英雄
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まずい。急げ!急げ!!急げ!!!
廊下を走る僕は至極悪い。
しかし、誰かを守るためには、時には悪にならざるを得ない時もあるということだ!ぬをおおおおお!
「轟君こんにちは。天哉いる?」
「あ、夜空先輩。飯田なら、さっき相澤先生に呼ばれて職員室に行きましたよ。」
「そうなんだ。学級委員長はお昼休みも大忙しですな。」
「どうしたんですか。」
「天哉の分のお弁当も作ってきたから一緒に食べようと思ったんだけどな。」
「あぁ、そうなんですね。でも昼休み中かかっちゃう用事らしいですよ。よかったら俺にその弁当…」
ビシィィィィイイッ!
「キャッ、びっくりした。」
「夜空先輩!!だ…騙されてはいけません!はあっはあっ。」
「チッ。」
「轟君!!相澤先生は俺を呼んでなどいなかったぞ!」
「そうか。」
「そうかじゃないだろう!君が、相澤先生が俺を呼んでいると言うから職員室に行ったのに!」
「天哉?」
夜空先輩、可愛いな!!!い、いかん、今は轟君と話していると言うのに、集中が出来ないぞ!汗を拭いてくれているそのハンカチ!後で是非いただきたい!
「学級委員長なのに廊下を走っちゃったのか〜?悪い子だなあ、天哉は。」
「夜空先輩!違うんですこれは!あの…いや、違わないですね。いかなる理由があろうとも、クラスメイトの模範になるべき学級委員長が廊下を走るなど言語道断…!」
幻滅されてしまっただろうか!?夜空先輩はもう、廊下を走る僕など嫌いだろうか。夜空先輩に、僕はもう、愛想を尽かされてしまうのだろうか。そんなのは、嫌だ!!!!!
「夜空先輩、俺、精進します。精進しますから、嫌わないでください…。」
「?大好きよ?天哉。」
「!!!!!!!!」
「ごめんごめん、そんなに気にするなんて思わなくて。ちょっと意地悪しちゃった。」
僕の頭をよしよしと撫でる夜空先輩。夜空先輩は、平気でこういうことを人前で出来る方だ。思春期真っ只中の高校生には少し刺激が強いらしく、クラスメイト達ががチラチラ見てくる。しかしそんな事より夜空先輩の「大好き」という言葉が頭の中で甘い感覚と共に何度も繰り返され、触れてくれている手が髪越しにでも分かるくらい柔らかく、なんだかいい匂いもするのだ。クラスメイト達の反応を気にしている余裕なんか、無くなってしまう。早くこの人を、独り占めしたい。
「夜空先輩!お弁当作って来てくださったんですよね!屋上でも行きませんか!」
「うん、そうだね。行こっか。」
「ああ、そうだ!轟君!!!」
「…俺の事完全に忘れてただろ。」
「この際だから言っておくが、夜空先輩は俺の…俺の…」
「俺の?」
「俺の…べ、弁当を作って来てくれたんだから!その弁当を、君が食べていいわけ無いだろ!」
クラスメイト達が、また言えなかったのか、とでも言うように深いため息をつく。轟君も呆れた顔をしている。
「分かったよ。ほら、早く行かないと昼休みが終わるぞ、飯田。」
「誰のせいだと…!う、うむ、しかし、確かにそうだな。夜空先輩!行きましょう!」
「うん。」
夜空先輩が鈍感なのだけがせめてもの救いだ。僕が本当に言おうとしてた事なんて、おそらく分からないだろう。
「あ、そうだ、クラスの女の子ちゃん達!」
「夜空先輩?」
「天哉は、私の男だから、いくらかっこいいからって手出さないでね?」
「夜空先輩っ…!」
キャッキャとはしゃぐクラスの年頃の女子達。夜空先輩の方を見ると僕の目を見てしたり顔。そのまま手を引かれ、教室を出て、屋上に上がる階段を登る。ああ、この年上の彼女には、何も敵わないのだ。なんでもお見通しなんだ、この人には。全て。
「夜空先輩、」
「どした。」
「好きです。」
「ありがと。知ってる。私も大好き。」
ほら、
「…!夜空先輩、あの、んむっ」
ちゅ
「…ふっ。今、ちゅーしたくなってたでしょ。」
なんでもお見通しなんだ。
「ふははは!エリートイケメンでも案外典型的な邪魔をした上、あっさりフられちゃうんですなぁ〜!」
「峰田、凍らすぞ。」