英雄
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学校からの帰路につく。いつものようにわざと自分の家を通り過ぎた俺は、月の家の前に佇んでいた。中学生になってからめっきり行くことが無くなってしまったこの家に、今も未練がましく近づいてしまうのが何故なのか自分が一番よく分かっている。物思いに耽っていると、月の母親が家から出て来た。
「あら!焦凍君!久しぶりじゃない!」
「おばさん、ご無沙汰してます。」
「随分とカッコよくなっちゃって!ヒーローの高校に行ってるんだって!?さすがねー!あ、焦凍君今時間ある?よかったら久しぶりに上がってってくれない?」
「え、」
「月ったら風邪引いちゃってね。今から私ご飯やら薬やら買って来なきゃいけないんだけど、1人にしとくのちょっと心配なのよ。」
「あ…」
「あ、でも感染っちゃったら良くないわよねえ?」
「いえ…あの、お邪魔します。」
じゃあよろしくー!と手を振って去って行く月の母親を見送り、俺は久しぶりに月の家に入った。今でも鮮明に覚えている。どこが台所で、どこがトイレで、どこが、月の部屋か。
部屋の前に辿り着き、そっとドアノブに手をかけガチャリと開けると、鼻腔を駆け抜ける大好きな月の匂い、そして、何度も夢に見た愛おしい月の姿がそこにあった。
「月…。」
姿を見た途端、まるで縋るかのように、名前が音になって口から出た。すうすうと寝息を立てている愛らしい女性は紛れもなく月だった。月。月だ。月がいる。月…。
そっと頬に手を添えると、月は擽ったそうに身をよじった。その仕草一つ一つすら愛おしく、俺は何かに堪えるようにぎゅっと下唇を噛んだ。久しぶりの月の感触を堪能すべく、頬、髪、唇、肩、触れたい場所に触れまくった。触れれば触れるほど、閉じ込めておいたはずの感情が溢れ出そうになる。
「なんでなんだよ…。」
思わず大きめの声が出てしまった。俺の声に反応し、月がゆっくりと目を覚ます。綺麗な目。お願いだから、俺を見て。お願いだから、俺を…見ないで。
「…んぅ?」
「…おはよう。」
「おは……え、しょ、焦凍君…?」
「…うん。」
「………!?え、え、え、え!?なんで!?なんで焦凍君が!?ここに!?ぎゃ!ちょ、私、ノーメイク!わ!お風呂入ってないよ!?は!もしかしてお母さんが…」
「…可愛いよ。」
「へ?」
「いい匂いだし…。」
「〜っ!?ど、ど、ど、どうしたの焦凍君…!あ、あと久しぶり…。」
「……ん。」
夕方の明るくもなく暗くもないオレンジ色の空が、上半身を起こして座る月の顔を照らし、とても綺麗だ。綺麗だな。ああ、本当に、綺麗だ。
「月。」
「は、はい!…ひゃっ!」
右手で月の額に手を当てて冷やす。トロンとした目でこちらを見てくる月に、目の前がクラクラする感覚に襲われる。
「冷たくて気持ちいい…。」
「…そうか。」
「うん、ありがとう。ふふ、昔よくやってくれたよね、焦凍君。私がこうやって熱出した時とか、もう凄い心配して一生懸命走って来てくれてさ、右手でこうやっておでこ冷やし…!?」
ぎゅ、と俺は月を抱きしめた。優しくて愛おしい思い出が蘇り、目の前の人を抱き締められずにはいられなかった。ドク、ドク、と心臓が跳ねる。柔らかい。いい匂いもする。体が少し熱い。昔こうしてよく抱きしめてくれた大きかったはずの月が、今はとても小さく感じる。
「しょ、しょ、焦凍君…!?」
「なんでなんだよ…!」
「え、何が…ひゃ!」
言葉を発してすぐ、俺は月を押し倒した。両腕を頭の上で固定し、月を見下ろす。真っ赤になった顔に恐怖の色が灯る。
「な、何!?焦凍君…!」
「黙って。」
「ちょ、やだ、やだよ!離して!」
そりゃあ俺にこんなことされたら嫌だよな。だって、
「今から俺が何するか、分かる?」
「〜っ!?」
「分かるよね、月は、俺よりお姉ちゃんだから。」
月には、恋人がいるから。
「んむっ!んんっ!…ん!」
「ん、はっ。んん。」
初めてのキスが、こんなに悲しいものだなんて。初めて見るこの光景が、目を瞑りたくなるくらい辛いものになるなんて。それでも、止まることなんて、出来なかった。荒々しく口付けた後は、強引に月の下半身に手を伸ばす。そこは既に、濡れそぼっていた。
「は、無理矢理されてんのに、こんななるんだな。」
「や、やめて!触らないでよ…!」
「すげえ濡れてる…。」
「い、言わないで!やだ、やだぁ…!」
月のこんな姿を見て平静を保てるわけなく、俺の下半身は痛いほどに反応してしまっていた。ズボンを下げ、そのどうしようもなくなってしまったモノを月の目の前に突き出す。
「舐めて。」
「…なんでこんなことするの焦凍君…。」
「舐めて、月。早く。」
無理矢理口に押し付けると、観念したのか諦めたのか、チロ、チロと舐め始める月。涙を流しながら自分のモノを舐める月の姿に非道く興奮してしまう。どうしてこんなにも可愛いのか。俺は、最低だ。グッと頭を掴み、自分のモノを月の口の中に捩じ込んだ。
「んぶっ!?」
「んっ…!は、はぁ、うん、いいよ、月。すげえ気持ちい。」
「ふ、んぐっ、うっ、うぇっ。んっ。」
俺は何をしてるのか。こんな事したかった訳じゃないだろう。こんな事、望んでいなかっただろう。……いや、ずっと、望んでいたんだ、俺は。
「挿れるぞ、月。」
「!!!?だめ!だめぇ!やめて!」
「聞こえねえ。」
恋人がいるとか、嫌がってるとか、もうどうでもいい。俺はもう、月を押し倒した時点で、キスをした時点で、全て失ったんだ。いや、あの中学1年生の帰り道。月が知らない男と手を繋ぎ、家の前でキスをしているのを見た時に、俺は既に全てを失っていたのかもしれない。
「ん、ああっ!」
「はっ、きつ…。」
月の制止の声も虚しく、俺は彼女の濡れそぼったそこに、自分のモノを思いっきりぶち込んだ。涙が溢れそうになる。この手の中にいるのに、俺の物じゃない。繋がっているのに、何も、繋がってなんかない。
「いっ、あっ、あんっ!しょ、焦…凍く…!やっ…」
「なんで…」
「…?んっ、ぁっ、ぁんっ」
「なんで、あの男なんだよ…!」
「ふっ、ぁん!…へ?しょ、と君?やっ…!」
「俺が一番近くで月の事…見てたのに…!」
「んんっ、あぁん!」
「俺が一番、月の事知ってるのに…!くっ。」
「しょ…んっ。」
「俺が一番、月のこと…!」
好きなのに。……好きだ。好きだ。大好きなんだ。初恋だった。月が俺の全てだったんだ。こんなにも好きなのに。なのに、なのに、なのになのになのに…!
