Beginning
おなまえ
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「はぁ……」
あれから数時間ほど辺りを散策したのだが、何より街が広すぎて歩き疲れてしまった。
少し休憩でもしたいと考えたが街のカフェやレストランはどこもオシャレで、こんなボロいセーラー服を着た田舎娘がとてもじゃないけれど入れる雰囲気ではなく…
仕方なく私が目覚め時にいた路地裏に舞い戻ってきてしまった。別に此処には何もないんだけれど……
溜息を吐きながら空を見上げると、目覚めた時の気持ちいいくらいの快晴とは違い、何処からか現れた大きな白い雲がすっかり綺麗な水色を隠してしまっていた。
ただでさえブルーな私の気持ちが更に落胆し、頬をかすめた冷たい秋風に身を震わせていると______
________がしゃん、
「ん〜……、」
何処からか響いた大きな物音共に、男性の脱力した声が聞こえる。あまりに突然の出来事に驚き初めは体を固まらせて音のした方を見つめることしができなかったが、暫くすると徐々に心が落ち着きを取り戻し、私は意を決してその場所へと近づいてみることにした。
ゆっくり、ゆっくりと一歩一歩大地を踏みしめ
て音の鳴った方向へと近づけば、年季の入った大きなゴミ箱に寄りかかるようにして倒れている?眠っている?どちらかは分からないが恐らく意識のない人物がいるのが分かった。
首元が黒い毛で覆われた緑のコート。どこかで見覚えがあるような気がしたが、今の私にはそんな事を考える余裕があるはずもなく。
取り敢えずもし倒れていたら大変だと思い、警戒しながらもジリジリと迫るようその人影に近づいて、伺うように顔を覗いてみる。すると、その瞬間目に映ったものに私は一瞬目を疑った。
…なぜなら、
その人物の顔が、あの大好きなヒプノシスマイクの登場キャラクターである〝有栖川帝統〟にとても酷似していたからだ。
「は…っ、えぇっ…?」
信じられない光景に私は何度も目を擦りながら小さく声を漏らす。しかし目を開閉しても、頬を強く抓っても、目の前で気持ちよさそうに寝息を立てている人物の顔が変わることなんてなくて。そのせいでどんどん私の脳内は混乱していき、もしかして私は今夢か幻覚でも見ているのではないかなんて現実離れした考えまで浮かんでくる。…まぁまず知らない土地に来ている時点で現実離れしているのだけれども。
ていうか、これは何だ?…誰なんだ。帝統にめちゃめちゃそっくりな一般の人?いやそれならこんな服まで一緒なわけない。という事はとんでも無くクオリティの高いコスプレイヤーか…?いや、それしかあり得ない。
何故ならヒプノシスマイクという作品に登場するキャラクターはあくまで架空の存在。二次元のものである。そんな彼らが私の生きている世界に来るはずがないのだ。夢小説で度々目にするトリップとやらをしない限り。まぁそれもぜっっっったいにあり得ない話なのだが。
そう考えた途端、T●itterでも稀に見ないとてもクオリティの高いコスプレに私の気持ちはどんどんと高ぶっていくのを感じる。
だって、あまりにも似てるんだもの。美形なんだもの。結構コスプレ見るの好きで、色んなコスプレイヤーさんフォローしてるから分かる。こんなに神ったコスプレは初めて見た。凄い。今すぐ拡散したい…絶対バズる。
先程まで不安や恐怖に支配されていた心はすっかり解け、私は興奮しながら更に帝統のコスプレイヤーさん(?)に顔を近づけてまじまじと見つめてしまう。だって、凄いんだもん。やばいよこれ。
ただ目を閉じて眠っているだけなのに、本物の帝統を見ているような感覚に陥る。それくらい、彼に引き込まれてしまう。
何だか、こんな所でヒプノシスマイクのコスプレイヤーさん…ヒプノシスマイクを好きな人と出会えるなんて奇跡みたいだ。
すっかり心強くなった私は元気を取り戻し、取り敢えずに報告でもしようとその場から立ち上がろうとした瞬間________目の前のコスプレイヤーさん(?)の瞳がゆっくりと開くのが分かり、思わず私は動きを止めた。