虫よけ
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「それで、ベルったら可笑しいのっ…」
レンが屈託ない笑顔で幼なじみ達の事を話す
18番道路…というか海に初めて親につれられて来た時、浮輪に乗ったベルが調子に乗って急流に流され、迷子になったという話だ
迷子になって泣きじゃくってるかと思えば『楽しかったからまたやりたい!』と言ったそう
そんなレンの話を聞きながら、僕はサザナミタウンの浜辺を歩いていた
一緒にイッシュを周りながら、レンはしょっちゅう僕に幼なじみの話をして聞かせる
いわく
知ってもらいたい
という事らしい
当然僕はそういう聞かせて楽しい話もないし、ただレンの話に相槌を打つだけだ
「それでね、この間みんなで久しぶりに行ってきたんだ」
どこに? と聞くまでもない
18番道路の海だ
「ベルと水着に着替えて、浮輪持ってチェレンと合流したら『僕は流されないよ』ってポケモン出すの!ズルイと思わない?」
自分だけ波乗りなんて、と頬を膨らませて
「でも結局、ベルが無理矢理浮輪に乗せてチェレンを急流に流しちゃったの!帰ってきたチェレンってば、すっごい怒ってね」
「そうだろうね」
その時のチェレンに多少同情を覚えながら、僕は水平線を眺めた
「ねぇ、レン、僕たちも海に入ろうか…」
夏の焼けるような陽射しに照らされた海がキラキラ光る
きっと気持ちいいに違いない
同意を求めてレンを見ると何だか複雑な顔をして前髪をいじり始めた
「どうしたの?レン」
「えっ!?…ぁ‥水着…持ってきてないな、と思って」
慌てたようにレンは言う
「取りに戻ってもいいし、さっきそこで売ってるのも見たけど?」
そう言うとレンは殊更顔を赤くして固まった
「…せっかくだから‥新調‥しようかな」
ぽつりと呟いてから、レンは僕の服の裾を掴む
「‥一緒に、選んでくれる…?」
「勿論」
頷くと嬉しそうに笑うレン
店の中では水着を持ってあれやこれやと僕に聞いては試着を繰り返す
やっと決まった水着を購入してビーチに出ると、レンは嬉しそうに波打際へと駆け出した
「向こうの浅瀬まで行こうか」
そう提案してモンスターボールを取り出すと、レンは「ダメ」と僕を制して少し膨れた顔をした
「Nってばチェレンと同じ事するんだから!あれくらい泳げるでしょ?ね、行こう!」
パタパタと駆け寄って僕の手を取るレン
そして何故か急にパッと手を離すと先に行く、と言って海に戻っていく
相変わらずの百面相っぷりに、思わず笑いが漏れる
軽快に泳ぎながら浅瀬を目指すレンを追って、僕も海に足を入れた
「N、遅いよ!」
浅瀬に座り、貝殻を拾うレンは遅れてきた僕にそう言う
「遅い‥って、僕はすぐに追いかけたよ」
濡れ髪を軽く搾り、レンの横に座る
今は引き潮なのか、浅瀬にはうっすらと水があるだけで、寝転がる事も出来そうだった
「ねぇ、N。見てみて!」
横になろうかと考えてた時、レンが両手を差し出した
両手いっぱいの色とりどりの貝殻
「糸で繋げて、ブレスレットにでもしようかな、って」
褒めて って顔をして嬉しそうに笑うから、こちらも釣られて笑みが漏れた
「いいんじゃない」
ヨシヨシ、と頭を撫でてやれば、殊更気持ち良さそうに目を閉じる
「君のそういうとこ、可愛いと思うよ」
「っ‥!」
素直に告げると弾かれたように目を開けてレンはそっぽを向いてしまった
「っ、急にそんな事言わないでよ!」
耳まで真っ赤だから尚更可愛い
照れ隠しに貝殻をいそいそとビニールポーチにしまうから、また悪戯心が沸いて来て
レンがこちらを見ていないのをいい事に、ゆっくりとその肩を抱いて唇を耳元に押し当てた
「ホントに可愛い」
カチンコチン
という表現よろしく、レンは固まった
「‥ぇ、N…近いよ‥」
「うん?」
レンの消え入りそうな声
「その‥肌が…」
あたって
と、続けてレンは黙り込む
お互いに水着だから当たり前なんだけど、濡れた肌越しにレンの心臓が早鐘を打つのが解る
「‥レン」
「そ、そういえばチェレンがね!!」
まさにキスでもしようと顔を近づけた時だった
唐突に彼女の口から出た幼なじみの名前
「一緒に海に行った時、水着がね、可愛いって言ってくれて、きっと最近の水着って誰でも可愛く見えるように出来てるんだよね」
口早に言って、レンはごまかすように笑った
「そう!それでね、チェレンってばポケモンリーグにまた行くから体力つけなきゃってずっと泳いでて‥こないだライモンで会った時も挑戦しに行くって‥―」
限界
「っわ‥!?」
そのままレンを後ろに押し倒して、半身だけ捻ってレンを上から見下ろす
困惑してるレンの顔
少し怯えて視線がさまよう
掴んだ肩に嫌でも力が入る
「ぇ‥N…?」
「noel」
「ぇ…?」
「僕の本当の名前」
唐突に言われてレンは少し混乱しているようだ
「‥ねぇ、レン」
「はい」
「どうしてあの状況で他の男の名前、出せるの?」
流石のレンも僕が少し怒ってる事に気がついたらしい
言い訳しようとするレンの唇を塞いで
