英雄
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最近、自分は至極おかしい。やけにドキドキしたり不安になったり幸せな気持ちになったりと忙しない。それもこれも全部、寮に移動してからというもの、共同生活空間に愛しい月がいるせいだ。
「あ、飯田くんおはよう!」
「む!おはよう月………夜空君!早起きだね!」
寮の共同スペースに2人きり。きょろきょろと辺りを見回すと、他にはまだ誰も起きて来て居ないようだ。チャンス!と思い月に顔をバッと向けると、にっこりと僕を見上げる月の顔。か、可愛い!!!!!顔を洗って来たばかりなのだろう。前髪が上に上がっている。綺麗に出たおでこに自然と顔が近づく。大好きな月の匂いが、鼻をくすぐる。
「あ、飯田君!夜空さん!おはよう!」
「!!!!!!!!!お、おおおおおおおおはよう緑谷君!早起きだね!」
「わぁぁ!飯田君大丈夫!?」
後ろから緑谷君の声がした瞬間腰が折れるかと思うくらい仰け反り、緑谷君を大層驚かせてしまった。
「だ、大丈夫!」
「よ、良かった。2人とも朝から何してたの?」
「な、な、ななな!?何も!何もしてないぞ!うむ!」
「お話ししてたんだよー。」
「そうなんだ!2人とも良かったら走りに行かない?」
「う、うむ!行こう!夜空君も行くかい?」
「うん!着替えてくる!」
「俺も着替えて来るとしよう。緑谷君、すまないが少し待っててくれたまえ!」
「うん!」
トレーニング用の服に着替えが終わり、共同スペースに戻ると月はすでに着替えが終わって来ていた。なんというか、着替えてくれてありがとうとも言いたいし、着替えて欲しくなかった気もする。ぴっちりとした月のトレーニングスーツが、彼女の美しい体のラインを強調しているのだ。僕も男だ。これは目に毒すぎる。
「夜空君!俺の上着を着るかい!?」
「ありがとう、でも走ったら暑くなるから大丈夫だよ。」
「う、うむ…。」
大きいわけではないが可愛らしい月の胸が走る度にふわ、ふわ、と上下し、チラチラと見るのを止められない。ああ、これでは峰田君と何も変わらないではないか。いや、しかし僕は他の女子だったらこんな事にはならないんだ。月だから、月の胸だから…。この間初めて服の上から触らせてもらった。それから1週間はもうそのことしか考えられず…じゃなく!いかん!雑念が多すぎる!
「すまないが、先に行く!後ろからまた追いつくだろうから気にしないでくれ!」
「あ、うん。」
「飯田君!フルスロットル!」
うおおおおおおおおおおとエンジンをフル回転させて走りだす。雑念を、雑念を振り払わなければ!
「デク君、私ちょっと飯田君追いかけるね。」
「あ、うん!僕はペース保つから先行ってて!」
「よいしょっと。」
びゅん、という音がしたかと思うと月がすぐ横に来た。彼女の個性は「加速」触れたものを一定時間加速させられるのだ。足に加速をかけ、追いついてくれたみたいだ。
「天哉」
「な、な、なんだい?」
「おっぱい見てたでしょ。」
「!!!!!!!!!!!!???????」
ば、ばれてた!いや、そりゃあバレるだろう!結構見てしまっていた自覚がある!顔に熱が集まるのが分かる。恥ずかしい。月はトレーニングのために着ている服だというのに僕はなんて邪な…!
「絶対こういうの好きだろうなって思って、」
「!?」
「こないだ買ったんだ、このトレーニングスーツ。」
「………なっ!」
「ふふっ、」
「…?」
「天哉のえっち。」
「!!!!!!!!!!!!!!」
ニヤリ、といたずらっ子のように月が僕を見つめる。胸がドキンと大きく音を立てたのが分かった。もう既に可愛くて堪らないのだから、そんな顔をするのは本当にやめてくれ。
「か、からかうのはやめてくれ給え!」
「こないだおっぱい触ったこと思い出しちゃった?」
「な、な、な、な、そんな!そんなことは!」
「今日もこの後、触りたい?」
「え、え!?」
「服の上からじゃなくてもいいよ?」
「な、な、な、な、な、な!月!いい加減にしないか!」
ケラケラと笑う月は本当に意地悪だ。恥ずかしすぎて涙が出て来た。何よりも、この間のことを思い出していたのも事実だしこの後触れさせてもらえるのなら是非触れさせていただきたいのも本心だ。いつから僕はこんなにもその、え、えっちな人間になってしまったのだろう。
「意地悪しないでくれ…。」
「ふふ、天哉、かーわいっ。」
「か、可愛くなど…。」
「デク君かなり後ろだね。見えないや。」
そう言うと月はおでこにキスをして来た。
「もーらいっ。」
「〜っ!!」
いつも、いつもそうだ。月は余裕があって、僕は余裕が全くない。彼女の一挙一動にコロコロと左右されては心が揺さぶられ、おかしくなってしまうのだ。だが、僕はどうやら、
「………………月。」
「ん?」
「……………も、もう一回…。」
「〜っ!もー!ずるい!可愛い!」
月によっておかしくなった自分が、嫌いではないみたいだ。
「(飯田君、夜空さんごめんね…。バッチリ見えてます…。)」