ツイステッドワンダーランド
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乾燥した生温かな風が頬を撫でるサバナクロー寮へと、鏡を潜り抜けてやって来たユウは、これから自分の身に起こるであろうあれこれを勝手に想像して頭の中を沸騰させた。ぶわり、と紅潮した頬を隠すようにしてレオナの胸の中に顔を埋める。ぐりぐり、と逞しい胸板に額を擦り付けると、彼が付けているコロンの香りが鼻腔を擽ってきた。
ため息のように深く息を吐いたレオナが、機嫌良さそうに喉を震わせながら微笑う声がする。何やってんだ、と揶揄うように訊いてくる声にまぶされた甘露に、ずっと忙しなく動き続けている心臓がさらに締め付けられた。
「……なんでもない」
緊張で固くなった喉から声を振り絞る。ぎゅっ、と彼の胸元のシャツを握る指先は、僅かに震えていて、全身は煮えたぎるように熱いのに反してひんやりと冷たかった。どくん、どくん、と一回脈打つ度に大きな音を立てながら鼓動する心臓が、何かを話そうとして口を開こうとする度にせり上がってくるような気がしてならない。唇どころか、口の中まで乾燥しているのに、引き攣る喉の違和感をどうにかしたくて、唾を飲み込む真似事をする。
――あぁ……やっぱり無理。無理だよぉ……。
ぐるぐると回る思考の中、思い出すのは小学校高学年から中学生の頃にかけて流行った、ちょっとエッチな少女漫画の内容だ。お世辞にも大人とは言えない、まだまだ未熟な少女たちが、ちょっぴり過激な性描写にドキドキと胸を高鳴らせて読んでいた場面。ヒーロー役の男の子がヒロインの女の子の服を脱がしていき、暴いた身体を優しく手や舌で愛撫し、躰だけでなく心も繋いでいく。
少ないお小遣いを大事に貯め込んで買った漫画を、友達同士で回しあって、家でこっそり拝読する。いずれは自分達も経験するかもしれない、そんな甘い描写を目にしていた頃を思い出す。あの頃よりもさら、胸はふっくらと膨れて、体は大人の女性へと着々と変わっていっている。別に、特別早いわけではない。もう十六歳だ。大人とは言えないかもしれないが、子どもでもない。
大丈夫。きっと、大丈夫だから。
疾走する心臓に何度も言い聞かせるようにして宥めるけれど、落ち着く気配は見せてくれない。それどころか、とうとうレオナが寮の最上階に位置する寮長室へと辿り着いてしまったのと同時に、きゅっと心の臓が強張ってしまった。
初めては痛い、って聞いた。
一足早く乙女を卒業してしまった友人や、漫画の中のヒロインが言っていた言葉。……中には、思っていたよりも痛くなかったし血も出なかった、と豪語する猛者もいたのだが、どう考えても、あの狭い孔の中に男の性器が入るとは到底思えない。赤ん坊の通り道でもあり、多くの女性が姦通を経験しているのだから、己の隘路にだって雄根を迎え入れることはできるはずなのだ。だが、自身の指、一本すら入れたことも無ければ、タンポンと呼ばれる生理用品すら挿入したことの無かったユウにとってはにわかに信じがたい話である。
陽根の大きさは身長と比例する、と巷では言う。よく聞く有名な話だ。
眠れないほど恋しさを感じるほど大好きな相手の身長は裕に180を上回っており、日頃から良く鍛えられている体躯は一回り以上大きい。見たことが無くても、見なくても分かる。きっと、彼のソレは大きい。
痛いことはしたくない。誰だってそうだろう。本当に大丈夫かな、と手足を縮めている間に、体はレオナによってベッドの上へとゆっくり下ろされ靴を脱がされた。彼が普段使っている、大きなベッドの上。ふわ、っと香る大好きなレオナの匂いが鼻腔を擽ってきて、レオナがベッドに乗り上げてきた時に鳴った軋んだ音が、一気に周りの清々しい空気を甘く爛れたものへと変えていく。
「なに怯えてんだよ……。さっきみたいな顔してろ」
ちう、と額に口づけられ、鼻の頭に柔く歯を立てられる。さっき、って何。言葉を詰まらせながら訊けば、レオナは艶冶な笑みを口許に浮かべながら「エッチな顔」と囁いた。その声が、とても艶めかしくて、甘ったるくて、ユウの中に眠っていた欲情が一瞬にして呼び起こされた。
はっ、と思わず息を呑む前に、わなないた唇はレオナの唇によって塞がれてしまった。ちう、ちぅ、と大袈裟にリップ音を立てながらも、角度を変えながらゆっくりと口づけに深さを足していく。湿った唇同士を合わせていると、先程の官能的なキスで昂った劣情を刺激された。
自然と薄く開いた唇の隙間にレオナの舌が侵入してきて、ユウの小さな口咥内を我が物顔で蹂躙していく。踏み荒らすような乱暴な口づけにすら随喜を味わうようになったユウの身体は、レオナからのキスを懸命に受け止めていた。絡め取られた舌を差し伸ばせば、彼がじゅるる、と唾液を啜るのと一緒に舌を強く吸ってくる。ほんの少し強めに吸われた舌先は、その痛みにジンジンと甘い痺れを広げた。
唾液を注ぎ込まれて、淫らな水音を意図的に鳴らすようにして咥内を攪拌される。頭の中を直接掻き回されているような、そんな錯覚に陥ってしまったユウは、甘く淫らな口づけに強張った身体をどんどんと解きほぐされていった。
優しく頭を撫でてくれていた手が、首筋を辿って胸元へと下りていく。片手で器用にタイやワイシャツのボタンを外していく彼の手にさえ気が付かないまま、ユウはレオナの唇や舌を夢中で求めていた。粟玉を啄む小鳥のように男の舌先や唇を吸えば、仕返しとばかりにレオナは唇を貪ってくる。熟れた果実のように紅くなった唇を甘噛みされると、じわりと蜜部が潤むのを感じた。
「……っ、ふぅ、んっ、ぅ……」
髪の毛の隙間に挿し込まれた指先が、地肌を優しく擽ってくるのがとても気持ちが好い。うっとりと目尻を垂らしながら、その愛撫の心地に耽溺していると、暴かれた胸元を彼の掌に覆われた。大きくも無く、小さくも無く、平均的な膨らみの形や感触を確かめるように柔らかく揉みしだかれる。
胸の裡に寂しさを抱えながら離れていく唇を見送る。貪るように口を吸い続けていた男の唇が、首筋を辿り胸元に降りていく。胸の中を直接擽られるような愛撫に、ユウは身を捩らせながらもその光景を一心に見つめていた。
ベビーピンクのブラジャーの中におさまっている小さな膨らみを、レオナは満足気に見下ろしながら下着の上から揉み込んで形を変えていった。谷間に寄った柔肉に指先を沈めて、その弾力を確かめる。
「背中浮かせろ」
