ヘリオトロープ*
おなまえ
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「他にも沢山意味はあるんだけどね、私が今伝えたい言葉は一つだけ。
_________永遠の愛」
私が小さな声でそう告げれば、目の前の左馬刻の目がゆっくりと見開かれるのがわかった。
「調べた時に、これしかないって思ったんだ。もちろん香水も好きな匂いだったからってのもあるけど…何より花言葉が、私の伝えたい気持ちに近かったから…」
ゆっくり、ゆっくりと。言葉を噛みしめるように自分の想いを彼へと伝える。
彼がどんな過去を抱えているかなんて知らないし、どんな葛藤と戦っているかも分からない。けれど、私はこの気持ちだけは伝えなきゃいけないと直感的に感じたのだ。
時々見せる彼の切なげに揺れた瞳が脳内に浮かび、いつか左馬刻の"持っている何か"を私が拭い去れたらいいなと、そう強く思いながら私は彼を真っ直ぐな眼で見つめた。
「左馬刻の仕事がどれだけ危険なものかも分かってるし、理解しているつもりだよ。……貴方が何かを抱えてるって事も。
……けど、私は一生左馬刻を愛し続けるって誓える。明日死のうが、これから100年生きようが、私はずっとずっと左馬刻の隣にいたい。
側で辛い事も悲しい事も、全部共有し合いたい。私が左馬刻の一番の理解者になってあげたいって思ったの。………それくらい好きなんだよ。
だから……いつか別れろって言われても、もう絶対離れてあげないから。覚悟しておいてよ?」
私はそう言い切ると、最後に悪戯っぽく歯を出して笑って見せる。
そして彼の華奢に見えて大きな背中に手を回して、目線を合わせながら額をコツンと合わせた。
「……っはは」
それから暫くの沈黙。何だか気まずくなり、私が彼の名を呼ぼうとすれば、それを遮るように上から左馬刻の笑い声が被さった。
今度は私が驚いて目を丸くしながら左馬刻の方を見れば、心底楽しそうに、けれど心底幸せそうに笑みを浮かべた彼が確かにそこにいたのだ。
「…左馬刻、何?急に笑って…」
「この俺にそこまで言う女なんて、地球上にお前くらいしかいねーわ」
「そこまで…?私変な事言ったかな?」
「おい、今言ったばっかだろーが。………まぁ安心しろや。今更、お前を手放す気はさらさらねぇよ」
真っ白な歯を剥き出しにしてルビーの瞳を瞼の中に隠した彼の表情は、まるで少年に戻ったかの様に無邪気に見えて。
その顔と左馬刻から貰った言葉が嬉しくて、思わず私も口元に弧を描けば、目の前の彼の唇がゆっくりと文字を象った。
「………ありがとな、杏子」
その言葉は左馬刻とは思えないほどに落ち着いていて、その上愛しさを含んだ優しい声色に包まれていた。
ゆっくりと彼と視線を絡めれば、もう先程の様な切なげに揺れる瞳はすっかり消えていて。
むしろ、大切なものを見つめる様な慈愛に満ち溢れた瞳が左馬刻らしくなくて、何だか照れ臭くなった私は思わず視線を外した。
…だっていつもはめっちゃ邪険に扱ってきて、女の私にだって平気で暴言吐くしクソボケとか言うし、目つき悪くて、すぐ怒って、喧嘩も多くて、その度私の事泣かしまくって…。
………___________けど、そんな所も含めて全部好きなんだ。
もう一度左馬刻の方を見つめれば、何だかいい雰囲気になり彼が肩に顔を埋めてくる。
__その瞬間。私は最後にもう一つ考えていた計画を思い出し、「ちょっと待って!」と彼を自分から引っぺ剥がした。
「…チッ、今いい雰囲気だっただろーが。相変わらず空気読めねェ女だな」
するとみるみる彼の眉間には皺がより、分かりやすく不機嫌になってしまう左馬刻。
まぁまぁ、待ちなさい。最後の計画がまだなんだ。
私は近くに置いていた自身のバッグから先に買っていたヘリオトロープの香水の瓶を取り出し、軽く手首に振りかけるとそのまま耳朶にもつける。
その瞬間。ふわりと甘い香りが鼻を掠め、それだけで幸せな気分になってくる。
すっかりヘリオトロープの匂いに包まれた私が左馬刻の目の前に戻れば、彼は不思議そうに小首を傾げた。
「それ、今つける意味あんのか?」
「どう?いい匂いでしょ?」
「クソ甘ったるいな」
そう言って少しだけ口元を歪ませた左馬刻がヘリオトロープの香水の瓶に視線を向けた瞬間____________私は彼の首に手を回し、そのまま自ら床へ倒れこむ。
当然いきなり引き寄せられた左馬刻は体制を崩し、まるで私を押し倒したかの様に上に覆い被さって来た。
「っ、急になにしやがん…」
「ヘリオトロープの花言葉にはね、まだまだ意味があるんだよ」
私の顔の横に手をつき辛うじて体を支える事が出来た左馬刻が抗議しようと睨みつけきたのを無視して、私は口元を緩めたまま言葉を紡いだ。
「………その意味の一つはね、
……甘い、誘惑」
小さな囁き声でそう言うと、私は左馬刻の首を更に引き寄せて、そっとその柔らかな唇にキスをする。
久々に感じたその体温に、身体中が熱で浮かされた様に熱くなった。
ゆっくりと唇を離して見上げた左馬刻の表情はもう先程とは別人で。
ギラついた様に光る赤い瞳から漏れるのは、紛れも無い欲情の色だ。
「…それは当然、煽られてんだよな?」
「……ふふ。最後のプレゼントは私、なんて_______んむっ、」
ニヒルな笑みを浮かべながら熱っぽい瞳でこちらを見つめる左馬刻に、私が照れ隠しでおちゃらけた返答を返そうとすれば、その言葉は噛みつく様に降ってきたキスのせいで喉の奥へ流れ込んでしまった。
*END
Happy birthday 左馬刻様!!!!!!大遅刻すみません…(;_;)
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*後日談*
「杏子さん。左馬刻へのサプライズは上手くいきましたか?」
「入間さん…!はい、無事成功しました!ご協力ありがとうございました」
「それは良かった。…実は誕生日の日貴方に会えないと分かった時の左馬刻は、随分荒れていて大変だったんですよ」
「そ、そうだったんですか?…でも今更誕生日に会えないくらいで悲しまないって言ってたんですけど…」
「まさか。強がりですよ。その証拠にその日私達と出掛けていても、常に携帯をチェックしては舌打ちしてましたからねえ。…いつもより溜息も多かった上にイラついていたので、随分寂しかったんでしょう」
「へ、へぇ〜…あの左馬刻が…!ちょっと嬉しいかも…」
「…おいウサポリ公、テメェ何勝手な事抜かしてやがんだ」
「おっと、…本人が来てしまったようですね。では私はこれで失礼しますよ」
「〜〜こんのっ、待てやクソボケ!!!」
「ふふ………。おめでとう左馬刻、大好きだよ」
*お終い*
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