願わくば
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
やっぱり未来は変わらなかった
レンという不確定要素は過程とその選択肢を増やしただけで
何も変わる事は無かった
僕が見ていた通り
地に膝をついた君が
何とも言えない顔で僕を見つめて
それから
よろめきながらも立ち上がるレシラムの腕を、俯きながらギュッと抱いた
「ごめんね‥みんな…」
その時のレンが泣いていたのかは解らない
満足げに高笑うゲーチスと
驚愕と困惑をともなったチャンピオンとチェレンが駆け込んで来るのを視界の隅に捕らえながら、僕はレンをただ見つめていた
この満たされない想いはなんだろうかと
レンなら、僕に答えをくれると思っていた
ポケモンの全てを解放して
人とポケモンの世界を分けて
それだけが正しい事ではないと
僕は気づいていた
それでも
それは
僕の大部分を占めるソレには到底及ばないような小さな光にすぎなかった
「‥レン…凄く、残念だよ‥」
小さく呟くと、レンはゆっくりと顔を上げた
「そうね‥N…本当に‥残念…」
それから小さく笑って
ごめんね
と唇が動いた
そしてそのまま
フラリ、と倒れ込んだレンを受け止めたのは
他の誰でもなく、レシラムの大きな腕
顔を近づけて低く鳴くと、今度は周囲をねめつけて大きくいなないた
その衝撃に、城の壁や柱が壊れて降り注ぐ
レンに近づこうとしていたチェレンやチャンピオン達でさえ圧倒する衝撃波
舞い上がる埃がようやく落ち着き始めた時、ゲーチスの姿がない事に気づく
とっさに僕を囲んでいたダークトリニティ達に目をやれば、一人が小さく首を振った
「そう‥死んだか…」
特に何の感慨も持てずにいる自分に苦笑して、ダークトリニティ達に下がるよう指示する
レシラムの叫びはゲーチスに向けられていた
この場で唯一、レンに悪意を持つ者
敗者となって傷ついたレンを今にも殺さんばかりの殺気を漲らせていた者
主を選んだポケモンが主を護った
そんな現実を見せられて、改めてレンに感心する
彼女に魅せられて、彼女と絆を結ぼうとするポケモンの姿
それは僕なんかよりもずっと彼女を英雄に見せた
「レン!」
チェレンが彼女の名前を呼んだ事で、我に返る
何度呼びかけようとも、レンは微動だにしなかった
そして全てを排除するかのように、レシラムが再び声を上げる
「我を忘れているのかっ…」
レシラムに近づけないでいるチャンピオンの声に、思わず僕は笑った
声が聞こえない事が憐れに思える
だから人間は、簡単にポケモンを傷つける
人間を傷つけるよりたやすく
僕のゼクロムがバサリと翼を鳴らしてレシラムと対峙しようとする
「大丈夫だよ、ゼクロム。僕に任せて」
レシラムの波動から僕を護っていたゼクロムは僕を見てゆっくりと後退した
「レシラム!僕の声が聞こえるかい」
レシラムを刺激しないようにゆっくりと歩み寄れば、レシラムは低い唸り声を上げて僕を睨みつけた
「レシラム‥もうここには彼女を傷つける者はいないよ…解るね?」
今にも僕を噛み殺さんとするレシラムの視線
その瞳を真正面から見つめて、もう一度繰り返す
「もう誰も、レンを傷つけたりしない」
お前はどうだ、と問われて僕は苦笑いする
レンを傷つけるとしたらこの僕であるのは誰よりも承知している
「‥レンを休ませてあげたい。その後でレン自身の判断に任せる。僕たちの勝敗は決した‥これ以上争う気はないよ」
手を差し出すと、その真偽を確かめるようにレシラムは鼻先を近づけた
「N!レンをどうするつもりだっ…!?」
レシラムが心を開きかけた時に入る不粋な声に思わずため息が漏れる
鼻先を差し出したレシラムを優しく撫でて、僕はチェレンに聞いた
「じゃあ君はどうするつもりなんだい?僕はレンを休ませたい、と言っただけで監禁するなんて言ってない」
本当はそうしてしまいたいけども
それは違う
「ねぇ、チェレン…君はポケモンを手放した世界に目覚めるレンをどうするつもりだい?『君は悪くない、悪いのはNだ』とでも言って慰める?」
「っ…」
押し黙ったチェレンを見て僕は再びため息をついた
中途半端な同情や慰めは彼女を余計に傷つけるだけ
