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雄英教師御用達の居酒屋、『三猿』。
今日は華金。
いつもの飲み会が開かれていた。
お店を出ると、夜風が思っていたより冷たかった。
「いやー、久々に飲んだわね!」
「そうですね〜」
他の面々とは解散し、2人で帰路につく。
ミッドナイトが上着を羽織りながら、隣を歩く13号に視線を向ける。
「大丈夫? 酔ってない?」
「だ、だいじょうぶです。先輩は?」
「ふふ、私はこれくらい平気よ。」
歩きながら、少しだけ13号の方に寄る。
肩が時々触れ合う距離。
酒に弱い13号は少しだけ飲んだようで、いつもよりぼーっとしているようだ。
しばらく沈黙が続いたあと、ミッドナイトがぽつりと言った。
「ねえ、亜南」
「はい?」
2人きりの時だけの呼び方。
彼女は歩みを緩め、街灯の下で立ち止まる。
「貴方に“先輩”って呼ばれるの、やっぱり寂しいのよね。」
13号も足を止め、驚いたように振り向く。
「え?」
ミッドナイトは苦笑して、いつもの余裕を少しだけ崩した。
「お酒のせい、ってことにしていいから聞いてくれないかしら?」
視線を逸らしながら、真剣に。
「私、貴方といる時は先輩後輩とか、教師とか、そういう肩書きじゃなくて、」
一瞬、言葉を探すように間を置く。
「“香山睡”として、貴方に呼ばれたいわ。」
夜の静けさが、二人を包む。
13号は胸の奥が、じんわり熱くなるのを感じていた。
「…睡、さん。」
小さく、でもはっきりと。
その瞬間、ミッドナイトは目を見開いてから、ゆっくり微笑んだ。
「ふふ、お酒の力を借りてよかった。」
彼女は一歩近づいて、13号の袖を軽く掴む。
「ありがとう亜南。
それだけで、今夜はすごく満たされたわ」
「こちらこそです。」
13号は少し照れながら、続けて言った。
「僕、睡さんがそう言ってくれて嬉しいです。」
ミッドナイトは満足そうに頷いた。
「じゃあ、帰り道の間だけでも、」
「?」
「その呼び方、続けて頂戴?」
ミッドナイトは悪戯っぽく微笑んだ。
夜道に並ぶ二つの影は、さっきよりも少しだけ近付いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝の職員室は、いつも通りのざわつきに包まれていた。
コーヒーの香り、資料の束、同僚達の雑談。
13号はいつもより落ち着かない。
理由は、言うまでもなかった。
(昨日の、夢じゃないよね?僕、先輩の事名前で…)
顔が熱い。
その時。
ドアが開き、ミッドナイトが入ってきた。
いつも通りの余裕ある歩き方、いつも通りの笑顔。
「あの、おはようございます!」
「あ、おはよう〜」
軽い挨拶が交わされる中、13号はほっとする。
普段通りだ。
昨日のことなんて、なかったみたいに。
自分もいつも通りにいれば良いんだ!
「そうだ13号、これ今日の授業で使うから。」
ミッドナイトが資料を差し出す。
「ありがとうございます。」
受け取ろうとして、ふっと口が先に動いた。
「睡さん、前回の授業の資料も…」
一瞬。
職員室の空気が、止まった。
13号は、はっとして両手で口元を押さえる。
(しまった、声に出てしまった…)
「っ、い、今のは…!」
周囲の教師たちが、きょとんとした顔でこちらを見る。
「ん? 今なんて言った?」
13号は頭が真っ白になる。
しかし。
ミッドナイトは一瞬だけ目を丸くした後、すぐにふっと微笑った。
いつもの大人の余裕、その奥に確かな嬉しさを滲ませて。
彼女は自然に資料を13号の胸に押し付ける。
「ありがとう、13号。」
何事もなかったかのように言ってから、
すれ違いざま、耳元で小さく囁いた。
「続き、後でね?」
13号の心臓が跳ね上がる。
「……っ」
ミッドナイトは振り返らず、颯爽と自席へ戻っていった。
残された13号は、ヘルメットの下で真っ赤になりながら、
胸の鼓動が収まるのを待つしかなかった。
資料の端に残る、彼女の体温。
昨日の夜が、確かに現実だったことを教えていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
(ミッドナイトside)
正直に言うと。
今朝は、いつも通りのつもりだった。
職員室の空気、コーヒーの匂い、
あの子が少し緊張した様子で立っているのも、全部いつも通り。
だから油断してた。
「これ今日の授業で使うから。」
資料を渡した、その瞬間。
『睡さん、』
呼ばれた。
一瞬、思考が止まった。
(今、なんて?)
