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「僕がどうして怒ってるか、分かる?」
「…はい。」
時は遡ること1時間前。珍しく仕事が早く終わったので、九番隊で未だ仕事をしているであろう愛しの恋人月に会いに行く。本当は抱きしめてそのまま連れ出したいところだが、隊長という立場上、他の死神達には内緒で付き合っているためそうもいかない。本当はみんなに自慢しちゃいたいんだけどな。仕事してるとこ見ながら待っちゃおうかな。で、その後はお家でたっぷり可愛が…
「本当に…困りますから。」
「月も俺の気持ち分かってるんだろ?好きなんだ。」
「何度も言いますが、ごめんなさい。」
九番隊隊舎に着くと、所謂壁ドンという格好で相手に迫りながら告白をしている檜佐木君と…月の姿。自分の中の黒い感情が沸き起こり、気づけば2人の間に割って入っていた。
「京楽さん!?」
「やあやあこれは、檜佐木君こんにちは。邪魔して悪いね。」
「京楽さん…!」
「月ちゃんもはい、こんにちは。…檜佐木君、僕、月ちゃんに用があってさ、どうしてもお借りしなきゃいけないんだけど、いいかな?」
「え、でも…」
「いいよね?」
ニコリと笑うと、引きつった顔の檜佐木君は「はい!どうぞ!」と言い隊舎の中へと逃げ去って行った。優しく笑ったつもりなのになあ。
「月ちゃん。」
「は…はい、あの、京楽さん…。」
「行こっか。」
「…はい。」
こういう時、素直に従った方がいいことを月はよく分かっている。お利口さんじゃないか。彼女の手をとり、自身の部屋へと連れて行く。思わず握っている手に力が入ってしまう。ああ、僕は相当怒っているんだな。部屋に入り月を座敷に座らせ、見つめ合いながら最初に口にした言葉が冒頭、というわけだ。
「どうしてだと思う?」
「檜佐木さん…男の人と2人きりでいたから。」
「そうだね…。それだけかな?」
「告白…されちゃったから…?」
「うんうん、他には?」
「…………?分からない…です。」
「誰にでも魅力を振りまいちゃうのはよくないよね。隙があるのもよくないし、はっきりしないのもダメだなぁ。」
「そんな…!私ちゃんと断りましたもん!」
「でも僕がいなかったら、もっと迫られてたんじゃないかな?」
「それは…」
「もしかして僕より檜佐木君の方が良かったりする?若くてかっこいいもんね。」
「な…!そんなわけないじゃないですか!」
何を言っても何を言われてもイライラが止まらない。月は、僕のなのに。僕だけのなのに。どうして他の男に隙を見せるんだよ。どうしてもっと僕だけを見せてくれないんだ?ねえ、月。僕だけを見て。僕だけの名前を呼んで。
「お仕置きが必要だと思うんだよね〜。」
「私は何もしてないです…!」
「そうだね、何もしてないよ。何にも分かってないし。」
「そんな…!」
「自分が誰のものかってこと、ちゃーんと覚えなきゃね?」
「!…っんう!」
いきなり月の唇に噛み付くようなキスをする。驚いてはいるが、抵抗はしない。こういう所もいちいち…
「ホント無防備。」
「ぅ…ふぇ?」
彼女に対してこんなにもイライラしたのは初めてだ。というか、女性に対してこのような感情になること自体自分には経験がない。目の前の人を宝物のように大切にしたい反面、ぐちゃぐちゃに壊してしまいたいとも思ってしまう。
「花天狂骨枯松心中(かてんきょうこつからまつしんじゅう)。」
「…へ?」
「一段目、躊躇疵分合(ためらいきずのわかちあい)。」
「いっ…!」
月の首元に噛み付き、噛み跡を残す。痛がる月に興奮してしまう自分は、なんて愚かなのだろうか。
「ほら、綺麗についたよ僕の跡。月の跡も、僕につけてよ。出来るだろう?」
「え…。」
「月、噛んで。」
「でも…」
「いいから。ほら。」
徐に首を差し出し、月に噛ませる。普段そんなことをさせたことは無いので、月は恐る恐る僕の首を噛んでいる。首元がくすぐったく、一生懸命頑張る彼女が愛らしいが、今欲しいのはそういうのじゃない。
「もっと、ちゃんと噛んでよ月ちゃん。」
「〜っ!」
涙目になりながら今度は力強く噛んでくる月。ああ、そう。そうだ。もっともっと深く、深く、僕に君を刻みつけて。
「はぁ…、はぁ…あむっ。」
「いい子だね。ほーら、お揃いだよ。」
「も、許してくださ…い。」
「君も知ってるだろ?花天狂骨枯松心中は、〆の段まであるんだよ。」
「そんな…!」
自分の卍解になぞらえながら彼女を犯している僕は相当頭がおかしいかもしれない。ただ、これは2人の絆の証。殆ど誰も知らない僕の卍解の事を彼女が知っている、ということは、それだけ僕が彼女を信頼しているということなのだ。それだけ愛しているというのに…。
「二段目、慚愧の褥(ざんきのしとね)。」
「…?」
「僕のものだって証、たくさんつけてあげる。」
「ひゃっ…!」
