Awakening
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
取り敢えずはこの晴天の空に似つかわしくない薄暗い路地裏から一刻も早く出ようと、私は光が見える出口へと歩みを進める。
時々辺りを見回して人がいないか確認したりもしたが、幸い人の声は近くには聞こえずひとまず胸を撫で下ろした。
「…よし、やっと通りに出たよ。そっちには何がある?」
「ん〜……、なんか都会っぽい。色んな高いビルがあるよ!」
路地裏から出てみれば、そこに広がるのは大きな海だった。
港のようなものもあり、上空には白いカモメが空を徘徊しながら鳴き声を上げていた。
ここ、どこだろう…。
少し考えてみるがこの場所に全く見覚えはないし検討すらつかないので、一旦思考を取りやめて和子にそちらに知っているものはないか問いかけてみる。
しかし和子の言い方からして、彼女も現在いる場所に覚えは一切無いようだ。「うーん」と小さく声を漏らす和子は何とか記憶の隅にでも情報が眠っていないか必死に思考を巡らせているようで。
私ももう一度辺りを見回しながら、少しでも知っているものがないか一つ一つの風景に目を光らせた。
それにしても和子は都会のような所にいるのか…。
って言うことは東京とかそこらへんの可能性が高いかも。
ふと頭にそんな事が過るが、私も和子も田舎生まれの田舎育ち。
都会なんて年に一度行くか行かないかくらいの程度だったので知識はほぼ無いに等しい。
…どうしたものか。
悩んでいても仕方がないので、私は息を大きく吸うと暫く止まっていた足をまた動かし始めた。
***
「……そっちには何か見えた?」
「うーん、港?みたいなのがあるよ。海も広い…けど、見覚えはないなぁ」
「港……?ここ一応日本なのは日本だよね?」
「日本…だと思う。さっきすれ違った人日本語だったし」
取り敢えず適当に街を散策しながら、私達は情報を随時共有し合う。
そんな事を続けながら数分くらい経ったが、一向に共通するようなものは辺りには見当たらない。もちろん見覚えのあるものも一切ない。
けれど電話で確かに和子と繋がっている事を実感するだけで、心強いし不思議と勇気が湧いてくる。
_____そして、それからまた数分が経った頃。
私は歩いている街に少し違和感を抱き出す。思わず立ち止まり、ゆっくりと辺りを眺めてみる。
人が私をどんどん追い抜き、追い越し、側を通り抜けて行く。たまに怪奇の視線を向けられたり、意味深に口角を上げた人達と目が合ってしまい慌てて視線を背けた。
しかし、突然________私は気づいてしまった。
先程から感じている違和感の正体。
私の側を歩いたり、道の端で座り込んでいる人、全て男性だ。
そこからまた数十メートルほど歩いてみたが、やはり何処に目を向けても女性の姿は見えない。
……なんで。女の人が一人もいないの?
同性がこの場にいないだけで、とてつもない不安感に襲われる。
私をチラチラと見る男性は、時々囁き声で笑い合っていたり分かりやすく指を刺したりしていて。
_____私の違和感は、確実なものとなった。
「……和子……、ここ、女の人が一人もいない……!」