序章
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襲撃を受けた数日後、黄色の潜水艦――ポーラータング号は一つの島へ停まった。
「おーい、着いたぞ。ミヅキ。」
起きろ!私の体を揺さぶる温かい温度で目を覚ました。
私を起こしたのは、ペンギンとシャチだった。
「着いた……?」
「着いた!着いた!シャボンティ諸島だぜ!」
「目が……痛い……。」
そこまで船内が明るい訳ではないが、照明が直に目に入ってくる。寝起きの人間には刺激が強い。
「寝過ぎだ。バカ。」
目を細め、光に順応しようとしていると後頭部を叩かれた。叩いた人間は知っている。
というか、コイツだけしか私を叩いてこない。互いに互いの過去を知っている者同士だからこそ。
「ローの方が馬鹿なんですー!人の頭を叩くな!!」
ウゥー!!と唸り声を上げ、ローへ威嚇を向ける。向けられた本人は気にする様子もなく、無視をしてくる。
酷い奴だ。彼はハクガンの元に行き、指示を出している。
「浮上します!」
ハクガンの声で、船が浮上していく。体に慣れ親しんだ浮遊感と上昇の重みが掛かってくる。
港へ停まった事を確認し、船員は扉を開けて外へと出て行く。
数日ぶりの空気は美味しい。そして、遠くからでもこの島が賑わっている観光地の様な場所だと、賑やかな声が聞こえてくる。
「キャプテン!調達はこっちでやっておきますね!」
「ああ。」
呆けて諸島を見ている私の隣に、ローが来る。
「他の奴らに調達は任せて、行くぞ。」
「何処に!?シャボンティに?」
「楽しみにしてたんじゃねぇのか?」
「ううっ……正直に言えば、楽しみだったけども……。」
「下手な事をしなけりゃ、見つからねぇよ海軍に。」
「戦闘が起こんなきゃな!!新聞見ていると、他の航路を行ってた海賊たちもここに集まっているって感じるし……何よりも、麦わらも来るんじゃん……何をしでかすか分らんよ……。」
巻き込まれるのだけは、ごめんだ。
我らが船長のトラファルガー・ローもなにかと新聞の見出しになる事が多かったが、東の海 出身の麦わら帽子がトレードマークの一味――”麦わらの一味”は結構な高頻度で巷を賑わせている。
最近の大ニュースだと、世界政府を敵にまわしたらしい。そして、勝ったらしい。
ただ、麦わら達は狂ったとも表現が出来るぐらいに世間を賑わせているが、何か理由じみたものがあるとさえ読んでしまう。
「覚悟はとっくに出来ていた筈なんだけどな……。」
人を怖いと思ってしまう。ローはとっくに克服しているのに、私は未だに人の目を気にしてしまう。
互いに事情は違うのに、同じような過去だから。
視界に影が差す。頭に上着として着ているパーカーのフードが被された。
サイズが大きめの為、被っただけで視界が狭くなる。
こんな事をするのは一人しかいない。
「ロー。」
フードを上にずらしながら、見上げる。隣にいる彼は一瞬だけ視線を私に向けるが、すぐに前の方に戻してしまう。
「無理して来なくても良いんだぞ。」
「イーー!そう言われると、無性に行きたくなる。行く!絶対、行ってやる!!」
地団駄を踏む私に「天邪鬼。」とローはお得意のニヤリ顔をする。もう進み始めていて、足の長さが長いから距離が開いていく。
負けじと、フードを被ったままその後を追い、船を降りた。
久しぶりの地面は、変な感触がする。硬くて、自分の力が跳ね返ってくる感じがしない。それと体が重たいと。長い事、海の中にいたからただの地面の感触なのに変だと感じてしまう。
巨大なマングローブが集まって出来た諸島。その地面からは特殊な樹脂が出ていて、空気が入る事でシャボン玉が出来上がる。
これがシャボン玉が浮いている幻想的な光景の正体だ。
