Me with a passionate kiss
おなまえ
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それからと言うものの、私の作戦は尽く失敗に終わった。
リップを大量に塗って、思わずキスしたくなる唇を目指したが「先程より、唇テカってませんか?」って言われちゃうし、一緒にソファに座った時それとなく体を寄せて肩をくっつけてみたが、何も反応はなし。
挙句の果てには眠たいフリをして狸寝入り作戦を試みたが「ここでは風邪を引くので、ベッドで寝なさい」なんて起こされちゃうし。
しかも最後の作戦のせいで眠たいと思われてしまい、寝室に通されてしまう始末だ。
「大丈夫」と何度言い張っても、入間さんはもう遅いですから、と困った表情で首を振るだけだった。
……やっぱり、入間さんは私とキスしたくないのかな。こんなにアピールしてるのに…。
寝室のベッドに座り込んで、私はそんな事を考えながら大きく溜息を吐く。
入間さんは毛布を探しに、違う部屋へ行ってしまった。
付き合って4ヶ月半______キスをしたのは、もう半月も前の一回のみ。
それからはあんまり会えなくて、メールでのやり取りしか出来なかった。
それがもどかしくて、もっと彼に触れて欲しくて、無理やり補導されるような事をした。
だけど、こんなに会いたいって、触れたいって思っているのは、私だけなのだろうか。
……本当は入間さんはそこまで私の事を想っていないのではないか。
考えれば考えるほど悪い方に思考回路が傾いてしまい、どんどん胸中が不安やもどかしさで支配されていく。
必死になっている自分が何だか滑稽に見えて、思わず涙が出そうになる。
しかしそれを堪えるように強く唇を噛み締めると、私は最後の望みに懸ける事にした。
_________最後の作戦だ。
「お待たせしてしまいましたね。…寒いですから毛布どうぞ」
そう言って暖かそうな毛布を片手に、入間さんが寝室へと入ってくる。
柔らかな笑顔を浮かべながらこちらに近づき、私の前まで来た瞬間_____私は思い切り彼の腕を掴み、自分の方へと引き寄せた。
「っ……!」
と、同時に彼の手から毛布が滑り落ち、音もなく床に叩きつけられる。
しかし私はそんな事御構い無しで、入間さんの目を切なげに揺れる瞳で見つめた。
当然入間さんはいきなりの私の行動に、戸惑ったかのような表情を浮かべていて。
彼の形の良い唇から自分の名前が紡がれようとした時、私はそれを遮るように口を開けた。
「……じゅ、銃兎、さん……キスして、下さい」
あんなに心の中で何度も練習したのに、実際出した声は情けなくも震えていて。
恥ずかしさのあまり語尾は小さくなり、頬もどんどん上気していくのが分かる。体が熱い。入間さんに触れている手が熱い。
けれど、もうなりふり構っていられない。
入間さんに、_______…銃兎さんに、触れたい。
その一心で、私は入間さんへ縋り付くような視線を向ける。その時の私の表情は分からない。けれど、さぞかし酷い顔だったと思う。
彼へのもどかしさと愛しさと、不安が入り混ざってちゃんと笑えていたのかも分からなかった。
暫しの沈黙が二人の間に流れる。
入間さんの表情は見えない。
もしかして、引かれたのだろうか。
また、失敗に終わるのだろうか。
そんな事が頭に浮かび、自然と視線が下へと向かったその時。
「……人が折角抑えてやってたってのに」
…ぼそり。低く呻くようなくぐもった声が目の前で聞こえ、私は反射的に顔を上げる。
その瞬間_____目の前の入間さんと目が合い、思わず胸がどきりと跳ねる。
_____何故か?
前髪の隙間から見えた瞳が、まるで獲物に狙いを定めたギラつく獣のような色を見せていたからだ。
入間さんの名前を呼ぶ暇もなく、後頭部を荒々しく引き寄せられて唇が重なる。
久々に感じるその体温が愛しくて、頭が熱で浮かされたように熱くなっていく。
唇から漏れた熱が体全体を支配するように流れていくものだから、私はその熱を逃さまいと唇を少しだけ強く押し付けた。
半月ぶりの入間さんの唇は、変わらず柔らかくてスベスベで……やっぱり好きだ。
やっとキスをしてもらえた喜びで、思わず余裕ぶった事を考えてしまう。
…これで私の目的も果たされたし、今夜は安心して寝れそうだ。
暫くの間。
唇を押し付け合うだけのキスを続けていたが、私がふと離れようと体を動かそうとした時____後頭部を押さえつけている入間さんの腕に更に力がこもった。
その行動の意図が分からず、一瞬体を固まらせると、自身の瞳にゆっくりと唇を離した入間さんが至近距離で映り込んだ。
その表情には確かに欲情の色が見え隠れしており、少しだけ息を荒げた入間さんが眉を潜めながら口を開けた。
「……おい、口開けろ」
「………え?」
低い声で命令するかのように囁いた入間さんの言葉に、私は一瞬理解が遅れて小さく声を漏らす。
しかし気付けばまたもや唇を押し付けられており、私の心拍数がこの上なく上昇していくのが分かった。
…い、いや嬉しいんだけど……!急にどうしたんだろう…!?こんな本能的な人だったっけ!?!?
