Relation
おなまえ
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「成る程…、おおよその話は理解しました」
「さっすが幻太郎!話が早くて助かるわー」
「………」
状況が理解できずにただただ黙り込んでいる私の隣でどんどん話は進んでいく。
え、ちょっと待って。どういう状況?私が?ここに?幻太郎の家に…?え、じゃあどこでセッ((するのよ。はぁ?私超邪魔じゃん。
しかもよりによって何で攻めの帝統が言ってんのよ幻太郎拗ねるぞ。やめとけ。
ああ、でも毎晩のように盛って激しいセッ((をする二人を見つめるモブにもなりたい…!ああ何この複雑な心境……!
そんな事をぐるぐると頭で考えながら、二人のやり取りを見つめていると、不意に幻太郎の強めの口調で言い放った言葉が耳に響いた。
「では単刀直入に言わせて貰いますが…お断りします」
「………はぁ!?何でだよ!」
あ、ですよねー。やっぱり二人だけの空間こんな身元不明のモブキャラに邪魔されたくないですよね。分かるよ。大丈夫。
元々そんなつもりもなかったし大体自分の妄想の想定内だったからなのか、頭では幻太郎の言葉をしっかりと受け入れられている自分がいる。しかし対照的に帝統はそれが納得できないのか、幻太郎の発言に胡座をかいていた体勢を崩し大声で噛み付いた。
「何で…と言われましても、急にそんな身元も分からない女性を置くことなんて出来ませんよ。しかも見るからに学生でしょう」
「だからっ、そこを何とか…な、頼むよ!」
「だから、無理だと言っているでしょう。帝統はチームメイトだからまだしも…家はそんなホイホイ人を受け入れる場所ではありません」
「ぐ、そうかもしんねーけどよぉ……じゃ、じゃあ、……一ヶ月!一ヶ月だけでもいい、人助けだと思って!」
ヤイヤイと言い合いを始める二人。私は傍観者としてその光景をぼんやりと眺める事しか出来ない。でも幻太郎の言うことは分かる。そんな見ず知らずの人をいきなり家に置くなんて、普通出来ないよね。ここは帝統の家じゃない、幻太郎の家なんだから。私だったら多分出来ないし……
「だから無理だと…」
「っだぁーー!!!このとーり!…ほら、お前も頭下げろって!お前の為なんだからな!?」
「はっ、はい!?…えと、あの、お願い、します……?」
頑なに断り続ける幻太郎に為す術がなくなった帝統は、最後の切り札と言わんばかりに勢いよく彼の前に頭を下げてその体を差し出す。なんで、そこまでしてくれるのだ。私に借りがあるからって…そんな事する理由なんてないのに。
なんて事を考えていると不意に隣にいた帝統に腕を引っ張られたかと思うと、彼の手はそのまま私の後頭部へと移動し無理やり頭を下げさせられる。チラリと横目で帝統を見れば、必死な顔をしながら顎で幻太郎を指す。未だにしっかりと状況が理解出来ていないが、取り敢えず私も彼と同じように深々と頭を下げ頼み込んだ。
こんなんで絶対OK貰えないじゃん…もう、無理だよ。野宿するよ…
「嫌です」
「っがあーーー!!!」
…ほらね。二人の決死の土下座も虚しく、頼みは結局早々に却下される。悔しげに頭を掻きむしりながら後ろへと倒れる帝統に、私もゆっくりと顔を上げる。するとやはり帝統に向ける視線とは違う冷徹な色を含んだ翠色と目が合った。
どきり、心臓が嫌な音を立てる。
まるで、あの人と同じような瞳だ。
背筋が冷たくなっていくのを悟られないようにへらりと下手くそな笑顔を貼り付けると、その瞳が薄っすらと細められた。
「…それに、女性ですよ?このご時世、女性が何を考えているか分かりませんからね。もしかしたら帝統を唆してここに来させてたのも、全て彼女の罠だと言う可能性も捨てきれませんし」
「っ、そ…」
「なっ…コイツはそんなんじゃねーよ!」
「何故そう言い切れるんですか?小生達は腐ってもあの飴村乱数率いるチーム〝FIing Posse〟のメンバーですから。いつ何処で誰に狙われるかなんて分からないんですよ。
まぁ、取り敢えず話はお終いです。……悪いが早急にお引き取り願おうか」
あまりの言われように流石の私も弁解しようと口を開くが、その声は庇ってくれる帝統の大きな声でかき消されてしまう。ありがとう。こんな私を庇ってくれて…
しかし幻太郎の正論は止まらずペラペラと言葉を並べられて口を挟む余裕もない。気づけば、幻太郎に鋭い目つきで睨まれ手で玄関の方角を示されていた。
侮蔑するような、心底不快そうな……
その瞳があまりにもあの人に似ていて、私の喉は一瞬呼吸を忘れる。
鼓動が大きく脈打つのが頭の中で響く。
_____ああ、だめだ。
『お前、なんで生まれてきたの?』
だめだ、だめだ。
「っ、幻太郎!お前なぁーーー」
「…、良いんです。ごもっともな事ですから…有栖川さんもこんな事させて、ごめんなさい。…私帰ります。夜分にお邪魔して申し訳ありませんでした」
「お、おい!待てよ、和子!」
「失礼します」
今彼の瞳と目が合ってしまったら、私は克服出来つつあるあのトラウマをまた掘り返してしまう。今度こそ、一生残る傷になってしまう。
そう思った私は早急にここを立ち去ろうと、二人に頭を下げた後帝統の止める声も無視して家を飛び出した。