責任感の強いレンの事だから、誰の慰めにも応じず自分を責めるに違いない
外に出れば、彼女を責める者もいるだろう
それをどうするか選ぶのは、他ならぬレン自身
流石に幼なじみともなれば、それくらい解っていると思っていたが…
レシラムを見ると、僕に撫でられながらも視線はチェレンを見つめていた
品定め、といったところだろうか
「レシラム、キミが決めるといい」
「何をっ…」
「ここで彼女を休ませて目覚めるのを待つか、チェレン達と共に行くのか…それとも、彼女を連れてどこかに行くのか…キミが選ぶといいよ」
何を選んでも、今のレンには苦痛でしかない
ならばせめて
レンを護ったレシラムに最善を選ばせればいい
ゲーチスの悪意に気づきながらも、傀儡に馴れた心は対処する事が出来なかった
自分だけがポケモンを使って支配者となる
そんな幻想を抱くアレが、レンの英雄としての資質や真っすぐな心を邪魔に思うのは当然だった
そんな名目上の父親に嫌悪感を感じても
レンを特別に感じていても
レシラムの様に護る事が出来なかった僕に、レンの心を護れるなど言えるはずもない
「さぁ、選ぶんだレシラム」
一歩下がってレシラムを見上げれば、レシラムはレンを床に横たえ、そしてそれを護るように自らも体を横たえた
「…レシラム‥どうして‥」
チェレンの呟きが漏れる
その顔は
僕はこんなにもレンを想っているのに
そう言っていた
近づこうとするチェレンを眼力で諌めるレシラムに何かを感じたチャンピオンがチェレンの肩を叩く
「アデクさんっ‥!」
「N‥彼女が目覚めた時には彼女の意思に従うと言った言葉、信じてもいいな」
「‥もちろんです」
僕が何をしようとも、その時はレシラムが力付くで彼女の意思に添うはずだ
「‥そうか」
短い返事の後にチャンピオンはレンを見つめた
彼も彼なりに思う事があるのだろう
「‥さて、それではお引き取り願おうか。僕はこれからやらなくちゃいけないことが沢山あるからね」
控えていたダークトリニティ達が、その言葉を合図に二人の脇を囲む
「っ‥N!僕は君を認めない!どんな手段を使っても抗ってやるからなっ…!」
引きずり出されるチェレンの声が謁見の間に響いた
「…解ってるよ、レシラム」
レシラムの声を聞いて僕は頷く
自分の感情を持て余した男より、お前がマシに思えただけだ
「解ってるよ」
痛いくらいに
戻ってきたダークトリニティにレンを寝かせる部屋を用意させ、僕はレンを抱き上げた
彼女の頬を涙が伝う
ふ、と影がさしたのに気づき振り返れば、そのままついてくると言わんばかりの顔をしてレシラムが立っていた
「…‥悪いけど‥廊下は広くないんだよ。狭いけど、ボールに入ってくれるかい?部屋に着いたら出してあげるから」
言うとレシラムはフン、と鼻を鳴らして、自らボールへと戻る
「ゼクロムはどうする?」
聞くとゼクロムは王座の近くまで行くと、小さく体を丸め、返事の代わりに閉じた目を片目だけ開いて僕を見た
「解った。すぐに戻るよ」
レシラムの入ったボールを掴み、謁見の間を出る
廊下には恭しく頭を下げる七賢人達
もうすぐ僕の理想が実現する
そして
レン、目覚めた君は
僕に何て言うのかな?
君という不確定要素を取り込んだ僕の未来は、僕の見た通りに演算された
でもこの先の未来は
少しだけブレて見える
全ては君が目覚めてから‥
願わくば
君の心が壊れてないことを…
TobeContinue‥
+++++++++++++
【あとがき】
本当はこの続きを書きたくて書き始めたのに、なんだかダラダラとしたあげくに纏まってしまい、一度切りました
シリアスとかの方が得意なので、やってみようとしたらコノザマでしたorz
あんまり切ない系ってニーズないですかね(-.-;)
この二人でシリアスとか切ない系って、負ける事しか思い付かないあたり残念な頭です
続きが知りたい!
寧ろ半端だろうが!
って方はBBS、もしくはblogのClapでも押してやって下さいませ(__)
こういう時の為のClap、用意した方がいいのかな‥
2010/10/8
沢山の方からのClap、コメントいただいて、本当にありがとうございます(__)
続き、ただ今整頓執筆中です
もう少しお待ち下さい(__)
2010/10/10