聞き間違いじゃない。
あの声は、昨日の夜と同じだった。
胸の奥が、きゅっと掴まれる。
嬉しい、なんて軽い言葉じゃ足りない。
だってあの子、自分から呼んだのよ。
酔った勢いでもなく。
誰かに言わされたわけでもなく。
“職員室”で。
“皆の前”で。
あまりに無防備で、可愛くて。
正直、顔が緩みそうになったのを必死で抑えた。
(だめだめ。ここは大人の余裕よ、)
だから笑った。
何事もなかったみたいに。
「ありがとう、13号。」
そう返しながら、すれ違いざまに囁く。
「続き、後でね?」
あれは半分、約束。
もう半分は、逃がさないため。
背中越しに感じた、あの子の動揺。
ヘルメットの下で、きっと真っ赤になってるのが容易に想像出来た。
(…もう)
心の中で、小さくため息をつく。
あれを、なかったことになんて出来る訳がないでしょう?
だから私は決めていた。
二人きりで。
誰にも邪魔されない場所で、もう一度呼び合いたい。
資料を机に置きながら、口元が自然と緩む。
(ねえ、亜南。
あなたが思ってるより、私はずっと本気よ。)
ミッドナイトは歩みを進める。
先程の約束を果たす為に。
今日は華金。
いつもの飲み会が開かれていた。
お店を出ると、夜風が思っていたより冷たかった。
「いやー、久々に飲んだわね!」
「そうですね〜」
他の面々とは解散し、2人で帰路につく。
ミッドナイトが上着を羽織りながら、隣を歩く13号に視線を向ける。
「大丈夫? 酔ってない?」
「だ、だいじょうぶです。先輩は?」
「ふふ、私はこれくらい平気よ。」
歩きながら、少しだけ13号の方に寄る。
肩が時々触れ合う距離。
酒に弱い13号は少しだけ飲んだようで、いつもよりぼーっとしているようだ。
しばらく沈黙が続いたあと、ミッドナイトがぽつりと言った。
「ねえ、亜南」
「はい?」
2人きりの時だけの呼び方。
彼女は歩みを緩め、街灯の下で立ち止まる。
「貴方に“先輩”って呼ばれるの、やっぱり寂しいのよね。」
13号も足を止め、驚いたように振り向く。
「え?」
ミッドナイトは苦笑して、いつもの余裕を少しだけ崩した。
「お酒のせい、ってことにしていいから聞いてくれないかしら?」
視線を逸らしながら、真剣に。
「私、貴方といる時は先輩後輩とか、教師とか、そういう肩書きじゃなくて、」
一瞬、言葉を探すように間を置く。
「“香山睡”として、貴方に呼ばれたいわ。」
夜の静けさが、二人を包む。
13号は胸の奥が、じんわり熱くなるのを感じていた。
「…睡、さん。」
小さく、でもはっきりと。
その瞬間、ミッドナイトは目を見開いてから、ゆっくり微笑んだ。
「ふふ、お酒の力を借りてよかった。」
彼女は一歩近づいて、13号の袖を軽く掴む。
「ありがとう亜南。
それだけで、今夜はすごく満たされたわ」
「こちらこそです。」
13号は少し照れながら、続けて言った。
「僕、睡さんがそう言ってくれて嬉しいです。」
ミッドナイトは満足そうに頷いた。
「じゃあ、帰り道の間だけでも、」
「?」
「その呼び方、続けて頂戴?」
ミッドナイトは悪戯っぽく微笑んだ。
夜道に並ぶ二つの影は、さっきよりも少しだけ近付いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝の職員室は、いつも通りのざわつきに包まれていた。
コーヒーの香り、資料の束、同僚達の雑談。
13号はいつもより落ち着かない。
理由は、言うまでもなかった。
(昨日の、夢じゃないよね?僕、先輩の事名前で…)
顔が熱い。
その時。
ドアが開き、ミッドナイトが入ってきた。
いつも通りの余裕ある歩き方、いつも通りの笑顔。
「あの、おはようございます!」
「あ、おはよう〜」
軽い挨拶が交わされる中、13号はほっとする。
普段通りだ。
昨日のことなんて、なかったみたいに。
自分もいつも通りにいれば良いんだ!