ローに着いて行った船員は私だけでなく、喋る白熊の航海士――ベポにペンギン、シャチの三人も一緒だ。この三人も私やローと古くからの付き合いがある、所謂ハートの中では古参だ。
「で、キャプテン。何処か行く予定があるの?」
「まあな。」
「あ!おれ、遊園地に行きたいな!」
「遊園地に行ってどうすんだよ、シャチ。」
「面白そうだって、ペンギンだって言ってたじゃんか!ミヅキだって!!」
「うわぁ!私まで巻き込まれた!!何も言ってないのに!」
「お前ら、うるせぇよ。」
あてもなくブラブラと歩くのが、5人での上陸時のスタイルだ。その時の賑わいは、通行人の目を引く感じではあると思う。
主に煩い方面で。
今回も今までと同じように騒ぎながら諸島を見て回る。
周りを見ながらも景色は変化する様で、似たり寄ったりだ。迷子になりそうだ、とウエストポーチからポケットサイズの観光地用の本を出す。
前方に注意しながらも本を盗み見る。
「長居はするつもりはねぇが、まあ、アイツが関わっている店に足を運んでみるのも良いかもな。」
「アイツって……。」
ローの言葉に一人だけ姿が浮かぶ。私とローが出会うきっかけになり、私とローが海に出る理由の一つになりやがったどうしようもない海賊。
ピンク色のファーを愛用する王下七武海の一人――ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
人を食ったようなニヤニヤした顔で、人を煽る様な事しか言わない。思い出しただけで怒りと嫌悪感が体中を走る。
「どうせ、あんな奴が関わっている店なんてろくでもねえでしょ。」
「だろうな。世界貴族までご愛顧してるらしいしな。」
「ええ……そんな所行こうとしてたの?絶対に、何か起こるじゃん……。」
ガイドブックの一部に視線が固定される。
『1番~29番グローブーー無法地帯及び、人身売買店。』
(ろくでもない事しかないだろうな……。)
世界を作った人間達の末裔――『世界貴族』がいる聖地”マリージョア”がシャボンティ諸島の近くにある。もっと言えば、これから新世界に行く為に超えるレッドラインの壁の上に、その聖地とやらはある。
世界貴族には誰も逆らえない。逆らうと海軍の大将がやってくるから。
だから、気に入られたら人生が終わる。奴隷になるしかないのだ。その奴隷というモノが、こき使われる労働力だけで終わればいいが……多分、それだけでは終わらない。終わる筈がない。
「おい、しっかり前見て歩け。ミヅキ。」
痛い。額に鈍い痛みを感じた時には、ローの背中にぶつかっていた。
ロー達が歩みを止めた事に気が付かなかった。考え事をしていたのと、本ばかりに注意がいっていた事により。
「ごめん。」
「案外、胸糞悪いだけでなく、お前にとっても”楽しい”があるかもな。」
止まったローの視線の先を見る。
彼は空いていた木箱に腰をおろし、変わらず私と同じ光景を見ている。
それは、海賊同士の一触即発しようとしている場面だった。
片や破戒僧海賊団船長のウルージ。片やキッド海賊団の戦闘員のキラー。どちらも新聞で見た事がある顔だった。
何があってそうなったのか知らないし、キッド海賊団は好戦的なメンツで揃っているからキッド海賊団の方から手が出たのかもしれないとは想像がつく。
これの何処が――、
「何処が楽しいのかね、ロー。ただの争いやん。無益すぎる。」
「そうかも知んねぇが、ライバルの情報が手に入るのは益だろ。」
今まで楽しいのと興奮状態だった気持ちが、一気に萎える。既に船に帰りたい気持ちにすらなっている。
破戒僧は、私が持ち上げられない程の大きくて太い金属製の棒を太い両腕で振り回している。衝撃が強く、相手を強打する為に放たれた棒は地面を抉っていく。
殺戮武人は、そんな破戒僧の攻撃を両腕に付けた鎌を巧みに使い軽やかな身の熟しで避けつつ、攻撃に転じる。
「世界って広いね……。」