熱の籠った掠れた声に、思わず腰がわななく。キスだけでとっくに砕けてしまった腰を叱咤して、言われた通りに胸を突き出しながら背中を浮かせた。褥との間に僅かに空いた隙間に手がするりと滑り込んできて背中を支えられる。あっという間にブラジャーのホックを外されて、締め付けの緩くなった場所からたゆんと柔肉が解放された。
胸元に寄せられていた唇が、どんどんと下方へ向かっていくのにどくどくと心臓が力強く鼓動する。レオナの指先がブラジャーの肩紐を掬い取った時、ユウは堪らず胸元を己の腕で覆い隠してしまった。
「おい」
苛立つように言うが、その声色はどこまでも優しくて、怒ってはいないことが分かる。けれども目を眇められてしまい、ユウはくしゃりと表情を歪ませながら「だ、だって……」と言葉を詰まらせた。なんだよ、と相槌を打つレオナは決して答えを急かそうとはしない。どちらも言葉を発しないから、沈黙だけが続いてしまう。
「恥ずかしいんだもん……」
窄んだ喉の奥から、やっとの思いでか細い声を出す。レオナの顔を見ることすら恥ずかしくて視線を逸らしていたのだが、いくら待てども彼からの相槌が無い。何か言ってよ……、と泣き言をこぼしながらレオナの顔を窺えば、彼は愉快そうに眉を上げた。
「んなもん、すぐに気にならなくなる」
「なんで、そんなこと言えるんですか……」
そんなの分からないだろう。好きな人に裸体を晒すことに慣れる時なんか来るのか、それすらも分からないのに、どうして〝すぐに〟なんて根拠の無いことが言えるのだろうか。ユウが怪訝そうに眉根を寄せれば、レオナは彼女の耳殻をねっとりと舐め上げてから舌先で耳の孔を擽り、耳朶をしゃぶった。
「お前はただ感じてればいい。俺がどうやってこの身体に触れているのか、ちゃんと頭に叩き込んどけ」
「……んぅ、ンッ、あっ……そ、れ、やぁ……」
ぐちゅぐちゅと、鼓膜のすぐ近くで鳴る厭らしい水音に、身体がピクピクと震えてしまい、溢れ出すように甘い吐息がこぼれる。
「嫌じゃねぇだろ……」
「んんぅぅぅ……」
耳への愛撫ですっかり抵抗する力を緩めてしまったユウの腕を退け、レオナは手早くブラジャーをブレザーやワイシャツごと奪っていく。あっという間に剝かれて半裸状態になってしまったユウだが、己の身体を先程のように隠そうとする手は彼の手によってシーツに縫い留められてしまった。
ユウ、と幼子を優しく諭すように名前を呼ばれて、嫌だ、という言葉を唇を固く引き結んで喉の奥へと押さえ込む。レオナの手がゆっくりと離れていくが、何かを掴んでいないと気持ちが落ち着かなくて、ユウは男の手の代わりにシーツをぎゅっと指先で摘まむようにして掴んだ。
そんなユウの行動を見て、レオナは柔らかな微笑を口許にたたえて、いい子だ、と褒めるように、くしゃりと短く切り揃えられた彼女の髪の毛を掴んで頭を撫でる。それから、慎ましく膨らんだ双丘を一瞥して、そっと乳房を掬い取った。
先程のように彼の指先を沈めた柔肉が、レオナの大きな手の中で形を変えていく。時折、つんと上向いた乳首が掌に擦れて、甘い痺れが先端から指の先まで広がっていく。
「ぁん……ッ」
ふいに、硬くしこった乳首を摘ままれて、ユウは細い喉を反らしながら小さな嬌声を洩らしてしまう。あ、と思った時には勃起した乳嘴を指腹で擦られて、ビクビクと下半身を波打たせた。レオナの指に与えられた淫悦のせいで、すっかり腫れ上がってしまった乳首を今度は押し潰されて、捏ね回されて、爪先で弾かれる。代わる代わるに姿を変えてくる愉悦に、ユウは堪らず甘やかな声を迸らせた。
「ぁああんっ、んっ、ああっ……や、ぁ……」
「初心かと思ったら、随分な乱れようだな。自分で弄ってたか……?」
「ん、アッ……そ、んな…したこと、ない……ぁあっ」
身体を洗ったり、ボディークリームを塗ったりする時にしか触れたことの無い場所。明確な意図を持って触れたりしたことなど、ただの一度として無いのに、レオナに問われて思い当たる節の無いユウはふるふるとかぶりを振った。
「……お、おかしい……?」
他の人と比べたことも無い。経験したことのある友人と話をしたこともないから、普通が分からない。乳首をくにくにと捏ね回される度に、先程からずっと触られていないはずの恥部が疼いて蜜を滴らせている。グショグショに下着は濡れてしまっているが、自分はおかしいのだろうか。漫画の中じゃ、普通のように思えたけれど。
不安に煽られて、咄嗟に助けを乞うようにレオナに問いかけてしまう。すると彼は、なぜかフッと噴き出すようにして笑い声をこぼすと、べろん、と大きな舌で乳房を舐め上げた。
「別に、おかしいなんてことないだろ。強いて言うなら……少し人より敏感ってとこか? 別に、悪いことじゃねぇ」
「んんぅ……!」
そのまま伸びた舌先が、ぷっくりと勃ち上がった乳嘴をチロチロと弾いてくる。指で与えられる愉悦とはまた違った感覚に、ユウはしどけなく腰を揺らしながら太腿を擦り合わせて恥部の疼きを誤魔化した。女の躰の中で最も敏感んだと言われる肉の粒や蜜口が、さっきからずっとヒクヒクと疼いて熱を宿している。
貪るような口づけと同じようにしこった乳嘴を吸われ、ユウは艶を帯びた声を上げながら背中を反らした。自然と胸を突きだすような恰好になってしまい、自らもっと、と強請るような形になってしまったのが恥ずかしい。
レオナはそんな彼女の行動に気を良くしたのか、反り返った背中や腰を支えてやりながら赤く色付いた果実のような実をしゃぶり続けた。唇を窄めて、しこった乳嘴を扱くようにして顔を前後に動かす。舌先で尖りを突き、時には弾いて悦を与えれば、ユウの身体は随喜に打ち震えた。
じゅるじゅる、と淫らな啜る音を立てながら吸われると、何故だかさらに官能が高められてしまい、身体が熱を帯びていく。閉じることのできなくなってしまった口から、ぽろぽろとこぼれるように溢れ出る、特別可愛くもないあられもない声をなんとか押さえ込みたくて。必死で口を噤もうとするのだけれど、ユウの思い通りになかなか事は運んでくれない。
どうにかして我慢しようと手で口を押さえようとすれば、それを許さないレオナに手を握られて顔の横へと逆戻りだ。甘噛みするように歯を立てられる度、身体が大きく跳ね上がってしまい羞恥に頬が染まる。
「ッ、あっ…ん、んぅぅ……」
両胸の尖りをこれでもかと嬲られ、ようやくレオナの口が離れていった頃には、乳首は真っ赤に腫れ上がってしまい、熟れた果実のようになっていた。レオナの唾液で濡れそぼっているせいか、艶めかしくてらてらと光っていて、己の身体の一部であるはずなのに、やけに扇情的に見えてしまう。そんな厭らしい光景から目を逸らすと、レオナの手がようやく下肢へと伸びた。
