設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
051〜100
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ブラウニーは目を覚ました。
寝起きのぼんやりした頭でも、その空間が自分の部屋ではないことにすぐに気が付いた。
暗がりを照らすのは、ベッドのサイドテーブルに置かれたランタン。
どこかで嗅いだ覚えのあるような、リネンの匂い。
五感からの情報が一つ増えるたびに、記憶もまた蘇り、否定したくなる事象が現実のものとなっていく。
そして…隣を見れば、スネイプの寝顔。
「(やってしまった…!)」
すかさず自分の体を見下ろし、洋服や下着を身につけていることにひとまず安堵した。
「(スネイプ先生、ごめんなさい!…今のうちに…)」
静かにベッドを降りようとしたとき、ベッドが軋んで音を立てた。
ブラウニーははっとして、恐る恐る振り返ると、とても不機嫌そうに彼女を見ているスネイプがいた。
眉間に深い皺が刻まれたままだ。
「お…おはようございます、スネイプ先生…」
「まだ夜中だがな。…黙って帰ろうと?」
「だ、黙って帰ろうだなんてそんな…!その、少し…状況を整理しようとしていたところです」
「ほう?男女が一つのベッドで目覚めた、この状況を、か」
ブラウニーは苦笑いをした。
「…幸いなことに、未遂、ですよね…?私たち」
ブラウニーは自分の洋服を指先でつまんで、お互いに衣服を纏っていることを確認した。
無言で体を起こしたスネイプは、ふんと鼻を鳴らし、杖を取り出した。
「アクシオ」
そう言って部屋の出入り口の方へ一振りすると、黒っぽい物がスネイプの元へと飛んできて、その手に収まった。
「昨晩、我輩の部屋に入るなり、自らこのローブを脱いだのは覚えているな?」
「…はい」
その俯き加減は、まるで説教されている生徒のようだ。
「その後に、我輩に何と言ったかも?」
「ええ…あの、そうですね、困ったことに記憶は割と鮮明で…」
しどろもどろになりながら、ブラウニーはベッドに手をついて、スネイプの持つローブに手を伸ばした。
できればローブを奪い返して(もちろん取られたわけではないのだが)、この空間から逃げ出したかった。
「スネイプ先生…すみません、どうか今回は穏便に…!」
ローブを返す気はさらさらないようだった。ブラウニーの手がローブに届かないうちに、スネイプはベッドから降りて、ベッドに沿って彼女の方へと近づいていく。
「もう一度聞く。自分でローブを脱いだ後、君は何と言ったかね」
スネイプが間合いを詰めた。
ブラウニーは後退り、背中と踵が寝室の壁にぶつかった。
「…『私じゃ……か』…」
「聞こえないな」
「わ…『私じゃダメですか』…」
恥ずかしい記憶を呼び起こされただけでなく、実際に言葉にしたことで、ブラウニーの羞恥心は爆発しそうだった。
「君は他の男に対しても、いつもこうなのか」
「ちっ、…違います!それは誤解です!」
勢いよく顔を上げたところ、思いのほかスネイプとの距離が近く、ブラウニーはまた俯いた。
「きのうは先生方みんなで祝杯を上げて…」
「…そこでその…飲み過ぎてしまって…」
「途中、スネイプ先生がいないことにも気付いてたんですけど…」
「飲み過ぎてるなって自覚があったので、他の先生方に『もう部屋に戻ります』って言って…」
「…それでなぜ我輩の部屋に」
「いや、それは…」
ブラウニーは下唇を噛みしめた。
「偶然ノックした部屋が我輩でなく、他の輩の部屋だったら、君は今頃その輩の隣で裸で目覚めていただろうな」
「そういうつもりでは…!」
ちらっとスネイプの顔を見ると、呆れているかのような表情だった。
ブラウニーは、その視線に耐えられなかった。かく恥はかいた。これ以上の恥はないと覚悟を決めた。
「…スネイプ先生に」
当然ながら自分より背の高いスネイプを、見上げるようにして。
「会いたかったんです…寝る前にもう一度会えないかなと思って…」
「…会ってどうするつもりだった」
「何も…ただ会いたかったんです」
