Princess Dress
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「いいか!姫は必ず私の妃に必ず迎える!」
「ふん、姫の心も考えずによくも言えたものだな」
狭い教室に響く声
白と黒の衣装を纏って向かい合った二人の姿はまるで王子
「俺はお前など認めない‥姫に近づくならば…!!」
腰に刺したナイツサーベルを抜き放ち突き付ける
と、燐はそこで扉にもたれて見ていたチェレンを振り返った
「‥どう?先輩と見劣りしない?」
「いいと思うよ」
それを聞いて、燐は肩のマント飾りを外してグッと伸びをする
『まだ脱いじゃダメだよー』と非難の声をあげたのはベル
「だって、チェレンと職員室に呼ばれてるのに…このまま行けって?ねぇ、デント先輩」
力無く笑ってごまかしたのは、白を基調とした衣装を着たデント
文化祭間際の演劇部部室
文化祭ラストに体育館で行われる公演は、学内の目玉イベントで、今年の演目は『白と黒の加護』
よくあるお伽話仕立てのラブストーリーだ
主役の白の王子役には癒し系で人気を博している2年のデント
相手の姫役は3年で現役モデルのカミツレ
そして期待のルーキー、1年の燐が黒の王子役
燐が1年ながらも主役級の役に収まった訳は2つ
一つは部員が少なく、男子部員がデントしかいない事
そしてもう一つは、燐が男子と間違えられるような女子だという事
「ごめんなさい!撮影に時間かかっちゃって!」
息を切らせて部室に駆け込んでたカミツレが両手を合わせて謝る
今日は衣装合わせだから部活だけは来たかったんだよね、と鞄を投げ捨てて燐とデントを交互に見た
「二人の王子姿、中々いい感じじゃない?」
一人満足げに頷いて、ベルが持ってきた白いドレスを眺め、着替えてくるね、と簡易で作った更衣室に消えていく
「先輩着替えるみたいだし、燐職員室行ってきたら?」
ベルに促されて躊躇う燐にチェレンが痺れを切らして手を引いた
「どうせ委員会の事なんだからすぐに終わるさ。行こう、燐」
待たせていた罪悪感も手伝って、燐は渋々頷いてチェレンに続いて部室を出た
演劇部の宣伝ならいざしらず、思いもよらない所で宣伝させられ、燐の胸中は穏やかではいられなかった
写メらせてくれと言う女生徒に公演前だからとやんわりと断り、職員室では本来の内容よりも衣装の事や賛辞の言葉を聞かされ、バイトがあるからと帰ったチェレンと別れた頃には、燐の精神的な疲労はマックスに達していた
西日が校舎の窓から差し込んで、燐は目を細めた
部室への道を戻りながら階段の踊り場に出た時、燐は何かにぶつかる
思わずよろけて尻餅をつきかけた燐の手を何かが引いた
「よそ見してると、ケガをしますよ王子様」
ふ、と見上げれば、学内で噂の絶えないNの姿
「…すいません、N先輩」
軽く頭を下げた燐に首を振って、それから『キミが1年の燐?』と聞いた
「…そうですけど‥」
何故上級生のNが自分の名前を知ってるのか、と訝しげな顔をした燐に小さく笑ってNは謝る
「いや‥今度、演劇部の公演でデントの対の王子をやる子が1年の女の子で、凄くカッコイイって女子達が騒いでたから…どんな子かと思ってたけど」
「…何ですか‥?」
あからさまな好奇の視線に眉間にシワを寄せれば、Nは何の悪気もない事を前置いて燐を真っ直ぐに見つめた
「キミ、王子というよりは姫だよね。可愛いと思うよ」
「っ…」
言われ慣れない言葉に動揺を隠せずにいると、Nはまたクスクスと笑って燐の頭を撫でた
「来週の文化祭、期待してるから」
通り過ぎていくNを振り返る事も出来ず、燐は暫くその場で固まっていた
王子なんていうのは、ああいう人を言うんだな、と思いながら
文化祭当日
体育館の最終演目『白と黒の加護』は例年と変わらぬ盛況ぶりを見せ、大成功を納めた
撤収作業の合間にファンサービスの一環で写真やプレゼント等の贈り物を受け取り、燐は搬出口で風に当たっていた
多くなった荷物はベルに任せたので、後は部室へ帰り、王子の衣装を脱ぐだけ
アルミ製のサーベルを抜き、その刀身に自身を映してため息
「…この身は白の姫の為にあり、この命は白の姫の為に散る物…姫のナイト気取りとは笑わせる。俺だけが姫を護り愛せるのだ」
先程、舞台で述べたセリフを口にして苦笑い
剣をデント突き付けた時に聞こえた黄色い声
写真を依頼してきた時の女子のキラキラした視線
贈り物につけられたハートの数々
「…私だって‥」
昔からコンプレックスだった
華奢くてフワフワな女の子に憧れた