文字通り瞬く間にベルトを外され、前を寛げられる。ブラジャーと揃いのベビーピンクのショーツの上から、腫れぼったくなった蜜部の上をレオナの指がなぞる。彼の指が淫裂を擦る度に、くちゅ、くちゅっ、と淫らな水音が鳴って、滴り落ちていた蜜がじわりとショーツから染み出てくる。
「すげえ濡れてんの、分かるか?」
ショーツ越しに溢れた蜜がレオナの指を濡らす。膨らんだ花弁を撫で上げていた指が、その蜜をまとって恥丘の方へと向かえば、当然弄る箇所はぷっくりと膨らみ始めた芽である。
「ぁああっ……!」
レオナの問いかけに、こくこくと小さく頷きながら、乳首を愛撫された時よりも強く感じる悦楽に、ユウは身体を震わせた。じわじわと波紋を広げるような甘やかな悦ではなく、バチッと電気の走るような烈しい快感に、慄く身体が逃げようとする。だがレオナは、そんな逃げるユウの腰を追いかけて、乳首と同じように硬くなりはじめた花芽を執拗に擦り上げた。
「っ、ああっ……! や、ぁ、れ、おなさ……あっ、んぅ」
「〝嫌〟じゃないなら、ちゃんと気持ちが好いって言え」
「んぅ、んああッ……‼」
ねっとりとした甘やかな声で囁かれ、耳殻を縁取るように舐られる。耳朶を啄まれ、乳首を指先で嬲られて、花芽を押し潰されて。強い愉悦で、頭の中がぐちゃぐちゃに搔き乱されていく。ひくん、ひくん、と大きく蜜窟は収縮を繰り返して、その度に蜜が溢れ出しているのが分かった。
みっともなく喘ぎ続けながら、ユウは着々と迫りくる何かに慄いてレオナの広い背中に腕を巻き付ける。自分よりも大きな体軀を抱き竦めると、どこかへ飛ばされてしまいそうな意識を保っていられるような気がして安心する。
「あ、んんっ、あッ、ああ…き、もちぃ、あんぅぅ」
言われた通りに声を出して、気持ちが好いと言葉にすると、さらに脳髄が痺れて意識が酩酊していった。レオナの指先で弾かれ続けていた秘豆は、さらに肥大して彼からの愛撫を甘受している。かと思えば、ぐっと押し潰されるように捏ねられて、きゅうっ、と丸まった爪先がシーツを蹴り飛ばした。――刹那、
「アッ、あ、や、ああッ~~~~!」
目の前が真っ白に霞んだ。強張った身体が一瞬、ふわりと宙に浮くような感覚がした。
「――……は、ぁ、ぁあッ」
止まっていた呼吸を、思い出したかのように行う。呼気を乱しながら喘いでいる最中、弛緩した身体は後を追いかけるように、ビクビクとベッドの上でのたうち回る。どっと溢れた蜜の感覚に「な、に……」と呟けば、レオナは小さく「イッたか……」とだけ呟いた。
その言葉を聞いたユウは意識を朦朧とさせながら、「あぁ、これが……」と、漫画で得ていた知識を思い出し、胸の中で独り言ちた。ただただ気持ちが好くて、それ以外考えられなくなっていたせいで、絶頂を極めた瞬間のことをよく思い出すことができない。何が起こったのかもよく理解できていないまま、ぐったりと四肢をシーツに沈めながら息を整える。
その間に、レオナは彼女の下着をスラックスごと脱がせて、ワイシャツやブレザーなどと同様に床へと抛り捨ててしまう。あっという間に全裸へと剝かれてしまい、ユウは身を捩りながら涙と欲に塗れた眸でレオナを仰ぎ見た。
「……なんで私だけなんですか」
最後まで残っていた靴下をも脱がされ、こちらは正真正銘の素っ裸だ。にも関わらず、レオナは(元々外れていた分はカウントしないが)ワイシャツのボタン一つも外さずに、その肉体を隠し通したまま。自分だけが、という状況が余計に恥ずかしくて、ユウはむぅと頬を膨らませながらゆっくりと上体を起こした。
それから、暑そうに汗を浮かべているにも関わらず、服を脱ごうともしないレオナの制服へと手を伸ばす。ベストのボタンを外し、それからワイシャツへと移る。しかし、甘く痺れているせいで上手く動かすことのできない指先は、小さなボタン一つ外すこともろくにできやしない。
「下手くそ」
くすり、と挑発するように言うレオナに、ユウは眉を顰めながらも懸命に指先を動かす。あと三つか二つで終わるというところで、待ちあぐねた男はワイシャツのボタンをブチブチと引き千切ってしまった。糸が切れて弾け飛んだ小さなボタンが、コロコロと床に転がっていく。
「えっ……ちょ、何してるんですか⁉」
思ってもみなかった行動にユウは目を瞬かせるが、レオナは平然とした素振りで脱いだ服を床へと抛り捨てていく。ベストにシャツに、スラックス、と順番に脱いでいき、露わになった下着の中で膨らんでいる情欲の漲りを目にしてしまう。咄嗟に視線を逸らしたユウが目にしたのは、哀れにも引き千切られてしまったボタンと抛られたシャツ。
「……ラギー先輩が怒りますよ」
前に聞いたことがある。レオナが着ている制服のボタン付けは、どうやらラギーが行っている……と。面倒見の良い彼は非常に手先が器用らしい。もしかしたら自分よりも裁縫や料理が上手いのかもしれない。……なんてことを考えていると、下着も脱いで同じように全裸になったレオナに頬をぎゅっと掴まれた。
小顔とも言えない大きさだが、レオナの大きな手にかかれば片手で頬の肉を潰すことなど余裕らしい。なにするんですか、と潰された口内の中で必死に言葉を紡げば、何を言っても、どんな行動をしても、怒ることなく優しく窘めてくれていたレオナの表情が曇った。
「ベッドの上で他の男の名前を出すのは感心しないな」
「ご、ごめんなさい……」
怒らせたくて言った訳じゃない。気恥ずかしさを誤魔化そうと、咄嗟に口を衝いて出てしまったのだ。だが、それはレオナの地雷を踏んだらしい。再びベッドの上へと押し倒されて、やや乱暴気味に口づけられる。呼吸を分かち合うような穏やかなキスでも、粘膜を蕩かすような甘い口づけでもない。咥内を踏み荒らすような深く激しいキスは、息継ぐ暇さえ与えてくれない。にも関わらず、なぜか身体には喜悦が走る。
「んっ、んんぅぅ……!」
男の指が剥き出しになった秘裂をなぞった時に奏でた、くちゅりという淫らな水音。それがユウが悦楽を享受している何よりの証拠だった。花弁を広げてみれば、あわいの裡に蓄えられていた蜜液が一気に溢れ出す。どろり、と零れる愛液を指で掬い取られたかと思えば、レオナの指先がゆっくりと泥濘へ沈んできた。
痛くはない。ただ、体の中に入り込んでくるものへ対しての違和感が凄まじい。自身の指一本すら受け入れたことのない隘路は、たっぷりの蜜液で潤っており難なく男の指を受け入れたが、初めての挿入物に驚きやや抵抗を見せていた。
緊張で息が詰まる。はくはくと浅い呼吸を繰り返していると、胎内に埋められた指がぐっと腹の内側を押してきた。ぐっ、と何かを探るように恥骨の裏側辺りを圧迫される。