酸欠に喘ぐレンの眼前でニッコリと笑ってあげる
「誰でも可愛く見える水着、だっけ?」
「…うん‥」
自分で言った手前、引けなくなったレンがぎこちなく頷く
「じゃあよく見せてよ」
レンの両手を掴んで押さえ付ければ、水に濡れて色っぽくなったレンの全貌が見える
「ゃ‥やだっ!恥ずかしいよ」
「チェレンには、見せたんでしょ?」
「それはっ…」
言葉に詰まるレンをそのままに、僕はレンの首筋へ唇を這わせる
「え、Nっ!」
「noel」
制止だと解ってわざと知らないふりをする
「幼なじみっていっても、チェレンは男だよ」
「そう‥だけどっ…」
違う、と言いたげにレンは僕に抗議する
解ってないね
チェレンが君に追いつきたいのは、ただのライバル意識だけじゃないって
チェレンがレンに惹かれてるからこそだってこと
それから
「レン、僕だって男だ」
「解ってるよっ‥」
もう一度顔を覗き込めば、やっぱりまだ解ってない顔をしていて
それがまた悔しくて
レンをギュッと抱きしめた
「‥解ってないよ、君は」
僕がどんなに
「好きな娘の口から他の男の話ばかり聞かされて、穏やかでいられる男なんていない」
レンが好きかって事
「…ごめん‥」
レンから抱きしめ返されて、モヤモヤした物が消えていく気がする
「‥好きだよ…レン」
「うん‥」
「僕にこれ以上ヤキモチを妬かせないで」
「‥ごめんね」
また更に強く抱きしめられて、汚い気持ちよりも愛情の方が沸いて来る
「…キス、していい?」
「き、聞かないで…」
「されたくない?」
言うと、レン視線を泳がせながら口をパクパクさせて
「…どっち?」
聞けば顔を赤くして視線を反らす
「‥して‥欲しい…」
「じゃあ、こっち見て」
顎を掴んでこちらを向かせ、ゆっくりと口づける
「酷いことしてごめん」
今度は謝罪の意味を込めて
優しく何度も口づければ、レンは嬉しそうに笑った
ビーチに戻ってから、潮を流しにシャワー室に向かって、レンを待つ事しばらく…
女の子はやっぱり準備がかかるんだなぁ‥なんて思いながら自動販売機でサイコソーダを買った
ガタンと缶の落ちて来る音がしたと同時、誰かに服の裾を掴まれる
「どうかした?レン。のぼせたの?」
シャワーを浴びたにしても赤い顔をしたレンに、今しがた買ったばかりのソーダを渡し、もう一本買う為にお金を入れた
「‥び…」
レンの呟きは、ジュースが落ちてきた音に掻き消され、僕は再度レンに問う
「レン?」
「…首に‥ぁ…痕がついてっ‥」
「あぁ、それね」
そんな事か、と買ったばかりのソーダを慎重に開ける
「そ、それね、って!」
「いいでしょ、それくらい」
ビーチにいた男達が、横目でレンを見ていたのが気に入らなくて、ビーチから離れたっていうのに
レンってば全く気づかないでチェレンの話なんかするし
「虫よけ、だよ」
また酸欠の金魚みたく口をパクパクさせるレン
出入口近くのごみ箱に缶を捨てて、百面相のレンを振り返る
「おいで、レン。陽が暮れる前に帰ろう」
そう言うとレンは買ってあげたソーダを飲み干して、小走りに近づいて来る
「ねぇ‥」
「ん?」
繋いだ手をギュッと握りしめてレンが小さく呟く
「虫よけなんてなくったって‥私はノエルだけだから…」
恥ずかしそうに言って、レンは前髪をいじった
「知ってるよ」
照れると前髪をいじってごまかす癖も
本当に、僕だけな事も
少し不安そうに見上げるレンの手を強く握り返して、耳元に囁く
「僕もレンだけだよ」
END
++++++++++++++++++
【あとがき】
ヤキモチ妬くNが書きたかったのに、何をどう間違ったのか腹黒ヤキモチNになってしまいましたorz
そして微エロ←
あんまり裏要素は入れずにのほほんとしたブックにする予定だったのに‥
‥解せぬ…(-_-)
でも最後はバカップル目指したつもりです!
Nの本名、ライモンまで一周しても出てこなかったので捏造
何となくNから考えられる音がノエルしかなくて
ノインも考えたけどうーん‥って
『ノエル』って打ったら『noel』のスペルが出てきたので調べたら
noel(ノエル)=キリストの降誕祭。クリスマス。
クリスマス(の季節).クリスマス祝歌
との事で、王様だしいいかな、と決めてしまいました
ポケモンを解放する救世主だった訳だし
でもノエルなんて嫌だー!って方は名前変換出来るようにするんで言って下さいね
大して出てこないからいっか、って固定にしただけなので
長々としたあとがきになりましたが、何かBBSにいただけたら嬉しいです
そしてこんな所ですが、開設一週間にして2800overの訪問ありがとうございます(__)
これからも、どうぞよろしくお願いします!(__)
2010/10/7
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【追記】
Nの名前のアイデアをいただいたのでトップに記載しました
皆様がどれを選ばれるのかなぁーなんて楽しく考えながら名前変換にしました
2010/10/13