る場所なんだ
そう言われて、コウもう涙を止めている事は出来なかった
Nにしがみついて嗚咽を漏らす
「コウ、好きだよ。凄く好きだ」
心なしか震えるNの腕に気づき、コウはNを更に強く抱きしめる
「私もっ…好き」
「ホント?」
恐々、という表現が似合う表情で、Nはコウを覗き込む
「ずっと、Nが好き」
もう帰ってこないんじゃないか
そんな不安がいつも頭をよぎって
それでも何て事ない顔をして帰ってくるNを見ていつも安堵のため息をつく
「君の隣を、僕の帰る場所にしてもいい‥?」
NOと言うのならば、もっと早くから言っていた
「当然に決まってるじゃない、馬鹿ね」
少しムカつくからNにキスをしてやれば、夕日のせいかNの顔が余計赤く見える
「狡いよ、コウ」
ふいうちを食らったNがお返しとばかりにコウにキスをする
一度だけじゃなく
何度も啄むように繰り返し、少しの間見つめ合うと、二人して小さく笑った
「ねぇコウ、お願い、聞いてくれる?」
「なぁに?」
尋ねたコウに応えず、Nはコウの肩に自分の頭を置いて目を閉じた
コウもNに習って頭を乗せる
「このまま2周目、乗らない?」
「スタッフさんがいいって言ったらね」
END
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【あとがき】
コウ様からリクいただきました
観覧車シュチュで甘め‥との事でしたが…
あ…甘くない‥orz
観覧車と言われて、Nがヒロインの肩に頭を置いて甘える図が浮かんで(電車とかでよく見るイチャラボカポーの図ですね)
無邪気なN
最後はお互いスキスキ甘えあって‥
それがしたかったのに何でか前半ビター仕様‥orz
本当にすいません(__)
こんなのですが、受けとっていただけると嬉しいです!
4100Countの報告ありがとうございました!
2010/10/13