Relation
おなまえ
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「はぁっーーー、…さむ……」
勢いよく家を飛び出してきたのは良いものの、前居た世界と同じなら今は11月。夜は尋常じゃなく冷え込み、とてもセーラー服一枚で出歩けるような空気ではなかった。しかし戻る場所も無いので取り敢えずはコンビニでも寄ろうかと擦り合わせている手に息を吐きながら早歩きになっていた足を通常スピードに戻す。
思い出すのは幻太郎のあの冷たい瞳。
何だろう、現実世界での二次創作のイラスト等であんな瞳をしていたのを見た時は興奮して私も蔑まれたいとか考えていたのに、いざ対面してみるとあんなに心臓が冷えるなんて。
やっぱり、心の何処かであの記憶が残ってるんだ。こびりついて、きっと、まだ取れていないんだ…
仕方ない。家がなくたって。まだ死ぬほどではないし、あの二人が番だったって事が確認できただけで満足。
大丈夫。大丈夫………
先程まで人と一緒にいたからか急に孤独感に襲われ夜道で一人、何だか泣きたくなってくる。
何でこんなに泣きそうなんだ。…きっと、さっき帝統達と一緒にいて、初めて人と触れ合って安心してたから…また一人になって寂しいんだ。
けど、仕方ない。あんなに幻太郎に嫌われてちゃこれから会うなんてこともう出来ないだろう…ああ、もっとちゃんと二人の姿目に焼き付けておけばよかった…
ふと夜空を見上げると沢山のビルの光で星は全く見えない。ああ、私の居た場所ではあんなに沢山綺麗に見えたのに。本当に違う場所に来ちゃったんだ。
明瞭でない意識で余所見をしていたからか私は前から歩いてきたカップルに気づけず、そのまま女の方の肩にぶつかってしまう。
「あ、すみませ…」
「ちょっと、ちゃんと前見て歩けよ!鬱陶しい」
「っわ、……」
慌てて謝罪しようと頭を下げようとすれば、女の方は心底イラついた様子で思い切り私の肩を突き飛ばす。当然体勢を崩した私はその場に転び、顔を上げた頃にはそのカップルの背中はもう遠くに行っていた。
都会の人…怖いな。
特に気にすることもなく立ち上がろうとすれば膝に微かな痛みが走り視線を向ければ、案の定コンクリートで擦った膝の皿の部分が切れて血が滲んでいた。
けど、絆創膏とかはさっき帝統に手当てした時に全て使ってしまったからもうない。
「あちゃー…」
その傷を指でなぞりながら割と明るめの声を出してみるも、その声はこの大都会の空気に溶け込んで何だか虚しくなってくる。
膝の傷と相まってまたもや泣きそうになってしまっていると_____ふと誰かに腕を掴まれ、私の体は一瞬宙に浮く。何事かと考える余裕もなく、聞き慣れた声が頭上で大きく響いた。
「…おい!待てって言ったじゃねーか!」
「……だ、…有栖川さん」
危ない。ついいつもの癖で名前で呼びそうになるのを慌てて頭の中でシフトチェンジする。
帝統はここまで走って来てくれたのか息が切れており、額には薄っすらと汗が滲んでいるのが見受けられた。
何で、こんな私のために来てくれるの。
何で………
「お前行くとこねーんだろ?じゃあもっかい頼みに行こうぜ。何回でも。俺も一緒に頼んでやるからよ」
「…、無理です、あんなに嫌われてて…何言っても…」
「…………」
あの瞳を思い出し、酷く体が震える感覚にまた陥る。怖いんだ、だって。
言葉が続かなくなった私を帝統は暫く黙り込んで見ていたかと思うと、ふと何かを思いついたように顔を上げた。
「…じゃあ、俺に良い提案がある!だから行くぞ、ほら!」
「っえ…!?」
にぱ、という効果音がつきそうな笑顔で笑ったかと思うと私の腕を引いて立ち上がらせる。
未だに呆然としている私を無視し、そのまま腕を掴まれたまま来た道を戻り出した。
う、腕……!腕掴まれてるんだけど!え、何このきゅんポイント。夢女じゃないのにこの胸キュンは何…!だめ、帝統は幻太郎の番なんだから!でも……本当にそゆとこだぞ帝統〜〜〜!!!!!!!
掴まれた腕の部分が熱を持ったようにジンジンと熱くなっていくのには、気づかないふりをした。
「…また戻って来たんですか」
「ああ、これからのコイツの運命は賽を振って決めようと思ってよ」