優しくするから、スキと言って
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「さぁ、レン、口を開けて」
もぎ取ったばかりの苺をレンの口元にやるも、その唇は頑なに閉ざされたままだ
「…仕方ないね‥」
レンに与えるつもりだった苺を自分の口に含み、レンの顎を優しく持ち上げて口移す
薄く開いた唇を舌先で割って苺を押し込めば、その味を思い出したかのようにレンは喉へと流し込んだ
「レン、さっきもいだばかりの苺だよ。美味しい?」
「…‥」
語りかけるも反応はなし
ただ苺は気に入ったみたいで、レンは薄く口をあけて唇を動かし苺を欲しがる
「気に入ってくれて嬉しいよ。ベルから君の好物だって聞いたからね」
ベル、という幼なじみの名前にピクリと体が反応するものの、相変わらず瞳は曇ったまま
蔕を取った苺をレンの口元に持っていくと、ゆっくりとソレに歯をたてる
レンがこうなってしまってどれくらい経っただろうか
ゲーチスが彼女を試すと言って団員を引き連れて行ったあの日
勿論勝利を収めてくるだろうと思って待っていた僕の目の前に連れて来られたのは
傷だらけで虚ろな目のレンだった
レンを連れてきたダークトリニティを問いただせば、事態は簡単だった
レンはポケモンバトルには勝利した
しかし
僕がレンを気に入ってる事をやっかむ連中が、レンに乱暴したのだ
何をされていたかは見てない
ただ男の団員も混じっていた
ダークトリニティの報告はそれだけだった
痣だらけ、土まみれのレンが、一体どこまで何をされたのかは解らない
けども
震えながら虚ろな瞳に涙をたたえ、触れられる事にも怯えているレンは、もう僕の知っている彼女ではなかった
ゆっくりと彼女の顔を覗き込めば、初めて瞳が揺れる
僕を見て
震える唇が何かを言おうとして
言葉にならない変わりに傷だらけの手が伸びてきた
「ぇ‥…ぬ‥」
「僕だよ、レン」
その手を掴んで僕の頬に当てれば、レンは酷く冷たい手をしていた
「酷い事を、されたんだね。‥ごめんね。助けてあげられなくて…」
言うとレンは泣きながら僕に抱き着いて、震えながら嗚咽を漏らした
一方的な暴力に虐げられて、レンの心はどんなに辛かったろうか
ひとしきりレンが泣いた頃、チェレンやベルがやってきて、得に僕がやったと思ったらしいチェレンは声を荒げていたけども
かえってレンを怖がらせたらしく、レンは僕から離れなかった
人は簡単に自分以外のモノを自分の勝手な考えで傷つける
「レン、僕が守ってあげる」
そう言った時にレンは少し笑った気がした
きっとあの時、先に会ったのが僕じゃ無かったら、レンは出会った誰かにすがりついただろう
「…苺、美味しかった?」
聞いてもレンが返事すらしないのを知って聞く
「口、拭くよ」
苺と一緒に持ってきたナプキンで口を拭おうとして、僕はレンにそっと口づけ、苺の果汁で汚れた唇を舌先で舐めとる
ここまでしても拒否すらないのか、と苦笑して唇を離せば、レンが僕のシャツの襟を掴んだ
「どうしたんだい?」
流石に怒ったのかと期待交じりに問えば、レンは唇をつい、と前に突き出す
「苺はもうないよ」
「…ん」
「‥していいって事…?」
返事のような、催促のような曖昧な声を良いように解釈して
レンにそっと口づける
一度だけで止まるはずもなく
何度も角度を変えて貪れば、レンもそれに応えた
「っ‥レン…僕はキミが好きだ‥…キミは、僕が好きかい?」
肝心な問いには終始無言
あの日以来声を無くして、レンは一言も言葉で表現しなくなった
それは、見舞いにくるベルやチェレンに対しても同じ
世界を変えたって
キミはもう帰ってこない
絶望にも似た感覚で目眩をおこしそうになるのをかろうじて耐え、レンから体を離した
レンを傷つけた団員は処分した
僕に誰も対抗出来る人間なんていなくなったから、ポケモンと人間の世界を分けた
ゲーチスが何か無駄な動きを見せていたけども、いつの間にか他の七賢人といなくなる事が多くなった
ダークトリニティの話では、ジムリーダーや一部のレジスタンス的な存在が、ゲーチスの企みに対抗しようとしているらしい
が、僕にはどうだっていい事だ
僕は僕の望む世界を手に入れた
後はレンさえ
せめて今より良くなってくれたらと思うのに
トモダチのように心が解らない
「…レン。そろそろ僕は戻るよ」
レンがキュッと僕の服を掴んで離さない
独りになるのが嫌だと言うのが解って、僕はわざわざ部屋を出ていく事を告げる
この部屋には彼女が連れていたポケモンだっている
決して独りではない
今だってずっとレンの周りで座り込み、彼女の心配をしている
それでも
あんなに心を通わせていたポケモン達にさえ心を閉ざして、レンは僕をだけを求める
それがどんなに虚しい事と知っていても
その瞬間だけの特別だとしても
僕はそれを求めてしまう
実際に部屋から出る必要なんてない
用があればダークトリニティ達が伝えにくるし、世界の改革は確実に行われている
レンの調子のいい日には見聞も兼ねて外出する
僕にはそれ以外に必要な事はない
「大丈夫、キミを独りにしないよ‥おいで」
キュッと首に腕を絡ませるレンを抱き上げて、ベッドに横たえる
ゾロゾロとついてくる彼女のトモダチも一緒にベッドに上がってその顔を覗き込んだ
「レン、彼らも心配してるよ」
そう言うとレンは少しだけ視線をそちらへ向けたが、それ以上はしなかった
彼女の代わりにその頭を撫でてやって、レンの隣へ横になり、彼女を抱きしめる
「ん‥」
安心するのか僕の胸に顔を埋めてレンは目を閉じた
「レン…スキだよ」
こんなキミでも今すぐ抱きたいくらい
どんなになっていても、離したくないくらい
「聞かせてよ…レン‥」
傷のよりどころにじゃなくて
僕をどう思うのか
「嘘でもいい‥」
好きだと言ってくれたら
僕は君に何だってするのに
「…キミを傷つける全てから、キミを守るよ」
少し強く抱きしめれば、レンが不思議そうに僕を見上げた
「‥ん?…大丈夫だよ」
そう言うと、レンは疑いもせずにまた僕の胸に顔を埋める
静かに寝息をたてはじめたレンを見ながら、僕はリモコンで部屋の照明を落とした
この暗闇の中で
寝言でもいいから彼女の声が聞けないかと願ながら
END
-----------------
【あとがき】
おぉぅ…ホントは黒Nのちょっと歪んだ系にしようと思って書きはじめたのに何を間違ったのかN悲恋になってしまいました
話が支離滅裂かもしれません←
場所的には電気窟だったか電気洞窟だったか(名前忘れた)のプラズマ団がそこかしこで待ち構えてた時のイメージです
中盤から会う団員の中に、結構な確率で『嫉妬か?』と思うような団員いましたよね(煉夜だけですか)
ゲームの対象年齢的にはないと思うんですが、負けて逆ギレして数に訴えてくるような奴がいても不思議じゃないかな、なんて
そんな事考えちゃう煉夜が歪んでるのかもしれません←
リクいただいてるので、次はそちらを更新予定ですが、こっちのブックでは、次こそ黒歪み系なNサンが書きたいな、と思ってます
2010/10/20