「そうだ13号、これ今日の授業で使うから。」
ミッドナイトが資料を差し出す。
「ありがとうございます。」
受け取ろうとして、ふっと口が先に動いた。
「睡さん、前回の授業の資料も…」
一瞬。
職員室の空気が、止まった。
13号は、はっとして両手で口元を押さえる。
(しまった、声に出てしまった…)
「っ、い、今のは…!」
周囲の教師たちが、きょとんとした顔でこちらを見る。
「ん? 今なんて言った?」
13号は頭が真っ白になる。
しかし。
ミッドナイトは一瞬だけ目を丸くした後、すぐにふっと微笑った。
いつもの大人の余裕、その奥に確かな嬉しさを滲ませて。
彼女は自然に資料を13号の胸に押し付ける。
「ありがとう、13号。」
何事もなかったかのように言ってから、
すれ違いざま、耳元で小さく囁いた。
「続き、後でね?」
13号の心臓が跳ね上がる。
「……っ」
ミッドナイトは振り返らず、颯爽と自席へ戻っていった。
残された13号は、ヘルメットの下で真っ赤になりながら、
胸の鼓動が収まるのを待つしかなかった。
資料の端に残る、彼女の体温。
昨日の夜が、確かに現実だったことを教えていた。
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(ミッドナイトside)
正直に言うと。
今朝は、いつも通りのつもりだった。
職員室の空気、コーヒーの匂い、
あの子が少し緊張した様子で立っているのも、全部いつも通り。
だから油断してた。
「これ今日の授業で使うから。」
資料を渡した、その瞬間。
『睡さん、』
呼ばれた。
一瞬、思考が止まった。
(今、なんて?)
聞き間違いじゃない。
あの声は、昨日の夜と同じだった。
胸の奥が、きゅっと掴まれる。
嬉しい、なんて軽い言葉じゃ足りない。
だってあの子、自分から呼んだのよ。
酔った勢いでもなく。
誰かに言わされたわけでもなく。
“職員室”で。
“皆の前”で。
あまりに無防備で、可愛くて。
正直、顔が緩みそうになったのを必死で抑えた。
(だめだめ。ここは大人の余裕よ、)
だから笑った。
何事もなかったみたいに。
「ありがとう、13号。」
そう返しながら、すれ違いざまに囁く。
「続き、後でね?」
あれは半分、約束。
もう半分は、逃がさないため。
背中越しに感じた、あの子の動揺。
ヘルメットの下で、きっと真っ赤になってるのが容易に想像出来た。
(…もう)
心の中で、小さくため息をつく。
あれを、なかったことになんて出来る訳がないでしょう?
だから私は決めていた。
二人きりで。
誰にも邪魔されない場所で、もう一度呼び合いたい。
資料を机に置きながら、口元が自然と緩む。
(ねえ、亜南。
あなたが思ってるより、私はずっと本気よ。)
ミッドナイトは歩みを進める。
先程の約束を果たす為に。
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