寂しいが言えなくて
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全てのトレーナーが、人間が
ポケモン達と絆を結べるのならばどんなに幸せだっただろうか
そうであれば
僕だって世界を変えようなんて思わなかった
「‥レン、君はやっぱり凄いね」
僕が見たどの未来とも違う答えを
君は見つけている
「私だけじゃないの。チェレンやベル。アデクさんや‥本当にポケモンを愛しく感じていた人達の所には、みんな自然と帰ってきてるって」
レンは腕のライブキャスターにそっ、と触れた
城を出ずとも、外とは連絡を取っていたという事か
僕は今だに溢れていた涙を手で拭ってレンを見る
出会った時と同じ
真っすぐで純粋な瞳が僕を見ていた
「僕が無理矢理に世界を分けようとも、ポケモンも人間も、真に絆を結んだ者同士を引き離す事は出来ない…僕は間違っていたのかもしれない‥」
「違う」
レンはゆっくりと首を振って『違うよ』と繰り返した
「私とN、どちらも間違ってなんかない。どっちも正しいんだよ」
心のどこかで
この光景を期待していた自分がいる
ポケモンと人に、真に絆があるというのであれば
あの時にレシラムがレンを護ったように
その絆を見せるんじゃないか、と
「N、私‥カノコに帰るね」
レンの自由にさせる
そうレシラムとチャンピオンに約束したのは僕自身
引き止める理由はない
「みんなを連れて歩くのはちょっと大変だけど…カノコで待ってくれてる人がいるから‥」
もし私をなじる人がいたとしても、私はそれを受けなきゃいけないと思うの
そう告げるレンの瞳は、何の迷いもなく真っすぐで、僕は黙って頷いた
「私の事、護ってくれてありがとう」
「護ったのは、レシラムだよ」
僕は見ていただけ
そう言ってもレンは『それでも』と続ける
「私をここに置いてくれてありがとう」
引き下がらないレンに少し戸惑いながら、僕は鞄を手にして部屋を出ようとするレンを見ていた
「レシラム‥出れないね…」
部屋を出ていくポケモン達を見ながら、レンはポツリと呟く
僕はポケットを探り、一つのボールをレンに渡した
それはレンがレシラムを認めさせた時のボール
いつかこの城を出ていく時、レシラムが共に行くのであれば必要だろうと残しておいた一つだ
戸惑い、何かを言いかけたレンの言葉より早く、僕は口を開く
「さよなら」
踵を返せばレンの更なる戸惑いに空気が揺れる
僕はそれに気づきながら、一度も振り返らなかった
そしてレンは城を出ていった
レンの部屋を出たその足で、僕は久しぶりにトモダチの部屋を訪れた
自動ドアを抜けて部屋に入れば、みんなは僕を歓迎してくれる
「元気だったかい?会いにこれなくてごめんね」
置いてあったビーズクッションに腰を下ろせば、近づいてきたレパルダスが、その舌で僕の頬を舐めた
「‥虐められてなんかないよ…大丈夫」
耳の下あたりを指先でカリカリと擦れば、レパルダスは気持ちよさげに目を細める
しかし『虐め』の言葉に反応した彼らはワラワラと僕の周りに詰め寄り口々に声をあげた
「本当に。大丈夫だよ‥参ったな…」
どう言ったものかと苦笑いが浮かんで
ジッ、とこちらを見つめる彼らの瞳が、レンの部屋にいた彼らを彷彿させる
「ねぇ…君達は‥…」
僕が、スキ‥?
唐突の問いに、それぞれ顔を見合わせて不思議そうな顔をする
聞かなきゃ良かった、なんて瞬間的に思って立ち上がった時、その声に思わず動きが止まる
満場一致の声
何を当たり前の事を、と口々に叫ぶ
Nは僕らが嫌いなのかと不安な声さえ出して
「っ…はは‥」
何かが抜けていく感覚に、もう一度ビーズクッションに座り込む
込み上げてきた笑いは収まりそうにない
白と黒の狭間の
こんなに綺麗な色の名前を
僕は知らない
レン
君はずっと
こんな景色を見ていたのかい‥?