「酒を飲んだ後、男の部屋に上がり込んで、私じゃダメかと言って洋服を脱ごうとしたわけだが…何も考えていなかったと?」
「それは…!いざ先生を目の前にしたら、今まで正攻法で散々ダメだったのに、もうどうしたらいいか分からなくなってしまって…」
消え入りそうな声でさらに続けた。
「…スネイプ先生に振り向いてもらえないなら、いっそ一夜限りもありなのかな…とか」
「でも結局先生は…私なんか相手にしなかったですよね」
一瞬見上げると、眉間に皺を寄せたまま、目を細めているスネイプがいた。
「酒を飲んで正常な判断ができなくなった女は、趣味でないのでな。それに…」
「…それに、なんですか…」
とどめの一撃に備えて、ブラウニーは身構えた。
「…誘っておいて、勝手に寝たのは誰だ」
「え!?」
先ほどからそうだった。ブラウニーは頭の中で何度も目まぐるしく記憶を呼び起こしていたが、自分で洋服を脱ごうとした後の出来事を覚えていなかった。
「私…そのタイミングで寝ちゃったんでしたっけ…」
スネイプがブラウニーの胸元を指差した。
その指の先を追うと、ブラウスのボタンが外れたままだった。
すぐにボタンを閉めようとするも、慌てていると上手く閉められない。
スネイプはその手に手を重ね、動きを止めさせた。
「胸元ははだけさせたまま、勝手に人のベッドで寝た上に、我輩の洋服を掴んで離さなかった」
もう一方の手で、俯くブラウニーの顎をわずかに持ち上げた。二人の視線がぶつかる。
「おかげで我輩は眠ることもできず、かと言って動くこともできず、君が起きるのを待っていたわけだ」
「え…寝てなかったんですか!?」
「目を瞑っていただけだ」
「最初に言ってくださいよ…!」
スネイプは悪びれない様子だ。
一呼吸置いてからさらに続けた。
「『正攻法でダメだった』…そう言ったな」
「はい…」
「すまなかった」
ブラウニーはこの言葉の結論がどこに向かっているものか判断できず、続く言葉を待った。
「我輩は…これまで同僚をそういった目で見たことはなかった。そして君が我輩に抱いてた感情も、一時の感情だと思っていた」
「一時なんかじゃ…」
「ああ、結果的にそうだったな。気付いていた。…そこへ来て、昨夜の君の大胆な行動だ」
ため息をつき、ブラウニーのおでこを控えめに指で弾いた。
「ついに
スネイプはそう言って、ローブを翻して背を向けた。
「…
「それって、どういう…」
スネイプのローブを掴んで、早る気持ちを言葉にした。
「私のこと…好き、とか、そういうことですか」
ややあって、スネイプが振り返る。
「…とっくに好きになっていた」
ブラウニーは、夢でも見ているのではないかという気になった。
「本当に…本当ですか」
じわじわと幸福感を感じ始めたブラウニーの口元は緩んでいった。
「ああ。…本当に、好きだ」
ブラウニーの頭に手を置いて、スネイプの口元も緩む。
「それこそもっと早く教えてくださいよ!そしたら、きのうだって…あんな暴挙に出なくたって良かったってことですよね…」
恥ずかしさのあまり、言い終えると同時に顔を手で覆った。
「伝えるタイミングがだな…」
スネイプの言葉も聞かず、ブラウニーははっとして、顔を覆っていた手をどけた。
「じゃあ…もし私があのとき寝ていなかったら…先生、どう…」
スネイプはブラウニーの言葉を最後まで聞かずに言った。
「試してみるかね」
ブラウニーの目が点になる。
スネイプはそれを見て、口角を上げて言った。
「…冗談だ」
「しかし、そうだな…それで残念がる君がいるのなら、試してみるか」
「ざ、残念がってないです!」
スネイプはブラウニーの手を取り、手の甲にキスをした。
「冗談はさておき、このまま帰すのは惜しい…それが本音だ」
「い、いや、でももう朝に…」
「まだ夜中だ」
「みんなが起きる前に部屋に戻らないとですし…」
「きのうは学校全体であの騒ぎだ、今朝は皆なかなか起きないと思うがね」
「あ、泊まる用意が何も…歯ブラシも持ってきてないですし!」
スネイプは杖を取り出し、その杖で後ろの方を指して一振りした。
すると、洗面台があるであろう方向から、カランと音がした。
グラスに歯ブラシが加わった音だろうか。
「…もういいかね」
そう言って、ブラウニーにキスをした。