「……力抜け。……そう、息はちゃんとしろ」
上手だ、と褒めるように頭を撫でられ、唇を優しく吸われる。嵐のような先程のキスとは全然違う甘やかな口づけに、ユウの思考はどんどんと蕩けていった。と同時に、指の先まで力が抜けていく。
下着越しでも強烈な快楽を感じていた敏感な肉粒は、蜜を絡めた指で優しく撫でられた。まだ皮を被ったままの粒を上下左右に弾かれる度、どぷりと胎内から蜜が溢れ出しているのが自分でも分かる。
レオナの指を雄根のように見立て、きゅっと締め付けたかと思えば、娼壁は舐めしゃぶるように吸い付いて収斂した。蜜壺の入口を丹念に解されて、快楽の実を外からと内側からの刺激される。違和感が少しずつ快感へと姿を変えていき、二度目の絶頂へと押し上げられた後、レオナが小さく笑ったことに気が付いたユウは、彼の唇を啄み返しながら「……な、に?」と艶を帯びた息吐きをこぼしながら尋ねた。
「……気付いてんのか? もう三本入ってる」
え、と小さくこぼした後に、散り散りになってしまっていた意識を掻き集める。レオナに言われた通り、下肢に意識を注いだ時、中で彼が三本の指をそれぞれバラバラに動かしたのが分かった。いつの間に、と目を点すれば、くすりと微笑ったレオナは「痛くないな」と確かめるように訊いてきて、こくんと頷く。
入口をたっぷり解されたお蔭か、隘路を拡げるようにレオナの指が動いても痛みは感じられない。それどころか、外側からの刺激が無くても陰核の裏側を擦られるだけで、躰は快楽を受け入れるようになっていた。
「ッ、あっ……そ、れ、きもちぃ……かも」
「かも、ってなんだよ。こうか?」
ゾクゾクと愉悦が背筋を駆け抜けていくような気がして、言葉にしてみる。多分、と付け足したのは、まだよく分かっていないから。
するとレオナは、小さく笑った後、十数分もの間愛撫し続けて見つけ出した、ユウの弱点でもある箇所を指腹で少し強めに擦り上げた。鉤爪状に折り曲げられた指先が、柔らかく蕩けだした蜜襞を掻き毟るように動く。じゅぷ、じゅく、と蜜窟を攪拌される度に鳴り響く水音に、ユウは唇をわななかせながらも蕩けた嬌声を上げた。
「あ、んんっ……あ、んぁ、アッ、それ、きもちぃ、あッ、あんんぅッ」
次から次へと溢れ出す声を我慢することができない。トントン、とリズミカルに快楽の実を叩かれて、あまりの気持ち好さに頭の中が白んでいく。ぎゅっと瞑った瞼の裏側ではチカチカと星の瞬きが見えたかと思えば、腫れ上がったその場所をぐっとさらに強く押し上げられて、ユウは呆気なく高みへと引っ張り上げられた。
「~~~~ぁあッ‼ あっ、はっ、ん、ぁ……」
絶頂にわななく女筒がレオナの指をこれでもかと食い締め、吐精を強請るように蠕動する。止めどなく溢れ出る愛の蜜は、激しく掻き混ぜられたせいか白く粟立ったものが蜜孔から噴きこぼれてシーツや、レオナの手を汚していた。手首にまで垂れたそれを、レオナはぺろりと舐め上げる。
「ッ、あ……や、やだ、そんな舐めないで……」
それを目撃したユウは、ぎょっと目を瞠る。信じられない、と小さくため息を吐くが、何故かレオナは機嫌良さそうにユウの股座へと顔を近づけていく。何をする気だ、と狼狽えるユウが彼の名を口にして呼び止めるが、男は彼女の下肢を大きく押し開き、暴かれた蜜部に舌を這わせた。
「ひゃ、ああっ……や、やだっ…あ、レオナさ、ああっ」
指で散々嬲られた敏感な花芽をじゅるりと音を立てて啜られ、ビリビリと強烈且つ甘やかな快楽がユウに襲い掛かる。あっという間に快楽の坩堝へと引き摺り込まれて、ユウは藻掻くように手足をばたつかせた。シーツを掻き毟り、丸めた爪先で蹴り飛ばし、強すぎる愉悦をなんとか逃そうとする。
端正な顔立ちをした男が、秘めたる場所に顔を埋めて、溢れ出る体液を啜っている。昨夜入浴をしただけで、洗ってもいない場所に口づけられて、ユウは泣きたい心地に苛まれた。
「あっ、やあぁ……やめ、アアッ」
やめてほしいのに、やめてほしくない。だって気持ちが好いのだ。皮を剝かれて神経が剥き出しになった肉粒を舌先でねっとりと舐られて、肥大したそれを窄められた唇で扱かれる。どろり、と溢れた蜜液を飲み下されて、指で柔らかく解されていた蜜孔に潜り込んできた舌が得体の知れない生き物のように蠢く。そうして刺激された官能が、背徳感に苛まれていたユウの理性を灼き切った。
「アアッ――! い、くっ……イクッ、イクッ、んああっ……‼」
腹を波打たせながら、狂ったように女の声を迸らせる。ビクビクと身体を痙攣させながら気を遣る。だが、レオナの猛追は止まらない。反射的に逃げる腰を押さえ込まれてしまい、ユウは悲鳴のような声を上げて蜜を噴きこぼした。
「いやああっ……! あっ、アッ、れおな、さ、ああっ……やめっ、あ、おかしく、なるっ……」
絶頂を極めて敏感になった肉粒は、強く吸われれば痛いだけのはずなのに、それを上回る快楽に塗り潰されていく。頭が馬鹿になりそうなほど強烈な愉悦が恐ろしくて、狼狽える口は「やめて」と拒絶の言葉を吐くのに、躰はもっとと貪婪に悦を求めてしまう。レオナの口に陰部を押し付けるように腰は上がり、彼の顔を引き剥がそうとした手は男の髪の毛をくしゃりと掴むだけに終わる。
可愛げも何も感じられない、もはや嬌声とも言えないような声を上げながら、ユウは続けざまに頂きへと昇り詰めた。
「んあっ……アッ、れおなさ、れおなさんっ……」
果てた後の収縮を繰り返す陰部をぺろりと舐められて、びくぅっ! と身体が大きく跳ね上がる。縋るように男へ手を伸ばせば、息を乱したレオナがやや雑に唇を貪ってきた。下唇、上唇と交互に食まれて、伸ばした舌を唾液ごと吸われて、甘い電流が全身を駆け巡った。
パンパンに腫れ上がって膨張した熱塊が、陰部に擦り付けられている。綻んだ淫裂に切っ先を擦り付けられれば蜜窟が切なげに蠢き、すぐ上にある尖りを弾かれれば、押し出されたように甘い声がユウの口からこぼれだす。
熱を帯びた吐息に頬や唇を撫でられ、ユウは「れおなさん、きて……」と甘い声で強請った。淫らに腰を揺らして、充てがわれた肉棒を切望する。擦り付けられただけでも、蜜壺からはとろとろと淫水が溢れ出すし、指でも届かなかった最奥が先程から疼いて仕方が無いのだ。
下腹の奥にある臓器が、きゅんきゅんと甘く切なげな声を上げ続けている。それに、レオナの眉はずっと我慢しているように悩まし気に顰められていた。
それに応えるかのように、レオナはユウの顔中にキスの雨を散りばめた。目、閉じてろ。そう言いながら優しく瞼に唇を落とす。その間に彼がやっていたことに、ユウはちゃんと気が付いていた。
