設定しない場合の主人公の名前は、ブラウニーとなります。
051〜100
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二人はランタンを準備して、ホグワーツ城を出てから、クィディッチ競技場の方向へ歩いていく。
ホグワーツ城の灯りが遠くに感じられるようになったところで、ルーピンは隣を歩くブラウニーの手を取った。
ブラウニーは照れたようにルーピンを見て微笑み、彼もまた、そんな彼女を見て微笑んで言った。
「もし今、誰か生徒が城を抜け出していたとしても、今夜ばかりは叱れる立場にないね」
二人は笑い合って、繋いでいる手を一度ぎゅっと握った。
「うん、本当だね。それにしても、今夜は急にどうしたの?これから…クィディッチ競技場に?」
「シニストラ先生が教えてくれたんだ。今夜は新月で、その上、天気もいいから星がよく見えるって」
シニストラは、天文学担当の先生だ。
ブラウニーは空を見上げた。
「わあ…気付かなかった」
ため息混じりにブラウニーは感嘆の声を上げた。
「運が良ければ、流星群も見られるかもしれない」
「…この星空だけでも十分すぎるよ!」
二人は、その後、今日あった出来事や明日の朝食の予想など、他愛もない会話をしながらクィディッチ競技場へと歩いた。
クィディッチ競技場に着くと、入口には当然のことながら鍵がかかっていた。
ぶら下がる錠前を見て、ルーピンは驚くこともなく「やっぱりそうか」と呟いてから、ブラウニーの手を引いた。
「こっちに来て」
「まさか、忍び込むの?」
「…そのまさかかな」
頬に傷のあるルーピンがにやりと笑うと、ブラウニーにはまるで悪戯好きなティーンエイジャーが目の前にいるような感覚に陥った。
「もしかして、既に学生時代に忍び込んだ経験あり?」
「あはは。つるんだ友だちが友だちだったからね。それなりのことは、一通り経験したよ」
「やっぱり!」
生真面目な学生生活を送ってきたブラウニーにとって、ルーピンが学生時代に経験してきたことは、想像の遥か上をいくことばかりだった。
ルーピンは競技場に沿って歩きながら、何かを数えたり、辺りを見回したりして場所を確かめて、ある場所で足を止めた。そしてそこにかかっている幕をそっと捲った。
他の場所と同様に木材が組まれているはずのそこには、かつてかなりの衝撃が加わったようで、その木材が折れていた。
「昔、遊んでいてちょっとね。ここが直されていないということは…ブラウニー、ちょっとここで待っていて」
ルーピンは独り言のようにそう言って幕の中に消えたかと思うと、しばらくして戻ってきた。
「…おまたせ。おいで」
ルーピンは頭をぶつけないように屈んだ状態で、ブラウニーに手を差し出す。
競技場の観客席の下は木材が入り組んでいた。
ルーピンが先頭に立って跨いだり潜ったりするのを見て、ブラウニーもそれに倣って後に続いた。
しばらくして観客席の下から出ると、そこには試合時とは対照的な、静かなクィディッチ競技場が広がっていた。
「…夜のクィディッチ競技場は、昼間とはまた雰囲気が全然違うね」
「うん。幸い、他には誰も来ていないようだから、今夜は貸し切りだね」
ルーピンは満足そうに観客席に座った。
「星を見るだけのはずが、私にとっては、ちょっとした冒険だったよ!」
ブラウニーも笑って、その隣に座った。
「私といると、飽きなくていいだろう?」
ルーピンも微笑んで、それからブラウニーが座ったのを見て、ランタンの火を消した。
「…いやあ、きれいだね」
「うん。私、こんなきれいな星空、見たことないよ」
「本当だね。ちなみに、流れ星が見えるとしたら、こっちの方角らしいよ」
ルーピンは腕を伸ばして、夜空を指差した。
それから二人は口数少なく星空を眺めていたが、ブラウニーが口を開いた。
「はじめのうちにこんなこと言うのどうかと思うけど…もし流れ星が見えたとしても、見えなかったとしても、今夜、ここに連れてきてくれてありがとう」
「うん?」
「ここのところ、ちょっと落ち込むことがあったから…こういうの救われる」
「…そうだろうと思ったんだよね」
ルーピンの予想外の返事に、ブラウニーは驚いた。ルーピンは続けて言う。
「なんとなくだけど…無理してる感じ、あったから」
「ふふ。バレてたか」
「まあね。…あまり溜め込まないように」
「うん、そうだね」
「話はいつでも聞くよ、私で良ければね」
ルーピンの気持ちを噛み締めるように、ブラウニーは黙って頷いた。
それから二人は、視線を星空に戻した。
「ねえ。今夜、天文学の授業中に当たってる生徒はラッキーだね。こんなに星が…」
ブラウニーが、話の途中で言葉を切った。
ルーピンがどうしたのか聞こうとした瞬間、ブラウニーは目を丸くして言った。
「今見た?流れ星!」
「え?見えなかった」
「こっちの方で今確かに…」
流れ星が見えたであろう方角を指差し、じっと夜空を眺めるも、動くものは見当たらない。
ブラウニーは真面目な顔で言う。
「あれ…流れ星見られるかどうかって、学生時代からの行いによるのかな」
「ちょっと…そういうこと言わないの」
そう言って二人が笑い合っている間にも一つ、流れ星が光って消えた。