獣星
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「レゴシ君、私そろそろ行くね?レゴシ君は寝てて?」
「…?どこにですか…?」
春が始まる昼下がりの土曜日。昼ご飯を食べた後そういう事をした俺たちはそのまま微睡み、2人寝るには少し狭いベッドの上でくっついて昼寝をしていた。腕の中にすっぽり収まる彼女がとても愛おしい。月は俺に後ろから抱きつかれている体制だったので、よいしょよいしょと俺の腕の中で反転し、俺の方を向いた。ジッと俺のことを見る顔が可愛く、無意識にキスをしてしまう。
「んちゅ…言ったじゃん、今日演劇部の同期飲みあるって。」
「そうだっけ…。」
「そうだよー!すっかり寝ちゃったから準備しないと。離して、レゴシ君。」
「んー…。」
「んー、じゃないの!時間ないから。」
「オスも来る?」
「来るよ。」
「じゃあ嫌です。」
「ちょっと!」
月の頭の上に顎を起き、ぐりぐりする。普段はこんなワガママを言う自分ではないのに。なぜか今日は、この腕の中の彼女を離したくなかった。ましてや、こんなに可愛い月を他のオスになど、見られたくないという気持ちが強かった。演劇部の同期ってことは、あの先輩もあの先輩も在学中月を狙ってたよな…
「行かないでください。」
「行くよ!みんなとそんなにしょっちゅう会えないんだもん。」
「月先輩〜。」
「ちょっと!どこ触ってんの!」
「おっぱいです。」
「知ってます!やめてよもー!」
なんでそんなに行きたいんだよ。俺と一緒にいてよ。
「じゃあ、行ってらっしゃい…。」
「レゴシ君?」
「…何?」
「拗ねてるの?」
「拗ねてます。」
「拗ねないでよ。」
「拗ねます。」
「もー、ほら。」
駄々っ子をあやすように、月は俺の頭を抱きしめ、おでこにちゅっとキスをする。拗ねていたのに、それだけで俺の尻尾はブンブンと動き、嬉しい事が一目瞭然で恥ずかしい。
「いい子にしてたら、ご褒美あるかもよ。」
「…本当ですか。」
「うん、本当本当。」
「夜には帰って来る?」
「帰って来るよ。終電で帰って来る。」
「駅、迎えに行きます。」
「いいの?ありがと。」
早く、早く飲み会なんて終わって俺の元に帰ってきて。俺だけの月でいて。
「浮気、しないでくださいね。」
「しないよ。ていうかこんなにかっこいい彼氏がいたら、浮気なんてする気も起きないよ!私は、レゴシ君だけが大好きだから。」
顔がにやけるのが止まらない。俺はもっと表情筋が固かったはずなのに、こうなったのも全部月のせいだ。
「俺も月だけが大好き。」
「ふふ、ありがとう。」
「あ、そうだ。」
「?」
シュッと俺の香水をかける。
「マーキング。」
「おしっこじゃなくてよかった。」
「そこまで犬じゃないですよ…。」
2人で笑い合う、そんな昼下がり。俺だけが見ることの出来る可愛い笑顔と、君だけが知っている俺の笑顔。こういう時間をこれからも、これからも大切にしていきたい。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
「あ、そうだ。」
「?」
ちゅ、
「マーキング!」
俺にキスをして、笑顔で家を出て行く彼女の帰りを待つ俺は、それだけでかなりの幸せ者なのかもしれない。
「レゴシ君ただいま!ご褒美の大豆ジャーキー買ってきた!」
「え、ご褒美ってそういう…。」