貴女に贈る歌。
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雄英高校の文化祭。
校内は朝から浮き足立っていた。
屋台の呼び声、焼きそばやたこ焼きの匂い、あちこちから聞こえる笑い声。
日が沈むにつれ、視線は自然と校庭の特設ステージへ集まっていく。
昼間の喧騒が嘘のように落ち着き、校庭には夜の空気が満ちていた。
特設ライブステージには色とりどりの照明。
ミッドナイトは観客席で腕を組み、進行表を流し見していた。
彼女はこう見えて誰よりも生徒思いであり、イベント時には真面目に仕事をこなす。
(この後は軽音部、次がダンス部。特に変わったことはないわね。)
その時、司会をしていたプレゼントマイクの声が弾んだ。
『おーっと驚けお前ら!次はななななーんと!!あいつが歌うぜ!!!』
ミッドナイトが眉を上げる。
(山田ぁ、そんなの聞いてないわよ。)
嫌な予感と、少しの高揚。
何が起きても良いように、すぐに動ける位置に向かおうと立ち上がろうとした。
その時。
『スペースヒーロォォォ!13号ォォオ!』
煩わしいアナウンス。
その内容に、ミッドナイトの思考も、動きも止まった。
「え?」
聞き間違いかと思った。
観客席から湧き上がるざわめきが、現実を突きつけてくる。
その声に混じって、ステージ奥の暗がりが動いた。
白いライトが、ゆっくりと灯る。
その中心に立っていたのは、間違いなく13号だった。
ヒーローコスチュームは着ていない。
スーツの上着を脱ぎ、マイクを握っている。
ミッドナイトは息を呑む。
(嘘でしょ。あの子、そんな事一言も…。)
いつもの落ち着いた佇まい。
けれど、どこかぎこちない肩の力。
マイクを握る手が、ほんのわずかに震えているのが見えた。
胸の奥が、ざわりとする。
あの子が歌を歌うなんて。
教師陣の飲み会でカラオケに一緒に行ったことはあるが、あの時13号は酔い潰れてしまった。
人前で目立つ事を好まない彼女がステージの真ん中に立つこの状況が、ミッドナイトには信じられなかった。
前奏が流れ始める。
静かで、優しい旋律。
一音目を聞いた瞬間、ミッドナイトの背筋に、ひやりとした感覚が走った。
歌が始まる。
低く、柔らかく、それでいて真剣な声。
会場が、少しずつ静まり返っていく。
歌詞が進むにつれ、ミッドナイトの表情が変わっていった。
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
「……っ」
(やめて。そんな顔で、そんな歌。)
「何度も君を選ぶ。」
「君が笑うなら、それだけで良い。」
「君に触れたい。」
「添い遂げよう。」
一つ一つの歌詞が、声が。
ミッドナイトを魅了する。
ミッドナイトの頬が、はっきりと熱を帯びた。
13号は歌いながら、確かにこちらを見ている。
ミッドナイトだけを。
(何なのそれ…。反則よ。)
心臓が、うるさい。顔が熱い。
誤魔化そうとしても、赤くなっているのが自分で分かる。
慌てて顔を背け、髪で頬を隠す。
歌が終わる。
一瞬の静寂のあと、割れるような拍手と歓声。
「最高!!」
「先生〜、歌上手すぎ!」
その中で、ミッドナイトはまだ動けずにいた。
胸を押さえ、深く息をつく。
ステージ上の13号が一礼し、マイクを口元に戻す。
「ありがとうございました!皆さん文化祭最後まで楽しんでください。」
拍手が鳴り止まぬ中、13号がステージから降りていく。
ミッドナイトは、そっと目を閉じ、誰にも見えない所で、確かに、嬉しそうに微笑んでいた。
文化祭の夜。
秘密の想いは、歌になって空に溶けていく。
気付いてしまったのは、
ミッドナイト、ただ一人。
早く仕事を終わらせて、あの子に会いに行こう。
私をこんな気持ちにさせたのよ?