物を引き寄せる魔法で、引き出しの中に入っていたコンドームの箱を取り出し、レオナは慣れた手付きで己の雄根に薄い膜を被せる。痛いくらいに張り詰めたそれを、よく解れた蜜孔の入口に押し当てれば、蜜窟は緊張で強張ることなく奥へ誘うように蠢いた。
「――っ、ぁあ……」
そうして泥濘に沈められた楔に、ユウは呻きにも似た声を上げながら眉根を寄せた。
三本の指で入念に解されたとは言え、レオナの雄茎は比べ物にならないほど長大である。蜜孔周りの肉が引き裂かれる痛みと、男根を受け入れ慣れていない隘路が押し拡げられていく感覚に、身体は勝手に慄いてガクガクと震え出した。ぽろり、と眦に浮かんだ涙が零れるよりも前にレオナの舌先によって透明な珠雫は舐め取られ、痛い、と口にするよりも前に口を口で塞がれる。
舌を搦め取られて、上顎の感じる部分を突かれて。つんと上向く両方の乳首を摘ままれて、こりこりと指腹の上で転がされて。レオナはユウの冷めてしまいそうになっていた官能を刺激してきた。そうして呼び起こされた欲情のお蔭か、脈打つ度に鈍痛はするものの我慢できない程ではない。
「ゆっくり呼吸しろ」
と、言われた通りに、深呼吸を心がける。大きく吸って、吐いて……。レオナの呼吸に合わせるようにして、ゆっくりと深く息を吸って吐く。吐いた時に身体の力が緩んだのを見計らって、レオナは腰をゆっくりと押し進めてきた。指で届かなかった膣奥を押し拡げられ、また別の痛みが生まれた。
「……もうやめておくか」
「……嘘、まだ全部入ってないんですか……?」
恐怖を煽るだけだからあまり見るな、と言われたせいで、触るどころかこの目でしっかりと見ることさえ許されなかった。そのせいで、具体的な彼の大きさが分からない。口振りからするに、まだ全部を埋め切れていないようだが、胎の中は既に苦しいくらいいっぱいいっぱいだ。
自分の躰ではあるが、どこまで奥に受け入れることができるのかさっぱり分からない。必ず行き止まりはあるはずなのに、際限なく貫かれてしまいそうな気がして、ユウは狼狽える。
「んな焦んなくても、数を重ねりゃ挿入るようになるさ」
宥めるような口づけが額や鼻頭、唇や頬へと降ってきて、ユウはそれを返すように男の顔中に唇を押し付ける。ゆっくりと進めてもらえるのであれば、その方がありがたいに決まっている。是非ともお願いしたい、と力強く頷けば、くつくつと愉しげに喉奥で笑ったレオナが、トン、と指先で下腹部を軽く叩いた。
「いつかここで、死ぬほど善がらせてやるから覚悟しておけ」
いいな、と念を押されたが、なかなか素直に頷くことができない。死ぬほど、ってどんなの。
口淫だけで気が狂いそうなほど気持ちが好かったのに、この上があるのだろうか。ならば、最上級はどこにあるのだろう。
そんな疑問がぐるぐると頭の中で彷徨い出す。だが、しばらくじっとしていたレオナがゆっくりと動き出したことによって、すぐにそれは霧散した。
ぬちゅり、ぐちゅり、とレオナが抽挿を繰り返す度に聞こえてくる粘着質な音がユウの情欲を駆り立てる。嵩高が腹の内側を引っ掻くように抉る度に、彼女の細くしなやかな肢体が小刻みに震えた。
引き抜かれた時に感じるゾクゾクとした愉悦と、挿入された時に感じる内臓を押し上げられる時に感じる悦楽。そして、無意識のうちに雄根を締め付けることによって味わうことのできる充足感に、躰はどんどんと蝕まれていく。
「んっ、あっ…あっ、んんッ……」
ゆっくりだった律動が次第に早くなっていく。痛みを覚えた最深部ギリギリのところを亀頭で小突かれ、腫れぼったくなった女の弱点を掻き毟られる。
穿たれる度に声を上げているのは、突き上げられる度に自然と溢れ出してしまうから。甘く上擦った声は、快楽を得るたびに艶を帯びていく。
れおなさん、と男の名前を呼ぶユウの声は舌足らずで、どろりと蕩けていた。そんな声で呼ばれてしまえば、レオナはますます情欲を己の中心部に集めてしまう。
「あっ、んッ……おっ、きく…なった……?」
「お陰様で」
苦笑いを浮かべるように呟いたレオナが、困ったとばかりにため息を吐く。悩ましげに寄せられていた眉根に唇を寄せれば、さらに刻まれていた皺は深くなった。
「お前は随分と男を煽るのが上手いらしいな」
「なっ、そんなこと、ない……です」
だって知らないもん。レオナさん以外に、知らないから。
甘ったるく爛れた空気の中に溶け込むようにして消えてしまいそうな、そんなか細い声で呟く。知ってるくせに、と蕩けた瞳を細めれば、レオナは「あぁ、知ってる」と、たっぷり時間をかけてユウの口を甘く吸い上げた。
「もう少し動いていいか?」
そう問いかけてくる男の声に、ぞくりと背筋が震える。今までと何が決定的に違うのか、ユウにはよく分からなかったが、見上げた先にある眸の中に情欲の翳りがみえた。
興奮した獣のような、熱くて湿った吐息が頬や唇を撫でていく。大きな背中に縋るように手を回して、彫刻のように整った隆起を撫で上げる。少し擽ったかったのか彼の身体が震えて、胎内に埋められていた巨杭がさらに質量を増した。
こくこく、と何度も頷いて返事をする。――が、レオナが動き出したのはそれよりも先だった。
「んああっ! あっ…んんぅ……! アッ、んっ、んんっ」
突然の衝動に脳が激しく揺さぶられた。がくん、と背中から奈落の底へと墜ちていくような落下感に襲われ、ユウはレオナの背中に回した手にぎゅっと力を籠めて縋り付く。しっかりと背中はベッドに付いていて、吸い込まれることなど絶対にないのに。何故だか引き摺り込まれるような気がしてしまう。
「あ、んっ、あッ……や、れおなさ、あ、んんっ!」
自分よりも一回り以上大きな体躯にしがみ付いて、助けを乞うようにレオナの名を呼ぶが、男の激しい抽挿は止まらない。今まで丁寧にユウの感じる所を擦り上げていた動きは、ただ蜜窟をしゃにむに掘削するだけのものに変わってしまっている。愛蜜を掻き回し、好き勝手に暴れまわる雄根だが、手厚く愛でられていた肉筒はどこを擦られても愉悦を感じるようになっていた。
陽根を舐めしゃぶるように蠕動する蜜襞を乱暴気味に擦られ、柔らかく解れだした最深部の膣壁を穿たれ、かと思えば、陰核の裏側を力強く切っ先が引っ掻いていく。強弱を付けるように女筒を蹂躙されて、ユウは何度も小さく快楽を弾かせた。
「や、あんっ……アッ、あ、ああっ」
激しい快楽の波から逃れようと、のたうち回る腰を上から押さえ込まれて、迸った嬌声が潰れる。ユウが絶頂を迎えても、レオナの律動は止まらない。根元を喰い締めて、射精を誘うように媚肉が蠕動しても、レオナは噛み締めた唇の隙間から乱れた吐息をこぼすだけで達する気配をみせない。
