Relation
おなまえ
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そこからの展開は早かった。
武力での争いが無くなった代わりに、ヒプノシスマイクという特殊なマイクを使って男達がテリトリーバトルをしていること。
男性よる支配がなくなり、代わりに女性が上に立つ世界であること。
…そして、中央区以外を囲んだ四つのディビジョンが代表となってそれぞれチームを組んでいること。
私の話す事を、目の前の男はつまらなそうな表情を見せながらも全て肯定していく。
やっぱり…本当にヒプノシスマイクの世界に来ちゃったんだ。
まだ夢みたいに頭がふわふわとぐらついているが、もう受け入れるしか道が無いので取り敢えず一人でもキャラクターと関われた事がむしろラッキーなんだとポジティブに考えることにした。
だってマジであの帝統と話してんだよ…?マジすごく無い!?マジこのまま召されても悔いないレベルだよ。コスプレイヤーさんと勘違いして関わってみてよかった…神に感謝ね。
「…てかよー、さっきから何でそんな当たり前の事ばっか聞いてくんだ?」
「………それは、」
私の質問を聞いているうちに疑問に思ったのであろう。次々に言葉を並べる私を遮るようにして、帝統が核心をつくような発言を零す。
どきりと胸が軋む音が聞こえると共に私は一瞬言葉に詰まった。
…きっとこの世界にいる人間だったら、聞くまでも無い質問。
だけれど生憎私はこの世界の人間では無い。
むしろ帝統達を画面越しで眺めて応援するだけの…ただそんな存在だったのに。
本当のことを言うべきか?けれどもしそれで気味悪がられたら?…信じてもらえなかったら…
多少のリスクは被る選択なので慎重に行かなければならない。
「…ま、別に言いたくねぇなら言わなくていいんだけどよ」
「……、っあ、」
どうするべきかと悩んでいれば自然と長い間口を閉じていたようで、そんな私を見た帝統は特に深く掘り下げて来るわけでもなく割と淡白ですぐにその話題から手を引く。
他人にそれほど興味のないキャラだと思っていたからそんな反応は予想通りだったけれど、何だか少し寂しさを感じてしまう。まぁでもそりゃそうか、私とはただ偶然さっき出会ったばかりの赤の他人同士なんだし。
伏せていた瞳をゆっくりと上げて彼の方を見てみると、ファミレス内が暖かったのであろうか上着を脱いで下の服も腕まくりしており、割と白くてけれどがっちりとした筋肉をつけた肌が布から顔を出していた。
途端にロックオンする私の眼。
やばいよ、この筋肉質な腕で毎晩幻太郎抱いてんでしょ?マジ鼻血モンなんですけど。見たいんですけど。普段は犬っぽくて愛らしい帝統が幻太郎の前だけで見せる飢えた狼のような表情…そんで幻太郎もそんな帝統がかっこよくてデレデレで甘々になるから、毎晩すっっっごい糖度高いセッしてるんだよね。はい分かります。お金積むから見せてくれよ。
つい荒くなりそうな息を必死に抑えながらも瞳孔をかっ開いて彼の身体を食い入るように見つめていると、ふと彼の肘から下膊にかけて大きめな傷口が痛々しく開いており、血の塊のようなものが出来ている。
そこにいち早く気づいた私は慌ててポケットに手を忍ばせ、常に携帯している救急セットポチ袋を取り出した。
あの帝統の綺麗な肌に傷が…!早く手当しなきゃ…!!!
「えと、…有栖川さん!ちょっと右腕貸してください!」
「あ?何だよ急に」
「いいから!傷口塞がないと…」
「は?…ああ、んなもんほっとけば治るって」
「駄目です!痕になったらどうするんですか、早く腕こっち!」
名前をどう呼ぶか一瞬躊躇したが、やはりいきなり名前を呼び捨てで呼ぶのも失礼な気がしたので無難に「有栖川さん」を選ぶ。腕をこちらに託してほしいと帝統に向かって両手を伸ばすも、彼は特に傷を見ても気にすることなく優雅にフリードリンクを取りに行こうと腰を起こした。しかし私からしたらどうしても放ってほけない事案なので首を大きく振りながら強めの口調でそれを拒否し、遂には二人を隔てるテーブルから身を乗り出してしまった。
そんな私を見て帝統は一瞬面食らったように体を固まらせると、あまりの剣幕と有無を言わせない雰囲気にたじろいだのか、素直にその場に座り直す。
私はその行為に満足したように頬を緩ませると、従順に腕をこちらに渡してくれる帝統の肌に出来るだけ優しく腫れ物を扱うようにテキパキと、けれど丁寧に怪我の処置を施した。