白恋中編
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
北海道の雪山の奥の学校――白恋中学校。氷室唯南は驚きの余り声を大きく上げてしまった。
それは本州の方に住んでいる自身の従姉妹が唯南の通う学校に、しかもサッカー部に訪れたからである。
「な、何で……なんで、瞳子姉さんがここにおるの!?何で、日本一の雷門中と???」
「用があって来たのよ。雷門中の子達と一緒にいるのは、私が監督だから。」
さも当たり前と言っている様な涼しげな顔に、唯南の口角が引きずる。思わず出てしまった指を戻しつつ、深呼吸をする。
雷門中のメンバーは監督と相手側のサッカー部の内の一人と接点がある事に同じ様に驚きつつ、首を傾げた。そして、雷門のキャプテンである円堂守は唯南に話し掛けた。
「え、瞳子監督と知り合いなのか?」
「えっと……知り合いというよりも、家族?親族?なんです。私の従姉妹のお姉ちゃん。」
「彼女は氷室唯南。私の従姉妹よ。」
「そうなのか!宜しくな!氷室!!」
差し出される手に思わず身構える。だが、向けられた手が何を意味しているのかすぐに解り、円堂の手を握った。
握手。幼馴染み以外の男子とは基本的に話す事も出来なくなった唯南は内心拍動が強くなっていた。恥ずかしいやら緊張するやらで。
「円堂、俺達には目的があって来ただろ?」
雷門のメンバーであり、円堂の良き理解者である風丸一郎太の言葉に円堂はすぐに手を離した。
数週間も前に行われたサッカーの全国大会で日本一となった雷門中学校のサッカー部は用があって訪れていた。
ストライカーを探す事。
訳あってFW不足となった雷門中サッカー部はどうしても強力なFWが必要であった。そこで雷門中の前監督であった響木が現監督となった瞳子にストライカーの情報を提供した。
そして現在、雷門中は情報にあった『クマ殺しの吹雪士郎』を探しに白恋中サッカー部の部室に、唯南の前に現れた。
日本一の学校が雪山の奥地にある学校にいる。本物の日本一となった選手達がいる。それだけで興奮ものであり、雷門のメンバーも嬉しそうに笑顔を見せていた。
だが、日本一である事を知らしめるために海を越えて北海道に来たわけではない。監督に至っては従姉妹の顔を見に来たわけではない。
「”吹雪士郎”君は?何処にいるのかしら?」
(士郎?)
瞳子の言葉に唯南を含めた白恋中サッカー部は首を傾げた。別に吹雪士郎という人間を知らないからではない。吹雪士郎の所在を訊かれたからである。
「吹雪くん?吹雪くんなら今頃スキーじゃないかな?」
白恋のメンバーの一人が答える。それから次々と吹雪士郎の所在についての憶測が飛び交う事となった。
スキーからスノーボード、スケート、冬の時期に行う雪や氷のスポーツの名前が次々と上がっていく。その度に唯南の顔は曇っていく。
苦々しい思い出が蘇ってくる。主に自分の情けない思い出が。
「よく一緒に行動してる唯南ちゃんなら分かるかも!ね、唯南ちゃん?」
「え?!」
突然話を振られ、間抜けな声が口から零れる。トリップしていた思考が友人の声によって戻され、数多の目に注目される。
注目されている事が凄く嫌で、怖くて、自然と目が逸れる。
「今日はサッカーやってるよ。部活やる前に北ヶ峰に行くって。」
「え!?北ヶ峰!!?」
「それって……。」
「あ!噂をすれば、吹雪君が来た!!」
思い当たる節でもあったのか、円堂達の顔が驚きの一色になる。中には顎に手を置き、考え始めた人もいた。
十人十色な反応を示す彼等を置き、白恋の一人が廊下に身を乗り出す。そこから手を引っ張って来たのか、一人の少年を今唯南達がいる部屋へと連れて来た。
「吹雪君にお客さんだよ!早く早く!」
「お客さん?」
青銀色の髪の毛。緑の入った青色の瞳は垂れ目で幼さの残った可愛い顔をしている。
彼こそが吹雪士郎。『クマ殺し』という二つ名を命名され、雷門中が新たに仲間として迎えたいストライカー。かつ、唯南の幼馴染みでもあった。
吹雪の姿に雷門の全員が口を開けて驚く。その姿には見覚えがあったからだ。
「あれ、君たち!」
