雪原の皇子様の小さな氷壁 ~エイリア編~
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雪が深々と降り積もる。
一人の少女は二人の顔の似た少年と一緒に走り回る。白と黒のボールを蹴りながら。
「ちょっと!待ってよ!!士郎!アツヤ!!」
「唯南が遅いからだろ!」
「唯南、はい!」
青銀色の髪の少年が少女にボールを蹴って渡す。突然のパスに反応が遅れ、短い足をボールは通り過ぎていく。
少女は涙目になり、その場に崩れる様に座り込んだ。
「もう、サッカーなんてやらない……。」
幾らボールを追いかけても、二人の様に上手くいかない。二人に置いてかれる。それが少女にとって不満であり、苦痛であった。
優しく出されたボールを受け取る事すらできない少女を温かい色の少年は笑い、それをもう一人の少年が諫める。だが、笑われた事が屈辱であり、少女のやる気はなくなるだけであった。
二人はこんなとろくて鈍い奴と一緒に遊んでも、煩わしいと思っているのだろう。楽しいとは思っていないだろう。涙を堪える様に唇をかみしめる。
「たくっ……。しょーがねぇから、唯南が上手くなるまで遊んでやる!」
「唯南遊ぼ?二人よりも唯南を含めて三人の方がもっと楽しいから!」
サッカーやろう!二人に差し伸べられた手を見ながら、堪えられずに涙が出る。
少女も二人と一緒に遊ぶのが好きだった。二人も一緒の気持ちであるのが嬉しかった。
伸ばされた手を掴んで立ち上がる。
三人で遊ぶのは本当に好きであった。
――あの時が来るまでは。
――――――
夢を見た。
とても幼かった時の夢。まだ、彼が生きていた時の夢。
少女は懐かしさに浸りながら、少しの虚しさ、悲しさと共に目を擦る。眠気が残っていて、まだ視界も頭もぼんやりとしている。
「唯南ちゃん!おはよう!」
「おはよう。」
そういえば、ここは部室であった。白恋中学校のサッカー部の部室。
昨夜は冷え込み、その影響で昼間でも寒さが残っていた。それ故に暖房が点けられ、その温かさに唯南は眠ってしまったのだ。
部活開始まではまだ時間がある。
眠気を冷ます為に手を組んで頭上高くまで上げ、背中の筋肉を伸ばしていく。背中のストレッチだけでなく、体幹を回旋させていき、横腹の筋肉も伸ばしていく。
体幹を回旋させるという事は視界も動くという事で、唯南は部室を見渡す。
サッカー部の部員は殆どが来ていたが、まだ『彼』だけは来ていなかった。
「あれ?士郎は?」
「唯南ちゃんと一緒じゃなかったの?」
「いんや。今日は寄って行く場所があるからって事で一緒に来てないよ。」
「じゃあ、まだなのかも。」
「そうだろうね。」
マイペースな幼馴染みの姿を思い出し、唯南は溜息を吐いた。
少女はまだ知らない。
これから少女も巻き込んで起こる日本中を舞台にした事件を。少女と彼をかき乱す出来事を。
一人の少女は二人の顔の似た少年と一緒に走り回る。白と黒のボールを蹴りながら。
「ちょっと!待ってよ!!士郎!アツヤ!!」
「唯南が遅いからだろ!」
「唯南、はい!」
青銀色の髪の少年が少女にボールを蹴って渡す。突然のパスに反応が遅れ、短い足をボールは通り過ぎていく。
少女は涙目になり、その場に崩れる様に座り込んだ。
「もう、サッカーなんてやらない……。」
幾らボールを追いかけても、二人の様に上手くいかない。二人に置いてかれる。それが少女にとって不満であり、苦痛であった。
優しく出されたボールを受け取る事すらできない少女を温かい色の少年は笑い、それをもう一人の少年が諫める。だが、笑われた事が屈辱であり、少女のやる気はなくなるだけであった。
二人はこんなとろくて鈍い奴と一緒に遊んでも、煩わしいと思っているのだろう。楽しいとは思っていないだろう。涙を堪える様に唇をかみしめる。
「たくっ……。しょーがねぇから、唯南が上手くなるまで遊んでやる!」
「唯南遊ぼ?二人よりも唯南を含めて三人の方がもっと楽しいから!」
サッカーやろう!二人に差し伸べられた手を見ながら、堪えられずに涙が出る。
少女も二人と一緒に遊ぶのが好きだった。二人も一緒の気持ちであるのが嬉しかった。
伸ばされた手を掴んで立ち上がる。
三人で遊ぶのは本当に好きであった。
――あの時が来るまでは。
――――――
夢を見た。
とても幼かった時の夢。まだ、彼が生きていた時の夢。
少女は懐かしさに浸りながら、少しの虚しさ、悲しさと共に目を擦る。眠気が残っていて、まだ視界も頭もぼんやりとしている。
「唯南ちゃん!おはよう!」
「おはよう。」
そういえば、ここは部室であった。白恋中学校のサッカー部の部室。
昨夜は冷え込み、その影響で昼間でも寒さが残っていた。それ故に暖房が点けられ、その温かさに唯南は眠ってしまったのだ。
部活開始まではまだ時間がある。
眠気を冷ます為に手を組んで頭上高くまで上げ、背中の筋肉を伸ばしていく。背中のストレッチだけでなく、体幹を回旋させていき、横腹の筋肉も伸ばしていく。
体幹を回旋させるという事は視界も動くという事で、唯南は部室を見渡す。
サッカー部の部員は殆どが来ていたが、まだ『彼』だけは来ていなかった。
「あれ?士郎は?」
「唯南ちゃんと一緒じゃなかったの?」
「いんや。今日は寄って行く場所があるからって事で一緒に来てないよ。」
「じゃあ、まだなのかも。」
「そうだろうね。」
マイペースな幼馴染みの姿を思い出し、唯南は溜息を吐いた。
少女はまだ知らない。
これから少女も巻き込んで起こる日本中を舞台にした事件を。少女と彼をかき乱す出来事を。
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