設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
001〜050
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暴れ柳の根本から、眩しそうな表情で出てきたルーピン。
何の気なしに辺りを見回して、向こうに人影を捉えた。
それからピントが合って、ようやくその人物がブラウニーだと分かった。
自分が戻るのを待っていてもらえたことに、嬉しいような、気恥ずかしいような笑みを浮かべる。
春を待ち侘びていた植物たちは、その嬉しさを全身で表現するかのように、瑞々しく、鮮やかな色彩を放っていた。
ルーピンは、緑色の絨毯の上を、ブラウニーの方に向かって歩く。
「おはよう。待っていてくれたの」
「うん、おはよう。朝ごはん、食べるかなと思って、大広間からちょっと拝借してきた」
悪戯に笑うブラウニーは、ローブの下からごそごそと紙の包みを取り出した。
彼女はそっと紙の包みを開いて、
「あ、ちょっと潰れちゃってる!ごめんね」
と言いながら、クロワッサンと少しのフルーツを差し出した。
「ありがとう。いただきます」
「召し上がれ」
ルーピンはクロワッサンを選ばず、ブルーベリーを一粒口に入れた。
「あんまり食欲ないだろうけど、食べられるものだけ食べてね。今日も授業が控えてるし」
「私が何も食べずに授業へ行くだろうと思って、わざわざ?」
ブラウニーはにんまり微笑んで頷いた。
「次は手作りのものにしようか。そうしたら、もう少しは食べたいなあと思うかもしれない」
「うん、ありがとう」
それから杖を一振りして、ティーポットとカップを出し、カップをルーピンに手渡した。
ブラウニーはポットを傾けて紅茶を注ぐと、カップからとても温かそうな湯気が上った。
「今回でまた傷が増えたね」
こめかみの辺りから頬にかけて出来た複数本の爪痕が目立った。
「ああ…ちょっと急いだから、呪文の効きがイマイチだね。今朝はマダム・ポンフリーのところへ伺う時間はないから、今日のところはこのままかな」
「ん、と…ちょっと待って…」
ブラウニーは、またしてもローブのポケットをごそごそと手探りし、「あった、これこれ…」と小さな瓶を取り出した。
「マダムから預かってきたんだよ、『塗ってあげて』って」
「『塗ってあげて』って…」
「うん、マダムにはお見通しみたいだね」
ブラウニーは「さすがだよね」と笑い、その小瓶の蓋を開けた。
中には、時折キラキラ光る鈍色のクリームが詰められていた。
彼女は指先に少量のクリームを取る。
「経験済みかもしれないけど、ちょっと痛むみたい」
そう前置きした上で、ルーピンのこめかみにちょんとクリームをのせ、反応を見た。
「…っ」
ルーピンは一瞬顔を歪めた。
それから、自分のこめかみあたりを見つめて再びクリームを塗ろうとしているブラウニーの真剣な眼差しを捉えた。
その表情は、まるでこれから自分が痛みを味わうかのような、なんとも辛そうな顔だった。
ルーピンは微笑んで、ブラウニーの頬に手を添えた。
「君が痛がる必要はないよ、ブラウニー」
「そうだけど…」
「さあ、じゃあ塗ってくれる?」
ルーピンが視線を戻すと、朝特有の少しひんやりとした風が吹いてきた。
一面に広がる緑と所々に黄色い花が揺れ、白い綿毛が風に舞う。
「…はい、よくがんばりました!」
小瓶の蓋を閉めながら、満面の笑みでブラウニーが言った。
「…ありがとう、助かったよ。これで生徒たちに新たな嘘をつかずに済む」
「どういたしまして。あとでマダムにもお礼を言っておいてね」
「うん、そうだね…」
少しぬるくなってしまった紅茶を一口飲んで、ルーピンはブラウニーの方に体の正面を向けた。
「ん?どうしたの」
「…もし、」
「…もし私が、ホグワーツを離れることになったら、どうする」
「え…?」
何かの冗談かと思ったブラウニーは、はじめこそ笑って見せたが、ルーピンのその表情を見て、だんだんと笑顔が消えていった。
「…いや、違うな。そういう聞き方はずるいね」
そう言ってルーピンは腰を上げ、近くに生えていたタンポポの花の、茎の下の方を押さえながらぷちっと抜いた。
タンポポの茎で輪を作り、不器用ながらも結んでいるらしかった。
そして改めてブラウニーの正面に来て、膝をつき、深呼吸を一度した。
「…聞きたいことは、色々あると思う」
「もちろん、あとでゆっくり説明させてもらうつもりだ。」
「この先、まだ不透明なことばかりだけど、」
「…もし良ければ、私について来てくれませんか?」
ブラウニーは驚きのあまり口元を手で覆ったが、今度はだんだんと笑顔になって、手元では覆い隠せない笑みが溢れていた。
「…もちろんです」
その答えに、ルーピンも笑顔になった。
ブラウニーも腰を上げ、ルーピンの首元に腕を回して抱きついた。
それからキスをして、またぎゅっと抱擁をした。
「…そうだった。申し訳ないんだけど、突然のことで、何も用意してなくて…」
恥ずかしそうに、タンポポの花で作った指輪をブラウニーの目の前に差し出した。
「近いうちに、もちろんもっとちゃんとしたものを用意するから…」
「…いや、…と言ってもそんな上等なものは用意できないだろうけど…」
「うん。十分、これで幸せだよ」
そう言ってブラウニーは、左手を差し伸べた。
ルーピンは照れながら、その薬指にタンポポで作った指輪を嵌めた。
「はあ…安心したら、お腹が空いてきたよ」
クロワッサンに手を伸ばしながらルーピンが言った。
「…食欲なかった理由って、これなの?」
ブラウニーは左手の指先をすっと伸ばして、その薬指にあるタンポポの花をルーピンに見せた。
「もちろんだよ!いつも以上に食欲が出なかった…」
ブラウニーは可笑しくなった。
「今日はこの『指輪』付けて授業やろっかな!」