設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
001〜050
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ブラウニーの部屋の本棚の前で、スネイプは足を止めていた。
「何か気になるもの、ありました?」
「…これは…」
スネイプは本の背表紙の上部に指を引っ掛けて、一冊の本を取り出した。
「あ、それはスネイプ先生が貸してくれた本ですよ。今でもたまに見返します」
「そうか、道理で見たことのあるわけだ」
「覚えてないですか?『内容は頭に入っている。返さなくても困らない』ってぶっきらぼうに言ってましたよ」
ブラウニーは、自分の出せる一番低い声を出して、スネイプの口調を真似て笑った。
彼は鼻で笑って自嘲した。
「そんなことを言ったか」
本をパラパラと捲っているスネイプの背中に、ブラウニーは静かに抱きついた。
「ええ。私の片思い時代の思い出です」
スネイプは、彼女の言葉に本を捲る手を止めて、静かに微笑んだ。
「…そうでもなかったのだがな」
「ふふ。本当ですか?」
「ああ。ともかく、君のしぶとさには感銘を受けた」
「しぶといじゃなくて、一途だって言ってほしいです」
「…そうだな」
スネイプは微笑みながら持っていた本を本棚に戻した。
そして他の本の背表紙を軽く目で追い、また一冊の本を取り出した。
ブラウニーもスネイプの隣に並ぶ。
「…あ、それはですね、スネイプ先生が以前、魔法薬学を学ぶなら、この著者の本が分かりやすいと教えてくれたので、その著者のシリーズの最新刊です」
「もう手に入れたのか」
「買っただけで、まだ全然読めてないんですけどね」
スネイプがその本を数ページ捲って、目次や冒頭部分に目を通している姿を見て、ブラウニーは言った。
「今ランタンを持ってきます。ここは少し暗いので」
「いや…」
スネイプはパタンと本を閉じて、ブラウニーを引き留めた。
「いいんだ、今度でいい」
「そうですか…?」
彼女の腑に落ちていない様子に、スネイプは言葉を足した。
「いつも有難いのだが、休日まで我輩の先回りをしてあれこれやる必要はない。…それから、この本に関しては、ブラウニーが読み終わってからでいい、今度貸してくれ」
「はい、分かりました」
スネイプは再び本を戻して、本棚の前から離れた。
ブラウニーは飲み物を用意しようと、戸棚を開けた。
基本的な食事は食堂で済ますため、部屋にあるのは僅かな食器だけだ。
彼女は用意していたトレーの上に、ティーポットやティーカップなどを準備し始めた。
「良かったら、紅茶でも飲みませんか?」
「ああ…そうだな、今日は我輩が淹れよう」
「ふふ。どうしたんですか、今日は何か特別な日でしたっけ」
「そういうわけではないが…平日気を回してくれている分、休みの日は我輩に任せて少し休んでほしいだけだ」
スネイプは、ローブの袖口を少し捲って、ブラウニーの隣に並ぶ。
彼女の部屋に何度か訪れたことがあるスネイプは、勝手を知っていた。
ブラウニーは、慣れた手つきで紅茶を淹れる彼の姿に、彼の手元と横顔を交互に眺めていた。
「…何だ。何か心配かね」
「ふふ。そうじゃないです。普段あまり見られない姿なので、珍しくて」
「君がいつも働きすぎなんだ。我輩も紅茶くらい用意できる」
スネイプの無表情な横顔に、ブラウニーはひっそりと微笑んでいた。
そうして紅茶の茶葉を蒸らしている間に、スネイプが一度咳き込んだ。
「大丈夫です?キャンディーがあったと思いますよ、たしか…ここに…」
引き出しの取っ手に手をかけたブラウニーの手を、スネイプは静止させた。
「ブラウニー」
名前を呼ばれた彼女は振り向いて返事をした。
「はい…」
「我輩といると、あまり寛げないか」
ブラウニーは首を大きく横に振って「そんなことないですよ!」と言った。
「…平日の癖が抜けないだけです。スネイプ先生のサポート役が、私の務めなので」
「それならば…休日は、我輩が君に尽くそう。心地よいと思ってもらえたらそれでいい」
スネイプがブラウニーの顎を僅かに持ち上げて、彼女の目を見つめる。
「そうだな…まだ言葉できちんと『気持ちいい』と言ってもらえていないのも気がかりだ」
「っ…それは…!」
「どこが『いい』のか、たっぷり教えてもらわねばな」
微笑んだスネイプが、自身の唇を彼女のそれに重ねた。
ゆっくりとしたキスから始まり、だんだんと熱を帯びてくる。
ブラウニーから吐息が漏れたとき、彼女は気付くとベッドの上に仰向けになっていた。
「あ、の…」
スネイプはベッドに片膝を乗せて、彼女を見つめたまま、自身のローブのボタンに手をかけて、脱ごうとしているところだった。
「何もしないでいい。気持ちよくなってくれればそれで。…嫌だったらやめる」
「嫌じゃ、ないです…!ないですけど…!」
「気持ちよさそうなブラウニーの顔が見たいんだ」
ローブを脱いだスネイプは、ベッドに片膝をついたまま、ブラウニーに覆いかぶさった。
「あの…誤解してます…」
「い…いつも気持ちいいです…!」
ブラウニーは自分で発した言葉の後に、間髪入れずに恥ずかしさが追いついてきて、思わず両手で自分の顔を覆った。
スネイプは、彼女の言葉に体が静止した。
「…今、なんと言った」
ブラウニーは声も出さずに、顔を覆ったまま、顔を大きく左右に振る。耳が赤くなっているのがはっきりと見て取れた。
スネイプは、そんな彼女の片手を顔の上からそっと退けた。
ブラウニーは、残されたもう片方の腕で目を覆ったが、その分紅潮した頬が露わになった。
「だからその…言ってなかったですけど…いつも、気持ちいいんです…」
彼は、彼女の腕が顔の上から退くのを拒んだら、そのままにしようと思っていたが、そっと手首を掴むと、思いの外簡単に手は退いた。
ブラウニーはスネイプをまっすぐ見据えることができず、部屋の天井やら照明やらを見ては、ちらっと彼の表情を窺うのが精一杯だった。
「気持ちがよくて、なぜ正直に『いい』と言わなかった」
ブラウニーがもっとそっぽを向いて萎縮するので、スネイプは言い方を改めた。
「…いや、すまない。責めているわけではないんだ。ただブラウニーの気持ちが知りたいだけだ」
彼女の視線があちこちを経由して、ようやくスネイプに戻りつつあった。
「…『気持ちいい』って正直に言ったら、今まで遊んできたんじゃないかと思われてしまうかと思って…」
「思わない。…つまり、君が『いい』と言わず、『だめ』や『やだ』という言葉を出すのは、本心からではないのか」
「ま、真正面からそんなこと言わないでください…」
「大事なことだ。そういう認識で合っているのか」
ブラウニーはどんどん声が小さくなっていく。
「合ってます…。だ、だって十分気持ちいいのに、それ以上続けられたらどうにかなっちゃいそうで…」
「ブラウニーのいく姿が見たい」
「っ…!スネイプ先生…!」
「何が好きで、どこが気持ちいいか、すべて教えてほしい」
そう言って、スネイプは一度、優しくキスをした。
「…よいな?」
他の人には見せることのない、優しい表情だった。
ブラウニーは観念して、彼に身を委ねることにした。
先ほどよりも濃厚なキスが、それぞれの呼吸を荒くしていく。
二人が蒸らしたままの紅茶の存在に気付くのは、まだまだ先のことであった。