Relation
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
…何故、今私は知らない人の家の前に立っているのですか…
チラリと隣を盗み見れば機嫌良さげに鼻歌を歌っている帝統が目に映り、私の不安や心配は更に高まっていく。
え?なんかさっき「よし。分かった!じゃあ、俺に着いて来い!」って自信ありげに言われて取り敢えず着いてきたのはいいものの…これ、大丈夫?普通に帝統だからって安心して着いてきたけど、帝統の知り合いの家ってなんか怖そうな人しか浮かばないんだけど…え、無理。そんな事なったら私絶対失神する。
今からでも断るべき?でも断ったところで行くところないから野宿だし…それなら家にいさせて貰った方が…え、でも怖い人と一晩過ごすの?普通に無理だよそんな耐性ないよ。
「有栖川さ…えと、大丈夫ですか…」
「ん?ああ、大丈夫だって!ちょっと変なとこあるけど、超良い奴だからよ!」
襲ってくる恐怖や心配に怯えながら恐る恐る質問を投げかけると、そんな言葉を跳ね返すようにあっけらかんとした彼の声が耳に入り、ますます心配になってくる。
へ、変…!?変ってやっぱり……や、ヤ●ザとか!?そゆこと?え、無理だ終わった私の人生。花子…ごめんよ…
「ほら、じゃあ入ろうぜ!」
「ひぇ…!?っ、え、ああ…、待ってくださ…」
「よー幻太郎!邪魔するぜ!」
「……え?」
まだ心の準備が出来ていないうちに帝統が先に玄関へと入っていってしまい、私も慌ててその後を追う。しかし玄関に足を踏み入れた先で彼が発した言葉を聞いた瞬間、私は素っ頓狂な声を漏らすと共にその場に立ち尽くした。
だって、いま、幻太郎って…
私の聞き間違いだろうか、いや、そんなわけが……
ってことは、ここって………
私が答えを出すよりも一歩早く奥から物音が聞こえたと思うと、襖がゆっくりと開いてそこから誰かの姿が現れる。
その人物が瞳に映った途端、私は声を上げるのも忘れて暫くその場で動くことすら出来なかった。
「おやおや帝統。今日はお客さんもご一緒ですか?」
耳に入りやすい高めで優しさを含んだ中に色気を纏う声。
すらりとした体型に似合っている和服。
触ったらきっとふわふわとしているのだろう手入れされた綺麗な茶髪と美しくも儚く見える白い肌。
間違いない。…帝統の永遠の番・幻太郎だ。
生で見る幻太郎はやはり画面越しよりも幾分も綺麗で。その美しさに堪らず目を奪われ、暫くの間見惚れるように彼から視線が離せなかった。
「ちょっと今日はお前に頼みがあってよー」
「…はぁ、やれやれ。またお金を集りに来たんですか」
「き、今日はちげーよ!人聞き悪りぃな!」
「あら、貴方がこれまで金銭目的以外で家に来たことなんてありましたっけ?」
「ぐっ…、そ、それは」
打ち合わせをしたのかと質問したくなる程二人の掛け合いはとても自然で、見ていて心地いい。幻太郎に涼しい顔で図星を突かれぐうの音もでない帝統が、もう、とても私の理想の帝幻で…、……とにかくやばいの一言しか出てこない。尊すぎて無理みが強い。
夢見たいだ。こんな…画面越しで充分満足していた二人の会話を生で見られるなんて…もう私死んでもいいんだけど。今すぐに連絡したい。てかめっちゃ話したい。
「妾はいつも帝統の帰りを心待ちにしていると言うのに…貴方はすぐに居なくなってしまう故、貴方が居ない間妾は毎晩枕を濡らしているのですよ」
「また、テメェは…、くだらねぇ嘘ついてんじゃねーよ!」
「あら、バレました?貴方もなかなか嘘を見抜けるようになって来てしまいましたね…残念です」
今度は先程よりワントーン高くまるで女性のような声を出しながら、幻太郎は着ている和服の裾で涙を拭くようなジェスチャーをする。しかしそんな攻撃はもう彼に効かないのか、若干怒り気味の帝統が怪訝な表情を浮かべて幻太郎に向かって疑い深い視線を向けた。
その瞬間、思わず私の喉からは小さく「ひぇ…」と尊さを隠しきれない情けない声が漏れる。これでも抑えた方だ。普通だったら銃兎もびっくりと大声で雄叫びあげてるとこだから。
…え、無理……まじ昇天する…神様、こんな贅沢をもらってもよろしいのでしょうか。
そんな楽しげに展開される会話を心の中で拝みながら、その風景を目に焼き付けていると、不意に帝統に笑顔を向けていた幻太郎の瞳がこちらに動いたのが分かった。あまりにも鋭く光った視線に少しだけ胸がどきりと跳ね上がるのが分かる。帝統に向ける視線とは明らかに違う。
「…で、帝統。そちらの方はどういう要件でお越しなのか、教えて頂けます?」
「ああ、そうだそうだ!幻太郎に頼みてぇことは_____」
え、何を言い出すの!?いきなり私の方を指差しながら話し出すものだから、私は何も理解できずに黙り込む事しかできない。しかしそんな私を完全に無視して帝統はいつも通りの軽い口調でとんでもない事を言い放った。
「暫くコイツをここに置いてやってくんねーか?」