でも
どんなに自分を飾っても、姫より王子が似合う自分を自覚させられる
別に姫になりたいとは言わない
普通の女の子でいい
「見つけたよ」
声がした方を見れば、緑の髪を風に靡かせたNの姿があった
「‥N先輩…どうしたんですか?」
驚いたのは一瞬
すぐに剣を鞘へしまうと、いつもの調子でNに問う
「今日の舞台、見てくださいました?クライマックスの白の王子が黒の王子を倒して白の姫にプロポーズするシーン、何度も見せ方考えたところなんですよ」
「うん。観た」
「みんな良いシーンだったって先輩方に言ってくれてたんで、ホントに良かったです」
「うん。そうだね」
そう言って笑った燐に短く返事を返して、Nはふいに燐の手を取るとその場にひざまずいた
「せ、先輩!?」
「例え貴女の身にどんな闇が潜んでいようと、私はその闇から貴女を必ず護ると誓う。貴女の心が傷つき叫んでいる事に気づけたのは、この私だけです」
突然、劇中のセリフを口にするNに戸惑い身を引こうとする燐を、立ち上がり抱き寄せるN
「どうかイエスとだけ…貴女の心を私に。私だけの姫に…ー」
「ちょっ‥と!」
なんとかNを引きはがした燐がNと距離を取りながら強く睨みつける
「何なんですか!?急に!」
「‥キミは女の子だもの」
答えになってない答えを返して、Nは両手を広げた
「そうでしょ?キミは王子じゃなくて、姫になりたいんじゃないのかい?」
見透かしたようなセリフに燐はドキリとした
「キミの事、ホントはずっと前から知ってたよ。女子の黄色い声に応えながら、たまに物憂げな顔をして」
「そうだとして…だからって‥」
『何で』と言おうとして言葉に詰まる
別に王子の役が嫌な訳じゃない
この役は好きだ
だけど、たまに悩んでしまう
ずっとこのままなんじゃないのか、って
「‥大してお話もしてない先輩に見透かされるなんて…情けない限りですね」
自嘲気味に笑えば、Nは黙って首を振る
「僕だから、気づいたんだよ。キミを初めて見た時から気になっていた」
ー貴女を初めて見た時から、貴女の事が忘れられなかったー
「キミが好きだから」
ー貴女が好きですー
劇中のセリフと同じような言い回しだと感じながら、燐は冷静になれと自分に言い聞かせた
からかわれているに違いない
男役をやる女が物珍しいだけに違いない
「ありがとうございます、先輩。…夢、見せて下さって」
こんな自分を好きになる男なんていない
ましてや
こんな絵に描いたような王子のような人が、物語のように自分を見つけてくれるなんて
「何かの罰ゲームとかですか?私みたいな男女、先輩の隣に並ぶには不釣り合いですよ」
笑ってNの横を通り過ぎようとして、でもNがそれを許さなかった
「それを決めるのは僕だ」
しっかりと掴んまれた手を引き寄せられ、燐は至近距離でNと目を合わせる
「キミはとても可愛いよ。外見が少し凛々しいだけで、キミの本質は女の子そのものだよ」
『気づいたのが僕だけで良かった』と付け足して、Nは優しく笑う
「どうか私だけの姫になって下さい。貴女が私を知らないと言うなら、これから私を知ればいい。でも、心がもう既に惹かれあっているのを感じるでしょう?」
再びセリフを口にしたNに、燐も小さく笑い返す
「私は黒の王子。劇中の様に安易にイエスとは言えません。でも、先輩が気づいてくださったのなら…」
まずは知る事から
貴方の為にドレスを選ぶ事から、始めさせて下さい
きっとそれが似合う頃には、『イエス』と答えますから
END
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【あとがき】
燐様リクの学パロでした
ネタを思い付いたのが10月で、『あ、学祭いいなぁ』なんて思ってたのですが、季節は着実に学祭よりクリスマスやテストの時期に差し掛かってましたorz
演劇部で男前ヒロイン
Nが女の子になりたいヒロインの気持ちに気づいて…というくだりのつもりが、何だか無理から&ただのキザな男になりましたorz
何となくデントとカミツレにも登場してもらいましたが、一応そこは名前変換にしました
萌えもなく、寧ろイミフな感じですいません(__)
ちゃんと粗筋も別途考えて、劇中劇が無理くさくならないようしたつもるだったのですが…すいません
お受け取りいただけましたら幸いです(__)
Nも部員にしたら良かったんですが、Nは演劇なんかしなさそうな気がして
ベルはなんか手先が器用そうな気がして衣装係に
学パロってやっぱり難しいです(--;)
2010/11/24