設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
051〜100
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秋の夕暮れ時、ホグワーツ特急を下車して、馬なしの馬車に荷物を積み込む。
その馬車の座席の片側には、既にいくつかのきれいな色をした大きな箱が積み上げられている。
中身はすべて、クリスマスの装飾品のサンプルだそうだ。
ホグワーツでは毎年、フリットウィックが音頭を取ってクリスマスの装飾を行うが、彼の装飾にかける意気込みは年々増しており、実際クリスマスの装飾も年々豪華になっている。
今年も何やらその装飾品を買い足すつもりらしいが、ロンドンへのそのサンプルの受け取りに、スネイプとブラウニーの二人に白羽の矢が立った。
馬車に最後の箱を積み終えて、スネイプは乗り口の脇に立った。そしてエスコートのために、ブラウニーに片手を差し出した。
「ふふ、照れますね。ありがとう」
ブラウニーはその手に自分の手を載せて、馬車に乗り込んだ。
馬車がホグワーツ城へと向かい始めてから、ブラウニーが口を開く。
「…今日一日、デートみたいでしたね」
「ああ」
隣に座るスネイプが、また先ほどと同じように手を差し出したので、ブラウニーは手を載せた。
スネイプは指を広げて、彼女の指と自分の指が交互に重なり合うようにして握り直した。
指先を絡ませた手は、スネイプの腿の上に落ち着く。ブラウニーはいつもとは違う手の繋ぎ方に、恥ずかしそうに、でもそれ以上に嬉しそうに、その手を見ていた。
ホグワーツ城が近づくに連れて、空の色が薄暗くなってきた。
座席の向かい側に積まれたカラフルな箱を眺めながら、スネイプは言った。
「ダンブルドアもフリットウィックも、人使いが荒い」
「私のような若手にはいろいろ舞い込んできますけど…確かにスネイプ先生は…」
若手という言葉を強調してブラウニーは言う。
「…我輩が何だね」
スネイプは片方の眉を吊り上げてむすっとしている。
ブラウニーは吹き出しそうな笑いを堪えて、笑みを浮かべたまま、唇を固く結んだ。
「いいえ。私が粗相しないように、その監督役ですかね」
ブラウニーはにんまりと笑った。
「でも、実際のところは、きっとダンブルドアが気を遣ってくれたんだと思います。半分、デート気分で行っておいでって」
「買い被りすぎでは?」
「そうかなあ。フリットウィック先生が言ってましたよ。自分じゃ荷物持ちには不向きだから、ダンブルドアに頼んで、適任の人を当ててもらうって」
「ほう…我輩が荷物持ちに適任と?」
「ふふふ。そうじゃなくて、ダンブルドアは、私と一緒に出かけるのに適任な人を、選んでくれたんだと思いますよ」
「…そういうことにしておこう」
スネイプは隣に座るブラウニーを見つめた。
ブラウニーの瞳に吸い込まれるように、スネイプは顔を近づけた。
一呼吸置いて、唇が重なる。
どことなく、試されているかのようなキスだった。
「…デートというには、いささか物足りないだろう」
「…またそういうことを…!」
「ん?今ので足りたのか」
「た、足りたかって聞かれると…それは…」
「足りないだろう」
「…足りない、です」
「足りないときは、なんと言うのだったかな、『もっと』…?」
ブラウニーは恥ずかしそうに、両手で顔を覆う。その片方の手は、未だスネイプと繋いだままだ。
繋いでいる方の手をスネイプが下へ下ろすと、ブラウニーは観念したように呟いた。
「もっと…してほしいです…」
「素直だな」
繋いでいた手がそっと離れて、ブラウニーの首筋に伸びた。
お互いの体温を感じる、優しくて温かなキスだった。
馬車の中に湿った音が響く。
スネイプは名残惜しそうに唇を離して、馬車の外に目をやった。それから親指でブラウニーの唇を拭う。
「…もう少しで到着するな」
馬車のランタンに、ブラウニーの血色の良い顔が照らし出される。
「そんな顔をしないでくれ…もどかしいのは我輩も同じだ」
ブラウニーの頭に手を載せて、スネイプは言った。
日が沈むと、ホグワーツ城の入口にはかがり火が焚かれる。
すべての荷物を下ろし終えると、馬なしの馬車はそれが分かったかのように、ホグズミード駅へと引き返していった。
先ほどのキスの余韻のせいだろうか、ブラウニーの目には、かがり火によって照らされたスネイプが、いつにも増して魅力的に見えた。
いや違う、それだけではない。
「あの…やっぱり…」
「どうした」
「その格好、すごい…似合ってますね」
ブラウニーは、自分の心臓がいつもより高鳴っているような気がしたのは、デートのような一日や馬車の中でのキスのせいだけではなかった。
今日はロンドンへ出かけるとあって、スネイプがマグル風の格好をしていたからだ。
チャコールグレーのジャケットに、インナーには黒のタートルネック、ボトムスは黒のスラックスという出立ちだ。
普段は、当然のことながらローブ姿ばかりを目にしていたため、見慣れないジャケットのコーディネートにブラウニーは調子が狂う。
スネイプは自分の洋服に目を落とし、それからブラウニーを見て微笑んだ。
「見惚れるほどか」
ブラウニーははっとして言った。
「あの…できれば、もう少し…スネイプ先生と一緒にいたいです」
「君が積極的になるのなら、マグルの服もたまには悪くないな」
フリットウィックにサンプル品を届ければ、本日の任務は完了だ。
「あとはやっておく」
そう言って、サンプル品のたくさん入った箱を外に積んだまま、スネイプは城内へと入る。
そして目敏く、エントランスにたむろする数人の男子生徒を見つけて、荷物運びを命じる。
ブラウニーは、格好こそ違えどいつもの彼らしさに思わず笑った。
生徒たちの後ろ姿を横目に、スネイプが小さい声で言った。
「先に我輩の部屋へ。…こちらが終わったらすぐに行く」