私の呟きに誰かが答える事はない。思い思いにこの無益な争いを見ているから。
きっと、海に出る事を選んでいなかったら、島から出る事を選んでいなかったら、こんな光景は見る事は出来なかった。今までの景色もそうだ。
争いが激しくなればなるほど、大きくなればなるほど海軍に気付かれる。そんな事すらも忘れる程に夢中になっている自分がいる。
楽しくない。でも、目を止めるには興味がある。
きっと、私が海賊だからなんだろうな……。
そんな二人の争いは、新たな海賊の介入で幕を閉じた。
激烈だった攻防戦を難なく収めた海賊もまた、新聞でよく目にする人だった。
「今、いいとこだったのに……ドレーク屋!!お前……何人殺した?」
私達の目の前を船員を引き連れて通り過ぎていく。そんな仲裁をした海賊団の船長へ、私の船長が話し掛けたのだ。
二度見しちゃう様な事を言い始めるから、突っ込みそうな口を閉じる事に必死になった。
だいぶ物騒な事を聞くな、ロー。
それは、正義の味方だった海軍に所属をしていたが海賊になったからなんだろうか。正義の味方だったのに人殺しなんて、笑い話にもならない皮肉だ。
他でもない私もローも海軍の人に助けられた過去がある。皮肉を滲ませる気持ちは解らないでもない。
当の元海軍――今はドレーク海賊団船長であるドレークはローの質問に答える事無く、目配せをしただけだった。そのまま私達の前を通り過ぎていく。
完全に私達と距離が出来たのを確認すると、ローは木箱から立ち上がり反対方向へ歩き始めた。
「物騒な事を聞くね、ロー。」
「海賊なら……あり得ねぇ話じゃないだろ。」
「突然変な事を聞き始めるから、口を挟みそうになったわ!!」
「人見知りしてどもる癖に口を挟めんのかよ。」
「うっ……それは……。」
ごもっともな事を言われ、言い返せなくなる。視線を合わせない様に、ローから目を逸らした。
見下ろしてくる視線が痛いが、気付いていないフリをする。
そうしている間に、私達の行先は人間屋 へと足を進めていた。
「おーい、着いたぞ。ミヅキ。」
起きろ!私の体を揺さぶる温かい温度で目を覚ました。
私を起こしたのは、ペンギンとシャチだった。
「着いた……?」
「着いた!着いた!シャボンティ諸島だぜ!」
「目が……痛い……。」
そこまで船内が明るい訳ではないが、照明が直に目に入ってくる。寝起きの人間には刺激が強い。
「寝過ぎだ。バカ。」
目を細め、光に順応しようとしていると後頭部を叩かれた。叩いた人間は知っている。
というか、コイツだけしか私を叩いてこない。互いに互いの過去を知っている者同士だからこそ。
「ローの方が馬鹿なんですー!人の頭を叩くな!!」
ウゥー!!と唸り声を上げ、ローへ威嚇を向ける。向けられた本人は気にする様子もなく、無視をしてくる。
酷い奴だ。彼はハクガンの元に行き、指示を出している。
「浮上します!」
ハクガンの声で、船が浮上していく。体に慣れ親しんだ浮遊感と上昇の重みが掛かってくる。
港へ停まった事を確認し、船員は扉を開けて外へと出て行く。
数日ぶりの空気は美味しい。そして、遠くからでもこの島が賑わっている観光地の様な場所だと、賑やかな声が聞こえてくる。
「キャプテン!調達はこっちでやっておきますね!」
「ああ。」
呆けて諸島を見ている私の隣に、ローが来る。
「他の奴らに調達は任せて、行くぞ。」
「何処に!?シャボンティに?」
「楽しみにしてたんじゃねぇのか?」
「ううっ……正直に言えば、楽しみだったけども……。」
「下手な事をしなけりゃ、見つからねぇよ海軍に。」
「戦闘が起こんなきゃな!!新聞見ていると、他の航路を行ってた海賊たちもここに集まっているって感じるし……何よりも、麦わらも来るんじゃん……何をしでかすか分らんよ……。」
巻き込まれるのだけは、ごめんだ。
