設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
001〜050
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月曜日の夜にブラウニーの部屋を訪れたのは、スネイプだった。
彼は、彼女が扉を閉めるのを待って、その手を引っ張って部屋の奥へ入っていった。
「どうしたんですか?」
「会いに来た」
「『会いに来た』って…ついさっきまで顔合わせてたじゃないですか」
彼女は手を引かれながら、くすっと笑って、可笑しなことを言う人だと思った。
スネイプは、彼女の文机に置かれていた本や羊皮紙をさっと机の端に寄せて、その空いたスペースに彼女を腰掛けさせた。
「え…っと、スネイプ先生…?」
「この週末もブラウニーとの時間が取れなかった」
不服そうに彼が言う。
「そうですけど…忙しい時期はしょうがないです」
「物分かりが良いのだな」
「そういうわけじゃ…でも、毎日顔を合わせていられるだけでも、本来は幸せなことですし…」
「分かってはいるが、それがまたもどかしい」
スネイプは彼女にそっとキスをした。
彼女は微笑んで、彼の頬を撫でる。
「…やることが残ってるって、言ってませんでした?」
「少ししたら戻るつもりだ」
そう言って、彼が再びキスをする。今度は温かくて滑らかなキスだった。
彼の手が彼女のローブをまさぐり、太腿に触れる。
「…あ、のっ」
ブラウニーが彼の手を抑えると、彼の指先にぐっと力が入るのを感じた。
スネイプは名残惜しそうに唇を離して吐息を漏らし、それからまた不服そうな顔をした。
「…研究室に戻れとでも言いたそうだ」
「だ、だって急ぎの案件だって言ってましたよね…?」
スネイプはため息をついて、観念した様子で言った。
「…片付ければ良いのだろう」
「ふふ。…はい。がんばってくださいね」
不貞腐れている彼を前に彼女が微笑むと、彼もまたそれにつられて微笑みを浮かべ、二人は唇を重ねるだけのキスをする。
そのとき、扉をノックする音が聞こえた。
「あれ…誰ですかね」
ブラウニーが文机から下りて、扉のほうに歩いていく。
スネイプは部屋に残り、何の気なしに机の上に積み重なっている本から、一番上の一冊を手に取った。
彼の耳は、訪問者が誰かを気にしていて、ブラウニーが扉を開けた音が聞こえてきた。
手に取った本のタイトルを彼が目にするとほぼ同時に、本と本の間に挟まっていたであろう羊皮紙がはらりと床に落ちる。
部屋の入口からは、聞き覚えのある落ち着いた声が時折聞こえてくるが、内容までは聞き取れない。
彼は羊皮紙を拾って裏返すと、そこには文字は書かれておらず、代わりに描かれていたのはいくつものイラストだった。
どれも同じ筆使いで描かれており、丸みを帯びた特徴から、彼女が描いたものだろうと推測できた。
人物たちは対で描かれているものが多く、額を近づけて向かい合っているものや抱擁しているものなど、どれも幸福感に満ちた雰囲気だ。
「…あっ!」
部屋に戻って来たブラウニーが、羊皮紙を手にするスネイプに気が付き、彼に駆け寄った。
彼女は羊皮紙を覗き込んで内容を確かめると、それを恥ずかしそうに両手で覆った。
「こ、これ、どこにありました?探してたんです…!」
ブラウニーは目の前の羊皮紙を引っ張ろうとするも、スネイプが思いのほかしっかり掴んでいたために、それはできなかった。
描かれている似顔絵はどれもかわいらしくデフォルメされていて、そこに誰が描かれているのか、スネイプは今一つ確信が持てないでいたが、彼女の反応で確信を抱いた。
「もしや…ここに描かれているのは我輩かね」
ブラウニーはそう言われて、自分の耳が火照るのを感じた。
「…となると、この、我輩の隣にいるのは」
「…私、です…」
スネイプは微笑んで、再び羊皮紙に目を落とし、その中から一つの絵を指差した。
「…よく描けている。特にこの…」
「わー!!」
スネイプが指差したのは、仰向けになった彼の腕の中でブラウニーが幸せそうに眠る絵だった。
彼女は恥ずかしさのあまり再び羊皮紙全体を手で覆い隠し、大きな声を上げた。
彼は、そんな彼女の反応を楽しんでいるようだった。
くつくつと笑いながら、両腕で彼女を包み込む。
スネイプは少し前屈みになった姿勢のまま、彼女の耳元にキスをしてから囁いた。
「…今日はしてやれないが、また近いうちに」
少しくぐもった低い声で囁かれると、ブラウニーは体温が上昇する思いだった。
彼女は、落書きの中に今と同じように彼に抱きしめられる絵を描いたことを思い出した。
そして彼の背中に腕を回すと、彼女は得も言われぬ幸福感に包まれた。
「そういえば…」
ブラウニーはずっとこうしていたい未練を振り切って、口を開いた。
スネイプもまた名残惜しそうに、彼女を包み込んでいた腕を解いた。
「さっきマクゴナガル先生がいらして、スネイプ先生を探してましたよ。明日のクィディッチの朝練の時間帯を交換してもらえたら…って。このあと、マクゴナガル先生のところに行ってあげてください」
スネイプがまた大きなため息をついた。
ブラウニーはそれを見て、悪戯に微笑んで、彼の両頬を優しくつねって言う。
「にーってしてください、にーって。…ため息をつく姿より、スネイプ先生の笑顔が見たいです」
彼は頬をつねられたまま、手元の羊皮紙を掲げ、その真ん中に描かれているデフォルメされた自分を横目で見た。
「…これは拝借していく」
「え!?」
「どうやら君の願望が可視化されている貴重なもののようだ。今後の参考にさせてもらおう」
「たっ、ただの落書きです!」
彼はブラウニーに構わず、羊皮紙をくるっと丸めて、ローブのポケットに滑り込ませた。
「さて、我輩は研究室に戻るとする」
スネイプは満足そうに笑い、彼女の頭をくしゃくしゃと撫でて、ローブを翻した。
部屋に残されたブラウニーは、彼にくしゃくしゃにされた髪を撫でつけながら、つい先ほどの彼の笑顔を反芻した。
その余韻に浸る口元がしばらく緩んだままだったことは、言うまでもない。