設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
051〜100
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「…な、何でしょう」
ブラウニーはスネイプにじっと見つめられ、身構えた。
彼はそれを意に介さず、彼女の元へつかつかと歩み寄る。
彼女はえも言われぬ緊張感に一歩後ずさったが、彼女がまた一歩後退する前に、スネイプがすっと手を伸ばし、ブラウニーの顎にその手を添えた。
急に詰められた距離に、彼女の目が点になる。
「口を」
ブラウニーが近すぎる彼を見上げるようにすると、自然と口が半開きになっていた。
彼の言葉でそのことに気が付いた彼女は、口を閉じた。
スネイプはそれを見て、得意げにニヤリと笑う。
「…何か期待させたかね」
「な…何も期待してないです…!」
「そうか。口を閉じるのではなく、開けてほしかったのだが」
彼はくつくつと笑いながら言った。
ブラウニーは恥ずかしさを覚え、それを誤魔化すように「何でですか」とぶっきらぼうに尋ねた。
「喉に炎症を起こしているだろう」
そう言われて、彼女ははっとした。
スネイプはローブから杖を取り出し、一振りすると、その杖の先端に灯りがぽっと灯った。
彼がその灯りを彼女の口元に近づけていくと同時に、彼女もまたゆっくりと口を開けた。
彼は「もっと大きく」と呟いて、彼女の喉の奥が見えるように灯りの位置を変え、よく見えるところで手を止めて言った。
「…やはりな。喉がかなり腫れている。…痛むであろう」
スネイプは彼女の顎に添えていた手を離し、再び杖を一振りして灯りを消すと、壁際に並んだたくさんの瓶の中から一つの瓶を手に取った。
「な…何で分かったんですか」
スネイプは、振り返ってブラウニーをじっと見つめた。
「…先ほどから何度も咳払いしていたのは、無意識かね」
ブラウニーが喉に違和感を覚えていたのは確かだったが、それを払拭するために何度も咳払いをしていたことは、言われてようやく気付いたことだった。
彼がまた杖を一振りすると、少し離れたところにある引き出しから、ヒラヒラとガーゼの類が飛び出してきた。
スネイプはそれらを受け取り、そのうちの目の粗いガーゼを二重にして半分に折ると、目の細かいガーゼも同様にして重ねた。
ブラウニーはその様子を静かに見守りながら、まるで手品でも始まりそうな手つきだと思っていた。
彼は先ほどのガーゼを無漂白の薄手の布の中央部分に載せ、それから取り出した瓶の蓋を開ける。
瓶の中からふわんと漂い始めた匂いに、彼女は怪訝そうな表情をした。
「…うーん、不思議な匂いですね」
はちみつのような甘い香りもありながら、微かに薄荷のようなすーっとする香りも感じられる。
彼は持ち手の長いスプーンのような物で瓶の中身をかき混ぜた。
色は紫色よりも濃く、どろっとしていて、丸みを帯びた固形物もあるようだ。
「見た目はブルーベリージャムみたいですね」
「味を見てみるか。…おすすめはしないが、食べられないこともない」
「…や、やめておきます」
スネイプはそれをすくって、先ほどのガーゼの上に広げた。
ブラウニーはその様子を不思議そうに見つめる。
「ちなみにこれ…先ほどから何を?」
「喉の腫れや痛みに効く薬だ。首に当てて使用する」
彼は彼女を一瞥して答えた。
それからガーゼと布をまとめて細長く折り畳むと、両手でそっと持ち上げて彼女の後ろに立った。
「髪を上げてもらっても良いかね」
ブラウニーは髪の毛をさっと束ね、それを後頭部に片手で固定した。
重ねた布からは、じんわり紫色が滲み始めていた。
スネイプはその紫色部分をブラウニーの喉に当て、彼女の首の後ろでその布の端と端を結んだ。
「きつくないか」
「…はい。ありがとうございます」
ブラウニーは後頭部に置いていた手を離し、髪の毛を下ろした。
喉元がだんだん温まってくる。
「あれ…なんだか…」
「温かくなってきたかね」
「はい。…温かくて心地いいです」
「温かさがなくなると、それに従って色も変わる。そうなれば替え時だ。何度か繰り返すうちに喉の痛みも楽になるだろう」
ブラウニーはスネイプの説明を聞いているうちに、にんまりと笑顔になった。
「ありがとうございます」
返事こそなかったが、彼は満更でもない表情を浮かべていた。
「スネイプ先生。今度、この魔法薬の作り方を教えてもらえますか?」
「もちろんだ。ブラウニーの喉の痛みが治る頃には、この瓶も空になっているだろう。そろそろ作らねばと思っていたところだ」
「まずは、あまり話さぬこと…無理に声を出そうとすると喉を痛める」
「はい、分かりました。…ちなみに…」
質問をしようと遠慮がちに口を開いたブラウニーの唇に、スネイプの指先が触れる。
「質問はあとで受け付ける。…キスをしていたほうがよほど喉に良いとあらば、喜んでそうするが。どうするかね」
試すような表情で、片方の口角を上げて彼が言った。