「さっきの……!」
白恋中に行くまでの道中で、円堂達と吹雪は既に顔を合わせていたからだった。
それは本州の方に住んでいる自身の従姉妹が唯南の通う学校に、しかもサッカー部に訪れたからである。
「な、何で……なんで、瞳子姉さんがここにおるの!?何で、日本一の雷門中と???」
「用があって来たのよ。雷門中の子達と一緒にいるのは、私が監督だから。」
さも当たり前と言っている様な涼しげな顔に、唯南の口角が引きずる。思わず出てしまった指を戻しつつ、深呼吸をする。
雷門中のメンバーは監督と相手側のサッカー部の内の一人と接点がある事に同じ様に驚きつつ、首を傾げた。そして、雷門のキャプテンである円堂守は唯南に話し掛けた。
「え、瞳子監督と知り合いなのか?」
「えっと……知り合いというよりも、家族?親族?なんです。私の従姉妹のお姉ちゃん。」
「彼女は氷室唯南。私の従姉妹よ。」
「そうなのか!宜しくな!氷室!!」
差し出される手に思わず身構える。だが、向けられた手が何を意味しているのかすぐに解り、円堂の手を握った。
握手。幼馴染み以外の男子とは基本的に話す事も出来なくなった唯南は内心拍動が強くなっていた。恥ずかしいやら緊張するやらで。
「円堂、俺達には目的があって来ただろ?」
雷門のメンバーであり、円堂の良き理解者である風丸一郎太の言葉に円堂はすぐに手を離した。
数週間も前に行われたサッカーの全国大会で日本一となった雷門中学校のサッカー部は用があって訪れていた。
ストライカーを探す事。
訳あってFW不足となった雷門中サッカー部はどうしても強力なFWが必要であった。そこで雷門中の前監督であった響木が現監督となった瞳子にストライカーの情報を提供した。
そして現在、雷門中は情報にあった『クマ殺しの吹雪士郎』を探しに白恋中サッカー部の部室に、唯南の前に現れた。
日本一の学校が雪山の奥地にある学校にいる。本物の日本一となった選手達がいる。それだけで興奮ものであり、雷門のメンバーも嬉しそうに笑顔を見せていた。
だが、日本一である事を知らしめるために海を越えて北海道に来たわけではない。監督に至っては従姉妹の顔を見に来たわけではない。
「”吹雪士郎”君は?何処にいるのかしら?」
(士郎?)
瞳子の言葉に唯南を含めた白恋中サッカー部は首を傾げた。別に吹雪士郎という人間を知らないからではない。吹雪士郎の所在を訊かれたからである。
「吹雪くん?吹雪くんなら今頃スキーじゃないかな?」
白恋のメンバーの一人が答える。それから次々と吹雪士郎の所在についての憶測が飛び交う事となった。
スキーからスノーボード、スケート、冬の時期に行う雪や氷のスポーツの名前が次々と上がっていく。その度に唯南の顔は曇っていく。
苦々しい思い出が蘇ってくる。主に自分の情けない思い出が。
「よく一緒に行動してる唯南ちゃんなら分かるかも!ね、唯南ちゃん?」
「え?!」
突然話を振られ、間抜けな声が口から零れる。トリップしていた思考が友人の声によって戻され、数多の目に注目される。
注目されている事が凄く嫌で、怖くて、自然と目が逸れる。
「今日はサッカーやってるよ。部活やる前に北ヶ峰に行くって。」
「え!?北ヶ峰!!?」
「それって……。」
「あ!噂をすれば、吹雪君が来た!!」
思い当たる節でもあったのか、円堂達の顔が驚きの一色になる。中には顎に手を置き、考え始めた人もいた。
十人十色な反応を示す彼等を置き、白恋の一人が廊下に身を乗り出す。そこから手を引っ張って来たのか、一人の少年を今唯南達がいる部屋へと連れて来た。
「吹雪君にお客さんだよ!早く早く!」
「お客さん?」
青銀色の髪の毛。緑の入った青色の瞳は垂れ目で幼さの残った可愛い顔をしている。
彼こそが吹雪士郎。『クマ殺し』という二つ名を命名され、雷門中が新たに仲間として迎えたいストライカー。かつ、唯南の幼馴染みでもあった。
吹雪の姿に雷門の全員が口を開けて驚く。その姿には見覚えがあったからだ。
「あれ、君たち!」
「さっきの……!」
白恋中に行くまでの道中で、円堂達と吹雪は既に顔を合わせていたからだった。
1/5ページ