心の中でそう思いながらも彼からのキスを受け入れていると、少し開けていた唇から何か生温かいモノが侵入し、思わずびくりと肩が揺れる。
____それが彼の舌だと気付くのには、数秒かかったけれど。
えっ!?し、舌!?いきなり舌!?
こ、これってでぃーぷきす、とかいうやつじゃないの!?
待って待って待って、私したことない!!上手くできないけど急に何これ
あまりの急展開に思考が追いつかず、混乱しながらも私は素直にそれを受け入れる。
すると彼の舌は器用に私の口内を這い回り、私の舌を探し当てると、それを自身の舌と絡ませた。
「っ……!っふっ、…!」
と、同時に漏れる私の声が耳に痛くて、今すぐ塞ぎたい。けれどそんな事が出来るはずもなく、私は全てを入間さんへ委ねるように背中に手を回した。
私、上手く出来ないけど、本当に大丈夫かな……?
下手くそって思われないかな…。
けれどそんな事を考えているうちに、彼に吸い付かれるように舌を絡め取られ上手く息が出来なくなる。
私の体は酸素を求め必死に口を開こうとするが、逆にその瞬間にまた舌を差し込まれ彼に良いように翻弄される。
「ん....っ、...、んん!?」
すると不意に上顎をなぞるように舌を這わされ、私の体は電流が走ったように跳ねる。その後、歯列も同じ様になぞられ、私の背中はぞくぞくと震えた。
____やばい、なにもかんがえられない。
私はそのキスに身を任せながら、ぼんやりとそう考えて彼の服の裾を握る事しか出来ない。
入間さんは散々私を振り回した後、私の口の端から漏れた唾液をすくい取る様に舐めると、最後に私の上唇を軽く噛んでその唇はゆっくりと離れた。
すると酸欠状態だった私の口内に一気に流れ込んでくる酸素。
「っは、はぁ……、はぁ……!」
私は必死にそれを取り込もうと、胸を押さえながら大きく息を吸うのを繰り返す。
数秒もすれば元の息遣いが戻り、私の呼吸もだいぶ落ち着きを取り戻した。
「ちょっと、急に……ハードル高いですよ…!」
「は?____元はと言えばお前が煽ったんだろうが」
涙目のまま彼を上目遣いに睨み付けるが、それに負けず劣らずの鋭い眼光に捕らえられ思わず目を逸らしてしまう。
素に戻った入間さんはタチが悪いったらありゃしないよ…。
まぁ、そっちの方が気を使われていない気がして嬉しいっちゃ嬉しいんだけど……。
「と、とにかく!次は一言お願いします!」
「ったく。つくづく面倒な女だな、お前は」
「面倒っ…!?それが恋人に言う事ですか!」
彼の背中に手を回したまま、至近距離で文句を言えば、目の前の入間さんは呆れたような表情で息を吐く。
それにまた反論すれば、今度は「うるせぇな」と思い切り額を叩かれた。
地味に来る痛みに涙目で額を抑えながら睨みつければ、目の前の入間さんの表情がまた雄めいた色を見せたのに気づき、思わず発しかけた言葉を飲み込む。
「…その表情、結構そそりますね」
「はぁ〜!?どこにそんな要素が!?」
「涙目で反抗的な目向けられると、虐めたくなるんですよ。今の貴方みたいに」
丁寧口調に戻った入間さんが爽やか笑顔を向けて来るが、発言が発言なので素直に受け取ることが出来ない。
発言だけ聞いたら、ただの最低野郎じゃねぇか。
しかし入間さんの瞳に宿った色欲の色は消えることなく、むしろだんだん色濃くなっているように見え、背中にぞくりと何かが走ると共に身の危険を感じる。
思わず後退りしかけた体を押さえつけるように、入間さんの華奢に見えて力強い腕が私の腰を抱いた。
____その瞬間。焦った私は体勢を崩してしまい、柔らかなベッドに仰向けに倒れこむ。
やばい。なんて思った頃には時すでに遅し。
目の前で極上のご馳走を見つけた獣が、ギラリとその綺麗な瞳を光らせながら私の上に乗っかって来る。
口元を緩めながら舌舐めずりするその姿にひどく艶美な魅力を感じ、私の体も興奮状態に陥っていく。体が熱くて、何もかもがドロドロに溶けてしまいそう。
…もう、この獣からは逃げられない。
「…散々俺の事を煽っといて、今更待ったは聞かねェからな。
__________覚悟しろよ。幸子」
「……お、お手柔らかに……」
初めて見せた彼の"雄"の姿に、私の心臓ははち切れんばかりに大きく脈打つ。
あれ?そう言えばキスをしてもらえれば良いって思ってただけなのに、…本当に大人の階段を上ることになるとは。
……みなさん、あんまり人を煽りすぎちゃダメですよ。じゃないと、食べられちゃうみたいだから。
ぼんやりとそんな事を考えながら目の前の入間さんの表情に見惚れていると、その端正な顔が近づいてきて、私はその身を委ねるようにゆっくりと瞳を閉じた。
……二人の夜は、まだまだ長くなりそう。
*END*
※R18へ続く※
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