設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
051〜100
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月に一度のブルーデイ。
ブラウニーはなんとか気を張って一日をやり過ごしたが、夕方自室に戻ってきてからベッドの上でうずくまると、それまで彼女を奮い立たせていた一縷の糸がぷつりと途切れ、彼女はそのままベッドから動くことができなくなった。
下腹部の痛みから、言葉にならない声が漏れる。
眠れるのなら眠りたかった。
意識が朦朧とするなか、ブラウニーは自分でも、起きているのか、夢の中で苦しんでいるのか分からなかった。
一体どれくらいの時間が経ったのか。
外を見ると、既に明るかった。
一瞬ブラウニーは寝過ごしてしまったかと思ったが、冷静になると今日は土曜日で、授業はない日だった。
一晩眠ってしまったらしい。
だんだんと頭が起きてくると、痛みの感覚までも目を覚ますようで、下腹部の痛みもまた存在感を強めてきた。
しかし、昨日ほどではない。
ブラウニーは腰の重さを感じながら、ベッドの上でゆっくり座り直した。
そのとき、ベッド横の窓からコツコツという小さな音がした。
音の鳴った方向に彼女が目を向けると、窓の向こう側には小さなフクロウがいて、こちらをじっと覗いていた。
「…あら、おはよう。どこから来たのかな」
彼女が窓を開けると、そのフクロウは待っていましたと言わんばかりに翼を羽ばたかせて、キャビネットの上に降り立った。
その飛び方が不恰好に見えたのは、フクロウの脚に、小さな包みがぶら下げられているためだろう。
「それを、私に?」
小さなフクロウが、返事をするかのように羽を広げて胸を膨らませる姿は、とても誇らしげに見えた。
そのフクロウは毛艶も良く、機敏に動く様を見ても、とても若そうな印象を受けた。
「ふふふ。初めてのフクロウ便だったのかな?ご苦労様」
そう言いながら、フクロウの脚に結び付けられていた紐を解いた。
包みからは小さめの羊皮紙がはみ出していた。
ブラウニーは包みを開ける前に、羊皮紙を抜き取って差出人を確認することにした。
『おはよう。
夕食で姿を見かけなかったから、
具合が悪いのかと心配しています。
ブラウニーの好きそうな物を持たせたので、
食べられるようなら食べて。リーマス』
手紙を読んだブラウニーの口元が緩んで、彼女は続いて包みを開けた。
中にはチョコチップマフィンが入っていた。
ブラウニーは、普段の食欲まではなかったものの、甘いものなら食べられる気がして、その気遣いに感謝した。
片手にマフィン、もう片方の手に手紙を持ち、ブラウニーは微笑みながらマフィンをくるりと半周させて眺めた。
それから、マフィン生地からチョコチップがいくつも見えているところを見つけると、彼女は一口頬張った。
小さなフクロウは、彼女がマフィンを頬張るのを待っていたかのように、それを合図にして彼女の腕に飛び乗り、羊皮紙をつついた。
「…もしかして、お返事書いてほしいの?」
ブラウニーはふと、このフクロウが部屋に来てから忘れていた下腹部の痛みや腰の重さに気付いてしまうも、羊皮紙と羽ペンを持ってきて短い手紙を書くことにした。
『手紙とマフィンをありがとう。
体調は少し良くなりました。
朝食の時間に間に合えば、あとで温かい
飲み物でももらいに食堂に行こうかな。ブラウニー』
彼女は羊皮紙を丸めて、フクロウの脚にくくりつけた。
「ルーピン先生のところへお願いね。分かる?」
再び羽を広げたフクロウは、意気揚々と飛び立っていった。
それからブラウニーは、残りのチョコチップマフィンをまた一口かじり、朝の身支度を始めた。
体の不調から、時折ため息が漏れる。
休み休み支度をしていたため、身支度には普段の時間の倍を要した。