会って、からかって、困らせてやる。
校内は朝から浮き足立っていた。
屋台の呼び声、焼きそばやたこ焼きの匂い、あちこちから聞こえる笑い声。
日が沈むにつれ、視線は自然と校庭の特設ステージへ集まっていく。
昼間の喧騒が嘘のように落ち着き、校庭には夜の空気が満ちていた。
特設ライブステージには色とりどりの照明。
ミッドナイトは観客席で腕を組み、進行表を流し見していた。
彼女はこう見えて誰よりも生徒思いであり、イベント時には真面目に仕事をこなす。
(この後は軽音部、次がダンス部。特に変わったことはないわね。)
その時、司会をしていたプレゼントマイクの声が弾んだ。
『おーっと驚けお前ら!次はななななーんと!!あいつが歌うぜ!!!』
ミッドナイトが眉を上げる。
(山田ぁ、そんなの聞いてないわよ。)
嫌な予感と、少しの高揚。
何が起きても良いように、すぐに動ける位置に向かおうと立ち上がろうとした。
その時。
『スペースヒーロォォォ!13号ォォオ!』
煩わしいアナウンス。
その内容に、ミッドナイトの思考も、動きも止まった。
「え?」
聞き間違いかと思った。
観客席から湧き上がるざわめきが、現実を突きつけてくる。
その声に混じって、ステージ奥の暗がりが動いた。
白いライトが、ゆっくりと灯る。
その中心に立っていたのは、間違いなく13号だった。
ヒーローコスチュームは着ていない。
スーツの上着を脱ぎ、マイクを握っている。
ミッドナイトは息を呑む。
(嘘でしょ。あの子、そんな事一言も…。)
いつもの落ち着いた佇まい。
けれど、どこかぎこちない肩の力。
マイクを握る手が、ほんのわずかに震えているのが見えた。
胸の奥が、ざわりとする。
あの子が歌を歌うなんて。
教師陣の飲み会でカラオケに一緒に行ったことはあるが、あの時13号は酔い潰れてしまった。
人前で目立つ事を好まない彼女がステージの真ん中に立つこの状況が、ミッドナイトには信じられなかった。
前奏が流れ始める。
静かで、優しい旋律。
一音目を聞いた瞬間、ミッドナイトの背筋に、ひやりとした感覚が走った。
歌が始まる。
低く、柔らかく、それでいて真剣な声。
会場が、少しずつ静まり返っていく。
歌詞が進むにつれ、ミッドナイトの表情が変わっていった。
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
「……っ」
(やめて。そんな顔で、そんな歌。)
「何度も君を選ぶ。」
「君が笑うなら、それだけで良い。」
「君に触れたい。」
「添い遂げよう。」
一つ一つの歌詞が、声が。
ミッドナイトを魅了する。
ミッドナイトの頬が、はっきりと熱を帯びた。
13号は歌いながら、確かにこちらを見ている。
ミッドナイトだけを。
(何なのそれ…。反則よ。)
心臓が、うるさい。顔が熱い。
誤魔化そうとしても、赤くなっているのが自分で分かる。
慌てて顔を背け、髪で頬を隠す。
歌が終わる。
一瞬の静寂のあと、割れるような拍手と歓声。
「最高!!」
「先生〜、歌上手すぎ!」
その中で、ミッドナイトはまだ動けずにいた。
胸を押さえ、深く息をつく。
ステージ上の13号が一礼し、マイクを口元に戻す。
「ありがとうございました!皆さん文化祭最後まで楽しんでください。」
拍手が鳴り止まぬ中、13号がステージから降りていく。
ミッドナイトは、そっと目を閉じ、誰にも見えない所で、確かに、嬉しそうに微笑んでいた。
文化祭の夜。
秘密の想いは、歌になって空に溶けていく。
気付いてしまったのは、
ミッドナイト、ただ一人。
早く仕事を終わらせて、あの子に会いに行こう。
私をこんな気持ちにさせたのよ?
会って、からかって、困らせてやる。
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