ぎゅうぅ、と娼壁が雄根を締め付ければ、今にも弾けそうなほど膨らんだ漲りの太さや形がハッキリと伝わってくる。浮き出た脈の数まで分かりそうなほどなのに、依然としてレオナを果てへと導くことができない。腹に力を籠めて意識的に強く締め付けてみれば、彼の喉からはグルルルルと低い獣の唸り声が響いた。
「んあっ、アッ、れおなさ…んんぅ……好きっ、すき……」
背中に絡めていた腕を首回りへと移動させ、引き寄せた顔に何度も唇を押し付ける。我慢することなど到底できない喘ぎ声を洩らしながら、拙いキスを幾度となくほどこしていく。目尻や頬、鼻頭、顎先。見た目よりもふっくらとして柔らかい唇を、歯で傷つけてしまわないよう細心の注意を払いながらも、親鳥に餌を強請る雛鳥のようなキスをした。
「あっ、んッ…あっ、だ、してぇ……!」
精一杯のおねだりのつもりだった。挿入してから男の人が一回果てれば、それで性行為というものは終わりだと思っていたから。
「――ぐ、あッ……」
艶を帯びた低い呻き声と共に、薄膜越しに熱い飛沫が吐き出される。何度か緩く腰を打ち付けるようにして、全てを吐き出し切ったレオナが、深く息を吐きながら倒れ込んでくる。その重みと腹の中に広がる熱に、胸の裡には多幸感が満ち溢れた。
はぁ、はぁ、と乱れた呼気を分かち合うようにして、口を吸い合うだけの甘いキスを繰り返す。少しばかり質量を失った雄根が外へと出て行くと、ユウの蜜部からは蜜液と破瓜の血が混じり合った、粟立った薄桃色の液体が溢れ出してシーツを汚した。
「……痛むか?」
体調を気遣う優しい問いかけに、ユウはふるふると横に首を振る。
「少しヒリヒリするけど、痛くは無いかな……」
胎内を満たしてくれていたものを失い、陰部は切なげにヒクヒクと収縮を繰り返している。とろり、と蜜が溢れた淫裂を優しく指先で擽られて、反射的にピクピクと身体は随喜に震えてしまった。
汗ばんだ額にもキスをほどこされ、幸せいっぱい気分で離れていくレオナを見上げる。雄茎に取り付けていた薄膜を外し、慣れた手付きで口を結ぶと、それをベッド脇のゴミ箱へと抛り捨てる。
これで終わりか……。
そう思うと、ほっとしたような気分にもなるが、同時に心寂しくも思ってしまう。しゅん、と眉を下げていると、レオナは二袋目のスキンを開封している最中だった。
「――え」
「んだよ。物足りねえ、って顔してるくせに。不満か……?」
くすり、と笑うレオナの表情に綺麗な言葉を当て嵌めるなら、まさしく〝妖艶な微笑み〟といった言葉が相応しいだろう。餓えた獣のような獰猛な瞳に、収まったはずの欲情が芽吹いてしまう。
「――あ、や、うそ……」
「だから、そんな顔すんなって言っただろ?」
そうして瞬く間に雄槍で貫かれ、ユウは白い喉許を男の目の前に曝け出した。
ため息のように深く息を吐いたレオナが、機嫌良さそうに喉を震わせながら微笑う声がする。何やってんだ、と揶揄うように訊いてくる声にまぶされた甘露に、ずっと忙しなく動き続けている心臓がさらに締め付けられた。
「……なんでもない」
緊張で固くなった喉から声を振り絞る。ぎゅっ、と彼の胸元のシャツを握る指先は、僅かに震えていて、全身は煮えたぎるように熱いのに反してひんやりと冷たかった。どくん、どくん、と一回脈打つ度に大きな音を立てながら鼓動する心臓が、何かを話そうとして口を開こうとする度にせり上がってくるような気がしてならない。唇どころか、口の中まで乾燥しているのに、引き攣る喉の違和感をどうにかしたくて、唾を飲み込む真似事をする。
――あぁ……やっぱり無理。無理だよぉ……。
ぐるぐると回る思考の中、思い出すのは小学校高学年から中学生の頃にかけて流行った、ちょっとエッチな少女漫画の内容だ。お世辞にも大人とは言えない、まだまだ未熟な少女たちが、ちょっぴり過激な性描写にドキドキと胸を高鳴らせて読んでいた場面。ヒーロー役の男の子がヒロインの女の子の服を脱がしていき、暴いた身体を優しく手や舌で愛撫し、躰だけでなく心も繋いでいく。
少ないお小遣いを大事に貯め込んで買った漫画を、友達同士で回しあって、家でこっそり拝読する。いずれは自分達も経験するかもしれない、そんな甘い描写を目にしていた頃を思い出す。あの頃よりもさら、胸はふっくらと膨れて、体は大人の女性へと着々と変わっていっている。別に、特別早いわけではない。もう十六歳だ。大人とは言えないかもしれないが、子どもでもない。
大丈夫。きっと、大丈夫だから。
疾走する心臓に何度も言い聞かせるようにして宥めるけれど、落ち着く気配は見せてくれない。それどころか、とうとうレオナが寮の最上階に位置する寮長室へと辿り着いてしまったのと同時に、きゅっと心の臓が強張ってしまった。
初めては痛い、って聞いた。
一足早く乙女を卒業してしまった友人や、漫画の中のヒロインが言っていた言葉。……中には、思っていたよりも痛くなかったし血も出なかった、と豪語する猛者もいたのだが、どう考えても、あの狭い孔の中に男の性器が入るとは到底思えない。赤ん坊の通り道でもあり、多くの女性が姦通を経験しているのだから、己の隘路にだって雄根を迎え入れることはできるはずなのだ。だが、自身の指、一本すら入れたことも無ければ、タンポンと呼ばれる生理用品すら挿入したことの無かったユウにとってはにわかに信じがたい話である。
陽根の大きさは身長と比例する、と巷では言う。よく聞く有名な話だ。
眠れないほど恋しさを感じるほど大好きな相手の身長は裕に180を上回っており、日頃から良く鍛えられている体躯は一回り以上大きい。見たことが無くても、見なくても分かる。きっと、彼のソレは大きい。
痛いことはしたくない。誰だってそうだろう。本当に大丈夫かな、と手足を縮めている間に、体はレオナによってベッドの上へとゆっくり下ろされ靴を脱がされた。彼が普段使っている、大きなベッドの上。ふわ、っと香る大好きなレオナの匂いが鼻腔を擽ってきて、レオナがベッドに乗り上げてきた時に鳴った軋んだ音が、一気に周りの清々しい空気を甘く爛れたものへと変えていく。
「なに怯えてんだよ……。さっきみたいな顔してろ」
ちう、と額に口づけられ、鼻の頭に柔く歯を立てられる。さっき、って何。言葉を詰まらせながら訊けば、レオナは艶冶な笑みを口許に浮かべながら「エッチな顔」と囁いた。その声が、とても艶めかしくて、甘ったるくて、ユウの中に眠っていた欲情が一瞬にして呼び起こされた。
