Beginning
おなまえ
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「…和子。よく聞いて。私も今和子と同じ境遇みたいなの。私もさっき目が覚めて…そしたら見知らぬ町にいて、記憶も全くなくて…」
「嘘…!花子も?」
「そう…、だから和子一人じゃないから、安心してほしい」
彼女の口から飛び出したのは私と全く同じ状況に置かれているという告白で。
驚き半分、しかし花子も私と同じ状況だと考えると少し心強い気もした。
けれどやはり花子はとても強い。私なんてただただ混乱してパニックを起こしてたのに花子は冷静に物事を捉えて判断してる。きっと花子も怖いはずなのに…不安なはずなのに。
何だか自分の事しか考えていなかった事が酷く恥ずかしくて、私のために冷静でいてくれた花子に心底感謝し、そして尊敬して。
私も花子を支えてあげたい…、きっと知らない場所で一人ぼっちにされて、同じ気持ちでいる花子を…
「だからね、取り敢えず合流しない?…もしかしたら、遠い所にいるのかもしれないけど……会えたら絶対心強いと思うし!」
「も、もちろん!早く会いたい……!取り敢えず周りにある物を確認するために歩くね!」
そんな事をぼんやりと考えていると、不意に花子がナイスな提案をしてくれる。私は少しでも早く花子と合流したい一心で、それを半ば食い気味で承諾し、俄然やる気に満ちた私は早速周りを探索しようと立ち上がった。
花子も先程までの不安がっていた私がすっかり元気を取り戻した事に安心したのであろう、電話の向こう側で小さく溜息をついたのが分かった。
よーし、頑張って目印になる物見つけて早く花子と合流するぞ!
「ねぇ〜そっちには何がある?」
「えっとね、都会っぽいよ!大きなビルとか沢山ある!けど、東京とかの事は分からないからなぁ」
辺りをキョロキョロと見渡して街中を歩く私は周りの人からしたら大分不自然だろう。
街行く人がチラチラと不審げにこちらを見ていくのが分かるが、気にしないフリをしながら花子との情報共有を続けた。
あれから路地裏を抜けて道なりに沿って歩いているといつのまにか街中に出ており、しかもそこは大都会の街並み。大きなビルが何個も連なっておりお店もたくさんある_____何より人口も半端なく多い。
田舎生まれ田舎育ちの私でもここが大都会だという事は一目瞭然だった。
そんな私と比べて花子がいる場所はと言うと港…?カモメがたくさん飛んでるとの事で全くどこかも検討が付かない。まさか海外か!?とも思ったが周りの人が日本語だったらしくその線はきっぱりと否定されて安堵する。海外だったらどうやっても会えないからね…
それにしても、…ここって何か聞き覚えあるなぁ……?私の気のせいかな…
ゆっくりと視線を上げた先に大きく描かれた〝109〟の文字。
暫く凝視していたがこれといった記憶が浮かばないので諦めて違う場所を散策する事にした。
*
そして今。私は一人でこの街を散策中だ。
あれから掴んだ情報では花子の居る場所には女性がいないという事だった。先程までの私の様にパニックに陥る花子に今度は私が宥めるように穏やかな言葉をかければ花子も徐々に落ち着きを取り戻したけれどやはり同性がいないというのは凄く不安だろう。きっと私だったら泣いているに違いない。しかし多少取り乱しても自我を保てており、花子のメンタルの強さには改めて感心させられた。
そしてお互い充電が切れると元も子もないと考え、大きな手がかりが掴め次第連絡するという事で一旦電話を切った。
けれどさっきみたいに怖くない。だって、花子がいるから。
けど、早く合流しなきゃ…だって。男性ばかりの街なんて危ないよ…もし花子が襲われたりしたらやばいし…!!
沢山の男たちに囲まれて泣きわめく花子を想像してさーっと顔から血の気が引くのが分かった。
早く、一刻も早く合流しなきゃ…!
そして、今に至る。