設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
001〜050
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試験も終わり、もう間もなく、長い夏休みがやってくる。
ブラウニーは、今学期お世話になった教室と研究室のあちこちを清掃していた。
いつだったか、生徒が大鍋を爆発させたことがあったが、そのときの薬液が壁にまで飛び散っていたことに、彼女が感心にも似た驚きを覚えながら、「テルジオ!」と杖を一振りしたときだった。
研究室の扉の蝶番がいつものように気怠そうな音を立てて扉が開いた。
振り向いたブラウニーは、戻ってきたスネイプの顔を見るや否や、その手元の植木鉢を見た。
「おかえりなさい。…あの…それは…?」
不貞腐れたような彼の顔と、植木鉢の中で若芽が可愛らしく佇む姿とがあまりにかけ離れていて、ブラウニーは思わずニヤニヤと笑ってしまった。
「スプラウト先生から預かった。君にだそうだ」
「えっ、ありがとうございます。このあとスプラウト先生のところに行こうと思ってたんです!以前、良かったらひまわりをもらってくれないかっていうお話で…」
ブラウニーは改めて「ありがとうございます」と言ってから、スネイプが差し出した植木鉢の一つを受け取り、葉を指差した。
「ここ、見えますか?…何でも、薬草に使えるのが最初に出てきた本葉だけだそうで、それでここにちぎった跡が。薬草学的には用済みかもしれないけど、せっかくだから先生方にぜひもらってほしいってスプラウト先生が言ってました」
「まさかとは思うが…もう一つは我輩の分かね」
「ふふ。そうだと思いますよ!先生方で揃ってひまわりを育てるなんて、わくわくしますね。スネイプ先生のと私の、どっちが先に花を咲かせますかね…」
ブラウニーは、面倒臭そうな表情をしているスネイプに構わず、楽しそうに考えを巡らせ、そのうちに含み笑いをした。
「何が可笑しい」
「いえ…すみません。今こうして面倒臭そうにしていても、きっと毎朝欠かさずに水をあげてくれるんだろうなあって思ったら…ふふ」
「何だね」
「かわいくて」
「…」
「だんだん情が湧いてきて、スネイプ先生ったらそのうちに、ひまわりの苗に話しかけたりしそうですよね」
「そんなことはしない」
「ふふ、どうですかね。植物にも言葉が通じるって言いますからね」
「もし、ひまわりが咲いたら…」
ブラウニーはそう言いながら、植木鉢を机に置いた。
「フクロウ便で知らせてくれますか?」
「ああ、そうしよう」
スネイプもまた、彼女の植木鉢の隣に並べるようにして、手元の植木鉢を机に置いた。
「毎日顔を合わせていたので、寂しくなりますね」
「そうだな」
ブラウニーが彼の手を取った。
「そのフクロウ便が届いたら…スネイプ先生のおうちに、ひまわりを見に行ってもいいですか?」
彼はその手を握り返して、「もちろんだ」と言った。
それから彼は、彼女を抱き締めて言う。
「花が咲かないと、会いに来てはくれないのか」
「そういうわけじゃ…」
「分かっている。言ってみただけだ」
「ひまわりに、成長を促す魔法薬なんて使わないでくださいね?」
「…」
「あれ?本当に使おうとしてました?」
ブラウニーは抱擁を解いてスネイプを見ると、彼は白々しく咳払いをした。
「…花が咲く前でも、いつ君が来ても大丈夫なように、まずは我が家の暖炉を掃除しておこう」
「ふふ。ありがとうございます」
スネイプは、暖炉の煤を払い、この家で一番日当たりの良い場所に植木鉢を置いた。
ブリキのジョーロに水を入れ、植木鉢の乾いた土に水を注ぐ。
それから辺りを気にして、誰もいないことを確認してから、腰を屈めて小声で言った。
「早く咲いてくれたまえ」
そう言ってから、彼は何事もなかったかのようにすっと立ち、植木鉢に再び水を足した。