はっ、と思わず息を呑む前に、わなないた唇はレオナの唇によって塞がれてしまった。ちう、ちぅ、と大袈裟にリップ音を立てながらも、角度を変えながらゆっくりと口づけに深さを足していく。湿った唇同士を合わせていると、先程の官能的なキスで昂った劣情を刺激された。
自然と薄く開いた唇の隙間にレオナの舌が侵入してきて、ユウの小さな口咥内を我が物顔で蹂躙していく。踏み荒らすような乱暴な口づけにすら随喜を味わうようになったユウの身体は、レオナからのキスを懸命に受け止めていた。絡め取られた舌を差し伸ばせば、彼がじゅるる、と唾液を啜るのと一緒に舌を強く吸ってくる。ほんの少し強めに吸われた舌先は、その痛みにジンジンと甘い痺れを広げた。
唾液を注ぎ込まれて、淫らな水音を意図的に鳴らすようにして咥内を攪拌される。頭の中を直接掻き回されているような、そんな錯覚に陥ってしまったユウは、甘く淫らな口づけに強張った身体をどんどんと解きほぐされていった。
優しく頭を撫でてくれていた手が、首筋を辿って胸元へと下りていく。片手で器用にタイやワイシャツのボタンを外していく彼の手にさえ気が付かないまま、ユウはレオナの唇や舌を夢中で求めていた。粟玉を啄む小鳥のように男の舌先や唇を吸えば、仕返しとばかりにレオナは唇を貪ってくる。熟れた果実のように紅くなった唇を甘噛みされると、じわりと蜜部が潤むのを感じた。
「……っ、ふぅ、んっ、ぅ……」
髪の毛の隙間に挿し込まれた指先が、地肌を優しく擽ってくるのがとても気持ちが好い。うっとりと目尻を垂らしながら、その愛撫の心地に耽溺していると、暴かれた胸元を彼の掌に覆われた。大きくも無く、小さくも無く、平均的な膨らみの形や感触を確かめるように柔らかく揉みしだかれる。
胸の裡に寂しさを抱えながら離れていく唇を見送る。貪るように口を吸い続けていた男の唇が、首筋を辿り胸元に降りていく。胸の中を直接擽られるような愛撫に、ユウは身を捩らせながらもその光景を一心に見つめていた。
ベビーピンクのブラジャーの中におさまっている小さな膨らみを、レオナは満足気に見下ろしながら下着の上から揉み込んで形を変えていった。谷間に寄った柔肉に指先を沈めて、その弾力を確かめる。
「背中浮かせろ」
熱の籠った掠れた声に、思わず腰がわななく。キスだけでとっくに砕けてしまった腰を叱咤して、言われた通りに胸を突き出しながら背中を浮かせた。褥との間に僅かに空いた隙間に手がするりと滑り込んできて背中を支えられる。あっという間にブラジャーのホックを外されて、締め付けの緩くなった場所からたゆんと柔肉が解放された。
胸元に寄せられていた唇が、どんどんと下方へ向かっていくのにどくどくと心臓が力強く鼓動する。レオナの指先がブラジャーの肩紐を掬い取った時、ユウは堪らず胸元を己の腕で覆い隠してしまった。
「おい」
苛立つように言うが、その声色はどこまでも優しくて、怒ってはいないことが分かる。けれども目を眇められてしまい、ユウはくしゃりと表情を歪ませながら「だ、だって……」と言葉を詰まらせた。なんだよ、と相槌を打つレオナは決して答えを急かそうとはしない。どちらも言葉を発しないから、沈黙だけが続いてしまう。
「恥ずかしいんだもん……」
窄んだ喉の奥から、やっとの思いでか細い声を出す。レオナの顔を見ることすら恥ずかしくて視線を逸らしていたのだが、いくら待てども彼からの相槌が無い。何か言ってよ……、と泣き言をこぼしながらレオナの顔を窺えば、彼は愉快そうに眉を上げた。
「んなもん、すぐに気にならなくなる」
「なんで、そんなこと言えるんですか……」
そんなの分からないだろう。好きな人に裸体を晒すことに慣れる時なんか来るのか、それすらも分からないのに、どうして〝すぐに〟なんて根拠の無いことが言えるのだろうか。ユウが怪訝そうに眉根を寄せれば、レオナは彼女の耳殻をねっとりと舐め上げてから舌先で耳の孔を擽り、耳朶をしゃぶった。
「お前はただ感じてればいい。俺がどうやってこの身体に触れているのか、ちゃんと頭に叩き込んどけ」
「……んぅ、ンッ、あっ……そ、れ、やぁ……」
ぐちゅぐちゅと、鼓膜のすぐ近くで鳴る厭らしい水音に、身体がピクピクと震えてしまい、溢れ出すように甘い吐息がこぼれる。
「嫌じゃねぇだろ……」
「んんぅぅぅ……」
耳への愛撫ですっかり抵抗する力を緩めてしまったユウの腕を退け、レオナは手早くブラジャーをブレザーやワイシャツごと奪っていく。あっという間に剝かれて半裸状態になってしまったユウだが、己の身体を先程のように隠そうとする手は彼の手によってシーツに縫い留められてしまった。
ユウ、と幼子を優しく諭すように名前を呼ばれて、嫌だ、という言葉を唇を固く引き結んで喉の奥へと押さえ込む。レオナの手がゆっくりと離れていくが、何かを掴んでいないと気持ちが落ち着かなくて、ユウは男の手の代わりにシーツをぎゅっと指先で摘まむようにして掴んだ。
そんなユウの行動を見て、レオナは柔らかな微笑を口許にたたえて、いい子だ、と褒めるように、くしゃりと短く切り揃えられた彼女の髪の毛を掴んで頭を撫でる。それから、慎ましく膨らんだ双丘を一瞥して、そっと乳房を掬い取った。
先程のように彼の指先を沈めた柔肉が、レオナの大きな手の中で形を変えていく。時折、つんと上向いた乳首が掌に擦れて、甘い痺れが先端から指の先まで広がっていく。
「ぁん……ッ」
ふいに、硬くしこった乳首を摘ままれて、ユウは細い喉を反らしながら小さな嬌声を洩らしてしまう。あ、と思った時には勃起した乳嘴を指腹で擦られて、ビクビクと下半身を波打たせた。レオナの指に与えられた淫悦のせいで、すっかり腫れ上がってしまった乳首を今度は押し潰されて、捏ね回されて、爪先で弾かれる。代わる代わるに姿を変えてくる愉悦に、ユウは堪らず甘やかな声を迸らせた。
「ぁああんっ、んっ、ああっ……や、ぁ……」
「初心かと思ったら、随分な乱れようだな。自分で弄ってたか……?」
「ん、アッ……そ、んな…したこと、ない……ぁあっ」
身体を洗ったり、ボディークリームを塗ったりする時にしか触れたことの無い場所。明確な意図を持って触れたりしたことなど、ただの一度として無いのに、レオナに問われて思い当たる節の無いユウはふるふるとかぶりを振った。
「……お、おかしい……?」
他の人と比べたことも無い。経験したことのある友人と話をしたこともないから、普通が分からない。乳首をくにくにと捏ね回される度に、先程からずっと触られていないはずの恥部が疼いて蜜を滴らせている。グショグショに下着は濡れてしまっているが、自分はおかしいのだろうか。漫画の中じゃ、普通のように思えたけれど。