ブラウニーは時計を見て、食堂に行くのは諦めてもう少し横になっていようかと思ったときのことだった。
部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ブラウニーははっとして返事をして、ドアの前で一度深呼吸をしてから、誰だろうかと思いながらドアを開けた。
「おはよう」
そこにいたのは、ルーピンだった。
ブラウニーの顔に笑顔が灯る。
「…おはよう」
「顔色、あんまりよくないね」
ブラウニーは曖昧な返事をすると、漂う甘い香りに気がついた。
「ココア、持ってきたんだ。他にもほら、もし食べられる物があったらと思って」
ルーピンは慎重に、ココアの入ったカップと紙袋を掲げた。
紙袋の中身は、食堂で朝食を見繕ってきてくれたものらしい。
彼が部屋に入ってから、ブラウニーはドアを閉めた。
テーブルにココアと紙袋を置いたルーピンが振り返り、彼女に尋ねた。
「ココア飲む?」
「うん、もらおうかな」
ブラウニーはベッドの端に腰掛けて、テーブルの上のココアに手を伸ばした。
ルーピンも彼女の持つココアがこぼれないように、そっとベッドの端に腰掛けた。
「いただきます」
ブラウニーは、隣に座るルーピンに言った。
それから彼女は両手を温めるようにカップを包み込んで、ココアを一口飲んだ。
「…ほっとする」
ルーピンを見て微笑んだブラウニーはまた、カップに口を付けた。
その様子に彼もまた微笑んで、彼は一度立ち上がった。
それから手をついてベッドに乗ったかと思うと、ブラウニーの左右両側に脚を投げ出して再び腰掛けた。
「まだ手が温かいかと思って」
そう言ってルーピンは、彼女の後ろから手を回し、彼女の下腹部に両手を当てた。
「…こうやってお腹を温められるかと思って、ココアを持ってくるときに手を温めておいたんだ」
「ふふ。本当、温かい」
ブラウニーはカップを片手で持ち直し、空いた片手を当てずっぽうに後ろに伸ばして、ルーピンの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ありがとう」
「どういたしまして。…女性は毎月毎月大変だね」
ブラウニーの耳元でルーピンが言った。
彼女は振り向いて、彼を視界に入れて言う。
「それを言うなら、リーマスも、毎月毎月大変な思いしてるのは一緒だね」
ルーピンは笑って「それもそうか」と呟いた。
ブラウニーはカップを一度テーブルに戻し、彼の手に自分の手を重ねた。
「マフィンとお手紙、ありがとう。さっきの子、かわいかったね」
「ああ、あのフクロウね。私はフクロウたちに嫌われてるのか、フクロウ小屋に入るとあの小さなフクロウしか寄ってきてくれなくてね…参ったよ」
「ふふ。動物たちからするとリーマスは、狼の匂いでもするのかな」
「まさか、そういうこと?」
ルーピンは自分の腕の匂いをかいだ。
「…ブラウニーがフルーツも食べたいかと思って、持たせようと思ったんだけど、あの小さなフクロウにはマフィンしか持たせられなくて」
ブラウニーは腹痛も忘れて笑った。
「少し元気出たみたい?」
「うんうん」
「…さて、そうしたら私は一旦失礼するよ」
「どうして?」
「具合が悪いときは、ちゃんと休まないと。私がいたらブラウニーが休まらないだろう?」
ルーピンはベッドから下りながらそう言って、ベッドの奥側の掛け布団をめくる。
「ほら、横になって」
「…うん」
ブラウニーは、横になりたいような、このままルーピンともっと話していたいような複雑な気持ちになったが、結局彼の言うことに従うことにした。
ルーピンは、ベッドに横になったブラウニーの額にかかる前髪を避けて、彼女の額にキスをした。
「ゆっくり休んで。ドアは鍵を掛けていくから安心して」
ローブから杖を取り出したルーピンは微笑んだ。
それからもう一度、彼女の額にキスをした。
「おやすみ。また明日ね」