「…もっと、嫌がってくれよ…。」
「…?」
「突き放して、嫌いだって、言ってくれ。」
「焦凍君…?」
「月を傷つけた。彼氏がいるのを知ってながら、こんなことする、最低な奴だって、罵って。」
「…焦凍君。」
「俺の中から……もう、いなくなってくれよ…。」
我に返った時にはもう全て手遅れで。涙が頬を伝った。俺は、俺はなんて事を…。一番大切にしたかった人を、一番傷つけてしまった。後悔と自己嫌悪からボロボロと泣き出した俺を、月がギュッと抱きしめた。
「焦凍君。」
「すまねぇ、月、俺、」
「焦凍君。」
「俺、なんて言ったらいいか、本当に、」
「焦凍君、私、彼氏いないけど。」
「すまね、………………え?」
「誰情報?」
「…俺が中1の時、家の前でキスしてた…。」
「いや、何年前の話!?」
さっきまで泣いていたはずの月が、今度はクスクスと笑っている。
「焦凍君、私に彼氏いると思ってたの?」
「………。」
「だから急にウチ来なくなったの?」
「………。」
「ばっかだなぁ〜。」
「…わりぃ。」
呆れた顔はしているものの、優しい瞳で俺を見つめ、よしよしと頭を撫でてくれる月を見ていると、全てが恥ずかしくなり、顔に熱が集まるのが分かる。また、涙がボロボロとこぼれ出した。今度の涙は、羞恥と、そして安堵の涙だ。
「もー、泣き虫な所変わってないなあ〜。」
「…わりぃ。」
「…で、さ、焦凍君。」
「…うん。」
「あなたのがですね、入ったまんまなんですけど。」
「…っ!」
「もし続きがしたいなら、さっきの続き聞かせてくれる?」
「さっきの続き…?」
「『俺が一番、月のこと…』の後。」
「…!あ、それは…。」
「聞かせて?」
「…………俺が…」
「うん?」
「…………俺が一番、月のこと………好きだ。」
決死の思いで告白をした瞬間、今度は月に押し倒され、キスされた。俺を見下ろしてくる月はとても煽情的で、少し大人になった自分達を思い知る。
「私も一番、焦凍君が好きだよ。」
「………え?」
「だって!全然そんなそぶり見せないんだもん!恋愛対象に見られてないって半ば諦めて他の人と付き合ったりしたけど、どうしても焦凍君と比べちゃって長続きしないし…」
「…!」
「雄英入ったって聞いたから、応援したいし邪魔したらダメだと思ったから、片思いに苦しんでたんだよ!?」
「…す、すまねぇ?」
「ぷっ、もういいよ。ちゃんと言えたご褒美にお姉さんが、焦凍君のことイカせてあげる。」
「!!…ちょ、待、ぐっ、あっ…」
「こんなにも…んっ、待たされたんだもん、あっ…もう、待たないよ。」
「あ、あ、あ、それダメ、あっ、月…!イく…」
「イッていいよ、焦凍君。」
「んっ、ああああ!」
月に主導権を握られた俺は、これでもかというくらい興奮し、呆気なくすぐに果ててしまった。
「もー、こちとら病人なんだけど。」
「…わりぃ。」
「しょうがないなあ〜。無理矢理するし〜。」
「嫌がってたのに、すまねぇ。」
「そりゃあそうだよ!好きな人にお風呂入ってない、歯磨いてない状態でキスされたり色んなところ触られたら嫌がるよ!もう!」
「でもいい匂いだったし、なんか甘かった…。」
「言わなくていいのそういうことは!」
もー!と俺の頬を引っ張りながらケラケラ笑う月を見る。あ、繋がってる。今俺は、月と繋がってる。
「月、好きだ。」
「私も好きだよ。」
「好きだ。好きだ。大好きだ。月。好きだ。」
これでも、まだ伝え足りないのだが、まずは顔を真っ赤にしている月に、そっとキスをして抱きしめることにした。
「焦凍ォォォオオオオ!風邪を引いたのか情け無い!」
「…ゴホッ、うるせえクソ親父。」
「なんでお前はそんな嬉しそうな顔をしているんだ焦凍!!!」