「ごめん、ごめんね月ちゃん。」
これでもかってくらい、月の体にキスマークをつける。首にはもちろん、可愛い胸にも、お腹にも、脇にも、太ももにも、さながら本物の斑点かのように咲き誇る僕の跡一つ一つが、彼女が自分のものだという主張をしている。
「ん、いや、ぁっ、こんなにつけたら隠せないですよ…。」
「じゃあ見せたらいいさ。」
「でも、内、あっ、内緒…で…。」
「君を誰かにとられそうになるくらいならバレた方がいいよ。」
「んっ、ああっ。」
怒ればいいじゃないか。こんな酷い事をする僕を罵ればいいのに。慚愧の褥よろしく、自分がしたことにすでに後悔の念を覚える。しかし頭と違って体は素直に反応を示し、嫌がりながらも乱れる月の姿に、自身は痛いくらいに主張をしてしまっていた。
「なんだ、嫌がるわりには月ちゃん濡れちゃってるね。じゃあ、三段目と洒落込もうか。三段目、断魚淵(だんぎょのふち)。」
「…!?」
「お互い果てるまで、遊び明かそうじゃないの。」
「い、ぁああっ。」
欲望のままに自身で月を貫く。慣らす必要もないくらいに月のそこはグチョグチョだった。
「はっ、なんだこれ。いやらしい子だね。」
「ちがっ…。んんっ!」
「他の男でもこうなるのかな?」
「やっ、そんな、京楽さん…だ、けだも…。」
「聞こえないなぁ。」
「私は、京楽さんだけ…!京楽さんだけが好き…!」
「月…名前で呼んで。僕の名前。」
「春水、さん…。春水…。」
「もっと、もっと呼んでおくれよ。」
「あっ、春水、大好き…大好き。」
「月、僕も好きだよ。君が好きなんだ。」
その後はもう、狂ったように月を犯し、抱いた。何度果てたかわからない。着ていたはずの死覇将がどこかへいってしまっていたのだが、いつ脱いだのか分からないくらいに。
「はぁ、はぁ。〆の段、糸切鋏血染喉(いときりばさみちぞめののどぶえ)…。」
「…それは、どういう意味ですか…。」
「そもそもは…ね、はぁ、〆の段は、未練を断ち切るってとこから来てるんだ…。だから、ね、」
「私、別れませんから。」
「…?でもね、月ちゃん、こんなおじさんに束縛されている月ちゃんを、僕はもう見てられないよ。」
「…………!うっ。ううっ。ぐすっ。縛って、いいからぁ。うっぐ、別れないでぇ。うっうえ。」
別れを思わせる言葉を発した途端、子供のように泣きじゃくる月。自分は、最低だ。彼女がこう言ってくれることを、分かって言ったのだ。彼女と離れるなんて、自分の選択肢には無いのだから。なのに子供っぽく、心にも無いことを…。
「春水さんは、私のこと、ぐすっ…もう嫌い…なんですか…?」
「嫌いなもんか。誰よりも、何よりも君の事が愛おしいよ。」
「じゃあ、変なこと言うな、ばかぁ…!」
彼女の涙を見て、安心する自分は本当に愚かだと思う。独占欲が強くて、大人らしさの欠片も無く、利己的な自分。それでも僕がいいと言ってくれる彼女に、今もただ甘えている。
「ごめんね、ごめんね月ちゃん。許して。」
「無理矢理された、けど、春水…さんだから、うっ、ぐすっ、抵抗しなかったのに、無防備とかいやらしいとか、言うしぃ…!」
「ご、ごめんよ。」
「檜佐木さんがぁ…しつこかっただけで私、ちゃんとぉ…ごめんなさいって断ったもん…!」
「そうだったね、ごめん、ごめんよ。」
「私が春水さんのこと好きって気持ち疑うな否定するな…ばかぁ!」
「月ちゃん…。」
バカバカと言われながら胸元を叩かれる。本当に、本当に僕は大馬鹿ものだ。こんなにも彼女は愛してくれているというのに、どうしてもっとその気持ちを素直に大切に出来ないんだ。
「ごめんよ。こんなおじさんだけど、もっと大人になるから。直すからそういうところ。」
「ずびっ…。無理ですよ直すの。」
「え、ええ!?」
「今まで直ったためしないし。おじさんだし。」
「…そ、そんなあ。」
「そんな子供みたいなおじさんの側にいてあげられるの、私くらいなんで。仕方ないから側にいてあげますよ。」
「月ちゃん…。」
「何度でも何度でも、ずっと、あなたの弱さを受け入れてあげますよ。」
「…!」
僕という存在は、月のおかげで成り立っている。隊長と囃し立てられ、多くの者達から頼られてはいるが、蓋を開ければただの人間なのだ。ただの一人の、弱い人間だ。
「ありがとう。ごめんね。ごめんね。大好きだよ、月ちゃん。」
「私も大好きですよ。」
「檜佐木君には僕から言っておく。」
「え、でも、内緒にしなきゃじゃ…。」
「内緒はもう終わり。もう誰にも手は出させない。最初からこうすれば良かったんだ。」
「どうなっても知らないですからねー。ロリコン。」
「あ、言うねえ〜!」
君のためなら、君といられるなら、この身、喜んで捧げよう。
女の情は如何にも無残
あけたる男に貸す耳も無し
いとし喉元光るのは
未練に濡れる糸白し
せめてこの手で斬って捨てよう
無様に絡む未練の糸を
此にて大詰