横から縦から
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
縦から
横から
絡まりあって
四角い線の…ー
「…ごめん‥」
何度も予測されたその言葉に、それでも体はビクリと震えた
「ごめんね、ベル」
繰り返されたセリフに涙腺のフタが決壊しそうになる
どんなに予測してたって
どんなに覚悟してたって
好意を拒絶されるのは
つらい
「‥だよね~」
精一杯笑って顔を上げれば困った顔のチェレン
「だって、チェレンは…っ、こいしが、好きだもんね」
嗚咽を漏らして震えそうな喉にグッと力を入れていつものように笑ってみせる
解りきってた話
それでも
もしかしたら
どこかで無駄な期待をしてた自分を打ち砕いた一言
「でもね、言えないままは嫌だったんだ…。私こそ、勝手に気持ちを押し付けてごめんね」
言うとチェレンは黙って首を振った
「ありがとう」
決壊するな、なんて無理な話だ
こんなに
好きなんだもの
突然の呼び出し
突然の告白
ベルの必死な顔に自分自身を重ねて、思わず返事を返せずに固まった
何度も思った
何故、自分の気持ちは届かないのかと
何故、気づいてくれないのかと
僕自身、こんな身近な友人の好意に気づかなかったというのになんて自分勝手な感情なんだろうか
告白もしないで、ただ彼女達を遠巻きに眺めているだけなのに
そしてベルは
僕の答えを知っていて
いくら悩んで引き延ばしたって、僕の返事が変わる訳でもないのに、僕はただ俯いて言葉を探すベルを見つめた
結果が見えているのに、それにぶちあたる勇気は僕にはない
その勇気に報いる答えを用意できれば良かったのに、と僕は考えて、必死に大事な友人を傷つけない方法を考えたけど
何度考えても出てきた言葉は一つだけだった…
「…ごめん‥」
それをちゃんと受け止められるベルを見ながら、僕にはその強さが無いことを見せ付けられて
ベルの気持ちに応えれる唯一の言葉をベルに送る
涙腺を決壊させたベルに差し出せる手もなく
僕はその姿に自分を重ねて
それから
僕はどうしてこいしでなくベルを好きにならなかったのかと、少しだけ後悔した
「こいし、そんなに走ったらこけるよ」
「こけませっ‥きゃぁ!?」
「っ‥ほら、気をつけて」
ベルの背後で聞き慣れた声がする
秋の枯れ草を蹴って走るのが好きなこいしがNに諌められ、こけそうになってNがこいしを支えたところ
そんな音に気づいて僕はベルにハンカチを渡す
「Nとこいしだ。顔、拭いて」
「‥う、うん」
慌てて涙を拭いたベルはハンカチをギュッと握りしめて何かを言いたげに僕を見上げた
「‥ごめん」
解ってるよ
だから一言だけ告げて、僕はこいし達が来るであろう方向を見つめた
手を繋いで、枯れ葉を蹴散らして歩くこいしは僕たちを見つけて大きく手を振った
僕はそれに応えて片手をあげる
「こいし、こけないようにね」
再度忠告を受けてふて腐れるこいしをそつなくかわすNの脇腹を小突いて、こいしは僕たちに駆け寄った
「どうしたんだい?」
聞き返せばこいしは悪戯っぽい顔で紙袋を取り出す
「Nとね、温泉に行ってきたの。お土産渡したくって」
「ありがとう」
紙袋を受けとって、僕は横目でベルを確認する
まだ涙で潤んでいるベルの瞳を覗き込んで、こいしは僕を見返す
「何でもないの!目にゴミが入っちゃって…」
それに気づいたベルが慌ててこいしの意識を引き付ける
「‥そう?大丈夫?」
訝しがるこいしに何度も頷いて見せるベルを見ながら、何故今ここにこいしがいるんだろうかと思った
後30分
後10分
それだけ後に来てくれれば、僕もベルももう少しマシな対応を出来たはずなのに
自分勝手な忌ま忌ましさに視線を反らせばNと目があって
彼は何とも言えない顔をしてからこいしの肩を掴んだ
「こいし、行こう?帰って荷物も片付けなきゃいけないし」
言われて思い出したのかこいしは何度も頷いて僕らに手を振る
「じゃあ、また明日ね!」
またNと手を繋いで去っていくこいしを見送らずに、僕はベルに話し掛けた
「嫌いになっていいよ、僕の事。僕にはこいししか見えない。今みたいな事を平気で出来る男なんだ」
こいしが驚くから、傷つくから、ベルの告白を無かった事にしてしまえる
ベルの気持ちに応えなかった理由をしれば、きっとこいしは自分を責めるから
「‥嫌いになれたら、楽になれるのにね」
ベルの呟きに心の中で同意して
僕は静かに目を閉じた
縦から
横から
色んな気持ちが絡まりあって
僕らは四角の…
END
++++++++++++++++++
【あとがき】
こいし様リク、四角関係でした
四角関係ってやっぱ難しいですorz
本当は、ベル→チェレン→N 視点で動かすつもりだったし、いただいていたヒロイン甘え設定も生かすつもりが、ただの勘が悪いアホの子に…orz
申し訳ありません(__)
お受け取りいただけるとうれしいです
2011/1/7