何故かまた溢れ出した涙を、トモダチが拭っていく
「‥僕も君達が大好きだ」
ゼクロムが言う通り
季節は段々と夏に向かい始めていた
城の中が蒸し暑くなるにつれ、ゼクロムは不機嫌そうな顔をして僕に抗議する
涼しさを求めるなら謁見の間以外に連れていくと言ってもボールに入ってはくれないし、動く気はないという
ゼクロムの為に吹き抜けになったこの部屋を涼しくしろというのがそもそもの無理難題だ
世界も夏に向かい始める中、様変わりしようとしている
まずは戻ってきたポケモンがいる者達にシリアルナンバー入りのモンスターボールの支給
それに合わせて、ポケモン達の行動制限にならない程度のアクセサリーでシリアルナンバーとの連携
盗難や部屋に入りきらす野ざらしになるのを防ぐ為にやむなく実施された物だ
アクセサリーの開発はライモンのミュージカルが大いに役立ち、販売の際はポケモンの意思が優先であり、人間の好みでは売らない事を原則とした
ポケモンを労働に使う事や、新たな捕獲に関してはまだ変わらないまま禁止している
どうあるべきかは、六賢人と協議の真っ最中だ
僕自身はこのままでも良いと思っているのだが、進んで働きたがるポケモンへの対処に悩む団員達へルールを作ってあげなければならない
少しずつ
少しずつ
以前と同じにならないよう
違う世界になるように
バサリ、と音がして
心地好い風が背後から吹き込む
何かが羽休めに来たのだろう
「N」
するはずもない声に、疲れがきてるのかと苦笑いが漏れた
「エヌ」
今度は腕に何かがしがみついた感覚
流石に幻覚を見たのかとも思ったが、感覚がそうじゃないと伝えてる
「‥レン…?」
「うん」
王座に座る僕の腕にしがみついたレンは床に膝をついたまま頷いた
「何で‥?」
「会いに来るな、とは言われなかったから」
そのまま僕を見上げてレンは笑う
「それに、寂しいだろうと思って」
「寂しくないよ。僕にはトモダチがいる」
怪訝そうな顔をしてレンは立ち上がる
そして膝を払いながら『そっか』と呟いた
「‥迷惑…だったのかな?」
そんな顔は狡い
思わず言葉に詰まって顔を背ければ、レンはその先に回り込んで僕を覗き込む
「言ってよ…寂しかった、って‥私は、寂しかった」
やっとお互いの心が交わったのに
レンはそう言ってただ僕を見つめる
心が交わる
それは、白と黒だけじゃないと知った僕の行動を指してだと解った
レンという不確定要素が
僕の見た、白と黒だけじゃない世界
白と黒を半分ずつにした世界を引き出した
それを僕たちの心が交わった結果だとレンは言う
「‥違うの?」
「違わない」
レンの腕を引いて
強く抱きしめる
自分の半身に再開したかのような心地良さ
求めていた温もり
レンも同じ事を感じたのか、強く僕を抱く
背後ではレシラムとゼクロムがお互いを呼び合い声を上げている
まるで僕たちのようだと思った
「レン、一度しか‥言わないよ」
「‥うん」
仕方ない、という響きを持ってレンが頷く
「ずっと、寂しかった」
END
+++++++++++++++++
【あとがき】
ギャース!アホみたいに長くなってしまったorz
ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました(__)
もしNが勝っていたとしても、最後にはこうなったんじゃないかな、と
ゲーチスさんに最初でいなくなっていただいたのは、この為です
あの人いたら素直にこうはなれないので
最後にはくっつけちゃったんですが、実はNがトモダチルームに入ったとこで終わりにしようかとも思っていたのです
でも一応ここは夢サイトだと気づいて(←)
くっつけるにいたりました
分割したのが良かったのか悪かったのかは解りませんが、大事に書いたつもりはつもりです
しかし…シリアスにしすぎて最早、切夢ですらなくなったビター仕様orz
一番はとにかく楽しんでいただけたらいいなぁ‥なんて思いつつ
宜しければ、BBSやClapにて何か一言いただければ嬉しいです(__)
2010/10/12