我らが船長のトラファルガー・ローもなにかと新聞の見出しになる事が多かったが、
最近の大ニュースだと、世界政府を敵にまわしたらしい。そして、勝ったらしい。
ただ、麦わら達は狂ったとも表現が出来るぐらいに世間を賑わせているが、何か理由じみたものがあるとさえ読んでしまう。
「覚悟はとっくに出来ていた筈なんだけどな……。」
人を怖いと思ってしまう。ローはとっくに克服しているのに、私は未だに人の目を気にしてしまう。
互いに事情は違うのに、同じような過去だから。
視界に影が差す。頭に上着として着ているパーカーのフードが被された。
サイズが大きめの為、被っただけで視界が狭くなる。
こんな事をするのは一人しかいない。
「ロー。」
フードを上にずらしながら、見上げる。隣にいる彼は一瞬だけ視線を私に向けるが、すぐに前の方に戻してしまう。
「無理して来なくても良いんだぞ。」
「イーー!そう言われると、無性に行きたくなる。行く!絶対、行ってやる!!」
地団駄を踏む私に「天邪鬼。」とローはお得意のニヤリ顔をする。もう進み始めていて、足の長さが長いから距離が開いていく。
負けじと、フードを被ったままその後を追い、船を降りた。
久しぶりの地面は、変な感触がする。硬くて、自分の力が跳ね返ってくる感じがしない。それと体が重たいと。長い事、海の中にいたからただの地面の感触なのに変だと感じてしまう。
巨大なマングローブが集まって出来た諸島。その地面からは特殊な樹脂が出ていて、空気が入る事でシャボン玉が出来上がる。
これがシャボン玉が浮いている幻想的な光景の正体だ。
ローに着いて行った船員は私だけでなく、喋る白熊の航海士――ベポにペンギン、シャチの三人も一緒だ。この三人も私やローと古くからの付き合いがある、所謂ハートの中では古参だ。
「で、キャプテン。何処か行く予定があるの?」
「まあな。」
「あ!おれ、遊園地に行きたいな!」
「遊園地に行ってどうすんだよ、シャチ。」
「面白そうだって、ペンギンだって言ってたじゃんか!ミヅキだって!!」
「うわぁ!私まで巻き込まれた!!何も言ってないのに!」
「お前ら、うるせぇよ。」
あてもなくブラブラと歩くのが、5人での上陸時のスタイルだ。その時の賑わいは、通行人の目を引く感じではあると思う。
主に煩い方面で。
今回も今までと同じように騒ぎながら諸島を見て回る。
周りを見ながらも景色は変化する様で、似たり寄ったりだ。迷子になりそうだ、とウエストポーチからポケットサイズの観光地用の本を出す。
前方に注意しながらも本を盗み見る。
「長居はするつもりはねぇが、まあ、アイツが関わっている店に足を運んでみるのも良いかもな。」
「アイツって……。」
ローの言葉に一人だけ姿が浮かぶ。私とローが出会うきっかけになり、私とローが海に出る理由の一つになりやがったどうしようもない海賊。
ピンク色のファーを愛用する王下七武海の一人――ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
人を食ったようなニヤニヤした顔で、人を煽る様な事しか言わない。思い出しただけで怒りと嫌悪感が体中を走る。
「どうせ、あんな奴が関わっている店なんてろくでもねえでしょ。」
「だろうな。世界貴族までご愛顧してるらしいしな。」
「ええ……そんな所行こうとしてたの?絶対に、何か起こるじゃん……。」
ガイドブックの一部に視線が固定される。
『1番~29番グローブーー無法地帯及び、人身売買店。』
(ろくでもない事しかないだろうな……。)
世界を作った人間達の末裔――『世界貴族』がいる聖地”マリージョア”がシャボンティ諸島の近くにある。もっと言えば、これから新世界に行く為に超えるレッドラインの壁の上に、その聖地とやらはある。
