特別の始まり
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「遊園地、行こうか」
唐突の誘いにこいしは手にしたマグカップを落としそうになった
「遊園地」
再びそれを口にした人物…Nは、テレビを見ながら満足げに頷く
「ね、こいし。行くでしょ?」
こいしの同意など初めからあったような口調でNは言った
一方のこいしはNの唐突な誘いの真意をはかりかねてじっとNを見つめる
時刻はもう夜というに相応しい時刻
これから遊園地なんていきなりどうしたというのだろうか
こいしの戸惑いに気づいて小さく笑ったNが小首を傾げた
「デートのお誘いなんだけど?」
言われて気づいたこいしはマグカップの中身を一口だけ飲んで一度だけ小さく頷いた
白い息を手に吐きかけて、こいしは高くそびえ立つ観覧車を見上げた
今降りてきたばかりの観覧車は次々とカップルを乗せてクルクルと回り続けている
まばゆく点灯するネオンに目を細めてこいしは小さくため息をついた
「こいし」
息を吹き掛けていた手を後から掴んでNが背中越しにこいしを抱きしめる
「寒い?」
聞かれてこいしは小さく首を振った
「嘘はダメだよ。こんなに冷たい」
ギュッと強く手を握ってから、Nは小さな袋の包みをこいしの手に握らせた
『これは何?』という顔で見上げたこいしにNは視線で開けてみるように促す
赤いリボンを解いて出てきたのは真っ白の手袋
「クリスマス、こいしは風邪で熱出してたし、約束してたイルミネーションも見に行けなかったでしょ?」
クリスマスイルミネーションは終わってしまったけど
そう言ってNはこいしの頬に優しくキスをする
「今日は最後の日だから、特別な日にしたくて」
まだ体辛かった?
そう聞かれてこいしは大きく首を振る
「そう。良かった」
心底安心したような笑顔を浮かべて、手袋をしたこいしの手を自分のポケットに入れる
「あったかい?」
黙って頷いたこいしの手を引いてゆっくり歩くN
「さっきね、ミュージカルの特別公演チケット取れたんだ。追加席だから良くないかもしれないけど」
ごめんね、段取り悪くて
そう言って白い息を吐いて笑ったNの手を、こいしはギュッと握って立ち止まる
「‥ありがとう」
マフラーの中に口を埋めて、小さくこいしは呟く
普段から意思表示の少ないこいしからの小さな言葉
Nはまた小さく笑ってこいしの手を握り返すとまたゆっくりと歩きだした
特別な1日の残り時間は後少し‥
そして
特別の始まりまでも…
END
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【あとがき】
こいし様リク、無口ヒロインの甘デートでした
クリスマスを逃したヒロインにプレゼントをする話にしたかったんですが、ヒロインの無口を甘えベタ的な感じにしたつもりです
甘くなったかな‥?
今年中に入れたかったので短くなってしまいましたすいません
お待たせした上に短くて申し訳ないですが、お受け取りいただければ幸いです
皆様よいお年を(__)
2010/12/31