Relation
おなまえ
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「…ん、これでよし」
「おー…まともに怪我手当てしてもらったの久々だわ」
「お大事にしてくださいね、大切な体なんですから…」
…幻太郎のね。
そんな本音を言葉の裏に隠しながら、手当てされた腕を見て感嘆の声を漏らす彼に向かって微笑んで見せる。
すると帝統は「おう」と無邪気に白い歯を見せて笑いながら私の手に優しく手を置いた。
「サンキューな!和子」
「っ…、い、いいえ…」
その自然すぎる手つきと名前呼びに耐性のない私は、すぐに胸が大きく高鳴って頬を赤く染めてしまう。
駄目だ、帝統は幻太郎の彼氏なのに…!私みたいな下劣な女子が軽々しく触れてはいけない神聖な人なのに…!
けど、これはずるい。無自覚たらしすぎでしょ。これで今まで何人の女を落としてきたのか…
けどまぁ帝統が唯一愛してるのは幻太郎だけなんだけどね!!!!!?
取り敢えず妄想を高ぶらせてどうにかこの胸キュンから気をそらしたが危ねぇ。油断してたら確実に心持ってかれる…
ん"ん"…やっぱヒプマイキャラ最高………
キャラへの愛を再確認していると、不意に目線を私の服に向けた帝統が焦ったように声を荒げた。
「つーか、お前よく見たら制服じゃねぇか!学生かよ!?」
「え?…はい、高校生ですけど……」
てか逆に何故今まで気づかなかった。ふっつーにセーラー服着てるんだが。興味がなかったのか、私の顔が老けすぎてコスプラだと思われたのかの二択かな。
あまりにも驚いたような表情を見せるので、そんなに意外だったのかと内心落ち込んでいると、帝統は気まずそうに視線を逸らしながら頭をがしがしと掻いた。
「あー…なんか、悪りぃな。学生にこんな事させちまって」
「え?……あ、それは全然いいですよ、困っている人を助けるのは当たり前ですから」
まぁ、あの時の貴方の視線があまりに受けすぎて、可愛すぎて放っておけなかったの本音だけど。ていうかあの帝統も申し訳なさを感じる頭があるんだな…てっきり貰えるものは誰からでも貰っとけ精神だと思ってたけど。
何気に失礼な事を考えているのは百も承知だが仕方ない。ドラマCDとか色々見るからにそういう性格にか見えなかったし、あんまり情報の出てないあの作品から本当の性格なんて読み取れなかったし…
罪悪感を感じているのだろうか、少し罰の悪そうな顔をしている彼を安心させるべく、私は大きく首を振りながら穏やかな笑みを浮かべる。
そんな私を見て、帝統も小さな息を漏らして引き締めていた口元を緩めた。
「そういや、お前どの辺住んでんだ?礼っつーのもなんだけど、近くまで送ってってやるよ」
「…え、」
どきり、と大きく心臓が脈打つ。きっと帝統からしたら何気なく聞いた一言だったのだろうが、私には心を揺さぶる重い一言だった。
帰る場所と言ってもその家がこの世界にない私は、これからどうやって生きていけばいいのだろう。
なんて返事したらいいのか分からず暫く体を強張らせて黙り込んでいると、不審に思った帝統が首を傾げながら顔を覗き込んできた。
「おい、大丈夫かよ」
「…っ、はい、大丈夫です……」
「…?お前、顔真っ青だけど本当に大丈夫か?」
声をかけられて我に帰った私が下手くそな笑顔を貼り付けると、異変を感じ取った帝統が更に眉を寄せて怪訝な表情を浮かべる。
どうしよう、何か言わなきゃ、
変な人だって、思われる。
のに、口が上手く回らない_____
花子と離れてしまった孤独感とこの世界に居場所がないという喪失感。全てが相まって私の体を支配していく。…息が上手くできない。その上震えだした体を何とか抑えようと腕を摩りながら大きく深呼吸を繰り返しても、その恐怖から逃れられるはずがなく…
とにかく、誰かに縋りたかった。
それが大好きなキャラクターだろうがその辺にいる沢山の人間だろうがどちらでもいい。
とにかくこの不安から早く解き放たれたい一心で、私は彼に懇願するような瞳を向けた。
「………、助けて、ください…」
絞り出すように出された声は情けなくも震えていて、けれどそれが今私のできる精一杯だった。