空回りの愛情≠片想い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
熱を絡ませて
肌を合わせて
吐息を絡ませて
「あ、やっ…ぃやっ‥」
「どうして?こんなにも身体は悦んでるのに」
昼夜問わずに重ねた身体
交わる事に馴れた身体がレンの心に反して僕に応える
「レンはココ、好きでしょ?」
「っあ!?ぁ、あ‥ゃあっ!ダメッ‥」
最奥まで当てれば、のけ反る身体
快感の嬌声
「っ‥イイよ。もっと、鳴いて…」
レンの耳元で囁けば更に小さく震えてこちらを締め付ける
「いゃっ、あっ‥N、だ、め…おね、がっ…ぁあっ!」
「嫌じゃなくて、イイって言ってよ、レン」
こんなに気持ち良くて
僕たちはこんなにも相性がいいのに
レンはいつまでも素直にならない
「っ‥レン、イくよ?」
「いゃっ!ゃ‥っああ…」
いつもの拒否の言葉を無視して熱を放つ
それを感じて身体を震わせるレンに何度もキスをしながら、目尻の涙を拭っていく
「レン、早く僕の子供を産んで‥」
優しく囁いてレンを抱きしめても、その返事はない
身体を捕らえて
犯して
それで思い通りになるわけもなくて
僕の腕から逃れようともがいてバスルームに駆け込むレンの足音を背中で聞きながら
どうしたらレンが僕を受け入れてくれるのかだけを考えていた
洗い流す
意味がないって解っていても
「っ‥悔しい」
ボディーソープで身体を擦りながら思わず漏れた声
何が悔しいのか
はっきりと解っていて
それが尚忌ま忌ましい
涙すら浮かんでもこない自分に呆れながら深く息を吐く
「レン」
ドア越しに呼ばれて、ふいの事にスポンジを取り落した
そんなこちらの動揺なんてNには解る訳もなく、返事が無い事を気にしてかもう一度こちらを呼ぶ声がする
「‥聞こえてるわ」
用件だけなら言ってくれればいいのに
どうせ拒否も同意も必要無い話
「‥愛してるよ」
コツンと扉に何かがあたる音
「愛してる」
こちらの応えを請うような声色
何度聞いても
それに返す言葉を持てない
虚しい言葉
Nの気配が無くなるのを待っていたらすっかりのぼせた身体を風にさらす
与えられた部屋の小さな出窓
半分しか開かない窓でも今は十分心地好い
こんな生活を続けてもうどれくらいになるんだろうか
Nがビデオレターと証したアレが撮られて以降、恐くてライブキャスターの電源は切ったまま
時計も
カレンダーもない
日が昇る事と日が沈む事で1日の始まりと終わりを確認する日々
テーブルに乗せられた果物カゴから林檎を取って、ナイフで剥きながらふ、と気がつく
最近、果物しか口にしてない
前は
いつだった?
「ぁ…」
ソレに気がついてナイフが手からこぼれた
木製の机に当たって跳ねた果物ナイフの音が耳の奥で響く
思わず下腹部に当てた手
「‥い…るの‥?」
聞いて応える訳もないと知りながら思わず漏れた言葉
とっさにナイフを掴んでみるも突き立てる事は出来ない
力の入らなくなった足がカクンと折れて、衝撃を和らげようとテーブルに手をつく
眩暈にも吐き気にも似た感覚
「…Nにバレちゃいけない‥」
真っ白な頭の中で
それだけがハッキリとしていた
あれからNは姿を見せない
陽が昇った回数にして21回
身体を求められる恐怖はないのに、変化を重ねる自分の身体が恐い
そもそも
Nが顔を出してきて、その時に求められたらどうしたらいい?
口が裂けても言えない
どんな事になるのか
想像もつかない
「‥籠女、カゴメ、篭の中の鳥は…」
呟いて辛気臭いと言ったNを思い出す
やり直せるならばやり直したいのに、どこに戻ればいいのかも解らない
逃げ道など無いなら作るしかないのか
それが最期になるとしても
そんな考えが何度も過ぎって首を振る
目尻には涙さえ浮かんで
でも泣きたくなんてないから大きく深呼吸をしてごまかす
泣いたら終わりだ
「レン、入るよ」
鍵付きの自動ドアに備え付けられたインターフォンから聞こえた声に身体がびくりと震えた
Nが来る
この数日、時間はあったのに考える事が出来なかった
次にNに会う時に何て言うべきか
ごまかす方法なんて思い付く訳もない
「こないでっ!」
いつもなら答えるはずのない声が僕を迎える
自動ドアが開いて飛び込んできたクッションを片手で制して、横をすり抜けようとしたレンの手首を掴んで引き止めた
「どこに、行くの」
いつもの拒絶でもない
初めて見る恐怖に歪んだ顔
何もかも諦めていたような顔が急に変わった
それだけで何があったのかさっする事が出来る
「産んでよ」
告げたレンの瞳が揺れる
「沢山愛してあげるから」
大丈夫だよ、と優しく抱きしめて
それでももがいて暴れるレンを逃がさないように強く抱きしめる
「ねぇ、レン。本当にキミが好きなんだ」
「知らないっ…離して!お願いだから…私を自由にしてっ‥」
『自由にして』と懇願する彼女に、一瞬違う物がかぶる
昔そばにいた彼らが何度も望んでいたという言葉
「‥どうして‥?」
思わず漏れた言葉
レンの表情が揺れる
「僕はこんなに愛してるのに!どうして僕に応えないんだっ‥」
自分でも驚くくらい声をあげて、強引にレンの腕を引いてベッドへ乱暴に投げ飛ばす
「辞めてっ!離してっ‥!!」
叫んで暴れるレンのドレスを乱暴に奪って、ベッドに強く押し付ける
「こんなに愛してるのにっ!こんなに僕はっ…!」
「いい加減にしてよっ!!」
強い声とそれに見合った衝撃
頬を打たれたのだと気づくまでに時間を要した
荒く息をついたレンが衣服を整えて、強い瞳で僕を睨みつける
「‥っ…いつまで御人形ごっこする気なの?」
言葉は強く静かで
贈った白のドレスに見合う
あの気高さ
「ちゃんと私を見て」
強く僕を睨む瞳がふと優しくなって
彼女をここに閉じ込める前の事を思い出す
戦う時
そうでない時
どんな時もあの瞳で見つめてくれていた
「何度も聞いたでしょ?どこ見てるの?話を聞いてって」
強く胸の前で握られていたレンの手がゆっくりと僕の頬に触れる
キミの手はこんなにも温かかった?
手を重ねて頬を寄せれば、汚い気持ちが全部抜けていく気がして、何度もその手の温もりを確認する
「…聞くよ。今更かもしれないけど…ちゃんと聞く」
「うん」
頷いたレンが深く息をついて目を閉じる
その動作にさえ目を奪われるほどに、僕はレンを愛しいと感じて
今ならレンの言葉が何であっても受け入れられるような気がした
2/2ページ