世界貴族には誰も逆らえない。逆らうと海軍の大将がやってくるから。
だから、気に入られたら人生が終わる。奴隷になるしかないのだ。その奴隷というモノが、こき使われる労働力だけで終わればいいが……多分、それだけでは終わらない。終わる筈がない。
「おい、しっかり前見て歩け。ミヅキ。」
痛い。額に鈍い痛みを感じた時には、ローの背中にぶつかっていた。
ロー達が歩みを止めた事に気が付かなかった。考え事をしていたのと、本ばかりに注意がいっていた事により。
「ごめん。」
「案外、胸糞悪いだけでなく、お前にとっても”楽しい”があるかもな。」
止まったローの視線の先を見る。
彼は空いていた木箱に腰をおろし、変わらず私と同じ光景を見ている。
それは、海賊同士の一触即発しようとしている場面だった。
片や破戒僧海賊団船長のウルージ。片やキッド海賊団の戦闘員のキラー。どちらも新聞で見た事がある顔だった。
何があってそうなったのか知らないし、キッド海賊団は好戦的なメンツで揃っているからキッド海賊団の方から手が出たのかもしれないとは想像がつく。
これの何処が――、
「何処が楽しいのかね、ロー。ただの争いやん。無益すぎる。」
「そうかも知んねぇが、ライバルの情報が手に入るのは益だろ。」
今まで楽しいのと興奮状態だった気持ちが、一気に萎える。既に船に帰りたい気持ちにすらなっている。
破戒僧は、私が持ち上げられない程の大きくて太い金属製の棒を太い両腕で振り回している。衝撃が強く、相手を強打する為に放たれた棒は地面を抉っていく。
殺戮武人は、そんな破戒僧の攻撃を両腕に付けた鎌を巧みに使い軽やかな身の熟しで避けつつ、攻撃に転じる。
「世界って広いね……。」
私の呟きに誰かが答える事はない。思い思いにこの無益な争いを見ているから。
きっと、海に出る事を選んでいなかったら、島から出る事を選んでいなかったら、こんな光景は見る事は出来なかった。今までの景色もそうだ。
争いが激しくなればなるほど、大きくなればなるほど海軍に気付かれる。そんな事すらも忘れる程に夢中になっている自分がいる。
楽しくない。でも、目を止めるには興味がある。
きっと、私が海賊だからなんだろうな……。
そんな二人の争いは、新たな海賊の介入で幕を閉じた。
激烈だった攻防戦を難なく収めた海賊もまた、新聞でよく目にする人だった。
「今、いいとこだったのに……ドレーク屋!!お前……何人殺した?」
私達の目の前を船員を引き連れて通り過ぎていく。そんな仲裁をした海賊団の船長へ、私の船長が話し掛けたのだ。
二度見しちゃう様な事を言い始めるから、突っ込みそうな口を閉じる事に必死になった。
だいぶ物騒な事を聞くな、ロー。
それは、正義の味方だった海軍に所属をしていたが海賊になったからなんだろうか。正義の味方だったのに人殺しなんて、笑い話にもならない皮肉だ。
他でもない私もローも海軍の人に助けられた過去がある。皮肉を滲ませる気持ちは解らないでもない。
当の元海軍――今はドレーク海賊団船長であるドレークはローの質問に答える事無く、目配せをしただけだった。そのまま私達の前を通り過ぎていく。
完全に私達と距離が出来たのを確認すると、ローは木箱から立ち上がり反対方向へ歩き始めた。
「物騒な事を聞くね、ロー。」
「海賊なら……あり得ねぇ話じゃないだろ。」
「突然変な事を聞き始めるから、口を挟みそうになったわ!!」
「人見知りしてどもる癖に口を挟めんのかよ。」
「うっ……それは……。」
ごもっともな事を言われ、言い返せなくなる。視線を合わせない様に、ローから目を逸らした。
見下ろしてくる視線が痛いが、気付いていないフリをする。
そうしている間に、私達の行先は
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