炎の中で、何を憶う
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雄英高校の職員室。
13号は小さくため息をついた。
「うーん、やっぱり難しいですね。」
手元のプリントには
《災害復旧ボランティア活動・参加者募集》
の文字があった。
休日に参加できる生徒を募っているが、思ったより集まりが悪い。
危険はない補助活動とはいえ、瓦礫の運搬や清掃作業。
華やかでも楽でもない。
「亜南。それ今週末よね?私も行くわよ。」
隣で書類整理をしていたミッドナイトが微笑む。
「ありがとうございます先輩。意味のある活動なんですけどね。魅力が伝わりにくいのかな…。」
その時、職員室のドアがノックされた。
「失礼します。」
顔を出したのは名字名前だった。
「あら、どうしたの?」
「提出物を持ってきました。」
書類を渡そうとして、ふと13号の手元のチラシに目が止まる。
「ボランティアの募集ですか?」
13号が顔を上げる。
「はい。災害現場の後方支援活動です。
なかなか人が集まらなくて…。」
そう言いながら少し困ったようにヘルメットを掻く13号。
名前はチラシを覗き込む。
「私、参加してもいいですか?」
間髪入れない申し出に13号が目を丸くする。
「本当ですか!?」
「はい。私で良ければ。」
特別なことを言ったつもりはない顔。
ミッドナイトはその横顔を見て、少しだけ目を細める。
(やっぱり放っておけないのよね。)
13号の声色がぱぁっと明るくなる。
「とっても助かります!お二人がいれば心強いです。」
その言葉に名前がミッドナイトを見る。
「先生も行かれるんですか?」
「えぇ。勿論よ。見張りも兼ねてね。」
軽くウインクするミッドナイトに名前は少し笑って頭を下げる。
「心強いです。」
13号もほっとした様子で頷く。
職員室の空気が、少し明るくなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ボランティアの当日。
臨時の避難所となっている小学校の体育館は、慌ただしさと疲労の空気が混ざっていた。
積み上げられた支援物資の箱。
仕分け待ちの衣類。
行き場のない段ボール。
「まずは通路確保からお願いできますか?」
現地スタッフの指示に、名前はすぐに頷く。
「はい!」
返事と同時に動き出す。
重い荷物もひょいと持ち上げ、通路を塞いでいた箱を手際よく運び出す。
ただ力任せじゃない。
崩れない積み方、取り出しやすい配置、次の作業者が動きやすい動線。
「あの子よく働くねぇ。」
スタッフが小声で言う。
少し離れた場所で様子を見ていたミッドナイトは、静かに腕を組む。
「えぇ。自慢の生徒なんです。」
名前は次に、物資の仕分けに加わる。
「子ども用の衣類はこっちにまとめましょうか。」
「サイズ分けしたほうが探しやすいと思います。」
指示を待つ事もなく、出しゃばる事もない。
“今必要なこと”の隙間に、ぴたりとはまる動き。
やがて、小さな子どもが名前の袖を引いた。
「おねえちゃん、これどこに置けばいいの?」
毛布を抱えた女の子。
名前はすぐ目線を合わせてしゃがむ。
「持ってきてくれたの?ありがとう。
じゃあ一緒にあっちの棚に置こうか。」
手伝ってもらう形にして、一緒に歩く。
その様子を見て、別の子どもも寄ってくる。
「おねえちゃん!これも!」
「僕もお手伝いやる!」
気付けば小さな人だかりが出来ていた。
名前は笑いながら、一人ひとりに声をかける。
「すごいね、力持ちだ!」
「ありがとう、助かるよ。」
名前に褒められ、子どもたちの顔に、少しずつ笑顔が戻ってきた。
その光景を見て、13号が感心したように呟く。
「先輩。凄いですね、あの子。」
ミッドナイトは目を細める。
「でしょう?」
「…何で先輩がドヤ顔なんですか。」
力仕事も、気配りも子どもへの接し方も完璧にこなしている彼女を遠目で見る2人。
その時、名前が疲れて座り込んでいた男の子に水を渡した。
「いっぱい頑張ったね。少し休もう。」
自分のタオルでその子の手を拭いてあげる仕草に、ミッドナイトの胸が少しだけ締めつけられる。
(貴女は、誰かを助けるのが上手すぎるわ。)
だからこそ思う。
(誰かに助けられる番も、ちゃんと来てほしいのよ。)
夕方の光が体育館に差し込み、慌ただしかった空間に少しずつ落ち着きが戻っていく。
その中心にいる名前は汗だくで、少し疲れていて。
それでも、柔らかい笑顔で子どもたちに囲まれていた。
ヒーローの卵としてではなく、ひとりの人間として。
彼女の強さはもう十分すぎる程、周りに認められていた。