不安に煽られて、咄嗟に助けを乞うようにレオナに問いかけてしまう。すると彼は、なぜかフッと噴き出すようにして笑い声をこぼすと、べろん、と大きな舌で乳房を舐め上げた。
「別に、おかしいなんてことないだろ。強いて言うなら……少し人より敏感ってとこか? 別に、悪いことじゃねぇ」
「んんぅ……!」
そのまま伸びた舌先が、ぷっくりと勃ち上がった乳嘴をチロチロと弾いてくる。指で与えられる愉悦とはまた違った感覚に、ユウはしどけなく腰を揺らしながら太腿を擦り合わせて恥部の疼きを誤魔化した。女の躰の中で最も敏感んだと言われる肉の粒や蜜口が、さっきからずっとヒクヒクと疼いて熱を宿している。
貪るような口づけと同じようにしこった乳嘴を吸われ、ユウは艶を帯びた声を上げながら背中を反らした。自然と胸を突きだすような恰好になってしまい、自らもっと、と強請るような形になってしまったのが恥ずかしい。
レオナはそんな彼女の行動に気を良くしたのか、反り返った背中や腰を支えてやりながら赤く色付いた果実のような実をしゃぶり続けた。唇を窄めて、しこった乳嘴を扱くようにして顔を前後に動かす。舌先で尖りを突き、時には弾いて悦を与えれば、ユウの身体は随喜に打ち震えた。
じゅるじゅる、と淫らな啜る音を立てながら吸われると、何故だかさらに官能が高められてしまい、身体が熱を帯びていく。閉じることのできなくなってしまった口から、ぽろぽろとこぼれるように溢れ出る、特別可愛くもないあられもない声をなんとか押さえ込みたくて。必死で口を噤もうとするのだけれど、ユウの思い通りになかなか事は運んでくれない。
どうにかして我慢しようと手で口を押さえようとすれば、それを許さないレオナに手を握られて顔の横へと逆戻りだ。甘噛みするように歯を立てられる度、身体が大きく跳ね上がってしまい羞恥に頬が染まる。
「ッ、あっ…ん、んぅぅ……」
両胸の尖りをこれでもかと嬲られ、ようやくレオナの口が離れていった頃には、乳首は真っ赤に腫れ上がってしまい、熟れた果実のようになっていた。レオナの唾液で濡れそぼっているせいか、艶めかしくてらてらと光っていて、己の身体の一部であるはずなのに、やけに扇情的に見えてしまう。そんな厭らしい光景から目を逸らすと、レオナの手がようやく下肢へと伸びた。
文字通り瞬く間にベルトを外され、前を寛げられる。ブラジャーと揃いのベビーピンクのショーツの上から、腫れぼったくなった蜜部の上をレオナの指がなぞる。彼の指が淫裂を擦る度に、くちゅ、くちゅっ、と淫らな水音が鳴って、滴り落ちていた蜜がじわりとショーツから染み出てくる。
「すげえ濡れてんの、分かるか?」
ショーツ越しに溢れた蜜がレオナの指を濡らす。膨らんだ花弁を撫で上げていた指が、その蜜をまとって恥丘の方へと向かえば、当然弄る箇所はぷっくりと膨らみ始めた芽である。
「ぁああっ……!」
レオナの問いかけに、こくこくと小さく頷きながら、乳首を愛撫された時よりも強く感じる悦楽に、ユウは身体を震わせた。じわじわと波紋を広げるような甘やかな悦ではなく、バチッと電気の走るような烈しい快感に、慄く身体が逃げようとする。だがレオナは、そんな逃げるユウの腰を追いかけて、乳首と同じように硬くなりはじめた花芽を執拗に擦り上げた。
「っ、ああっ……! や、ぁ、れ、おなさ……あっ、んぅ」
「〝嫌〟じゃないなら、ちゃんと気持ちが好いって言え」
「んぅ、んああッ……‼」
ねっとりとした甘やかな声で囁かれ、耳殻を縁取るように舐られる。耳朶を啄まれ、乳首を指先で嬲られて、花芽を押し潰されて。強い愉悦で、頭の中がぐちゃぐちゃに搔き乱されていく。ひくん、ひくん、と大きく蜜窟は収縮を繰り返して、その度に蜜が溢れ出しているのが分かった。
みっともなく喘ぎ続けながら、ユウは着々と迫りくる何かに慄いてレオナの広い背中に腕を巻き付ける。自分よりも大きな体軀を抱き竦めると、どこかへ飛ばされてしまいそうな意識を保っていられるような気がして安心する。
「あ、んんっ、あッ、ああ…き、もちぃ、あんぅぅ」
言われた通りに声を出して、気持ちが好いと言葉にすると、さらに脳髄が痺れて意識が酩酊していった。レオナの指先で弾かれ続けていた秘豆は、さらに肥大して彼からの愛撫を甘受している。かと思えば、ぐっと押し潰されるように捏ねられて、きゅうっ、と丸まった爪先がシーツを蹴り飛ばした。――刹那、
「アッ、あ、や、ああッ~~~~!」
目の前が真っ白に霞んだ。強張った身体が一瞬、ふわりと宙に浮くような感覚がした。
「――……は、ぁ、ぁあッ」
止まっていた呼吸を、思い出したかのように行う。呼気を乱しながら喘いでいる最中、弛緩した身体は後を追いかけるように、ビクビクとベッドの上でのたうち回る。どっと溢れた蜜の感覚に「な、に……」と呟けば、レオナは小さく「イッたか……」とだけ呟いた。
その言葉を聞いたユウは意識を朦朧とさせながら、「あぁ、これが……」と、漫画で得ていた知識を思い出し、胸の中で独り言ちた。ただただ気持ちが好くて、それ以外考えられなくなっていたせいで、絶頂を極めた瞬間のことをよく思い出すことができない。何が起こったのかもよく理解できていないまま、ぐったりと四肢をシーツに沈めながら息を整える。
その間に、レオナは彼女の下着をスラックスごと脱がせて、ワイシャツやブレザーなどと同様に床へと抛り捨ててしまう。あっという間に全裸へと剝かれてしまい、ユウは身を捩りながら涙と欲に塗れた眸でレオナを仰ぎ見た。
「……なんで私だけなんですか」
最後まで残っていた靴下をも脱がされ、こちらは正真正銘の素っ裸だ。にも関わらず、レオナは(元々外れていた分はカウントしないが)ワイシャツのボタン一つも外さずに、その肉体を隠し通したまま。自分だけが、という状況が余計に恥ずかしくて、ユウはむぅと頬を膨らませながらゆっくりと上体を起こした。
それから、暑そうに汗を浮かべているにも関わらず、服を脱ごうともしないレオナの制服へと手を伸ばす。ベストのボタンを外し、それからワイシャツへと移る。しかし、甘く痺れているせいで上手く動かすことのできない指先は、小さなボタン一つ外すこともろくにできやしない。
「下手くそ」
くすり、と挑発するように言うレオナに、ユウは眉を顰めながらも懸命に指先を動かす。あと三つか二つで終わるというところで、待ちあぐねた男はワイシャツのボタンをブチブチと引き千切ってしまった。糸が切れて弾け飛んだ小さなボタンが、コロコロと床に転がっていく。
「えっ……ちょ、何してるんですか⁉」
思ってもみなかった行動にユウは目を瞬かせるが、レオナは平然とした素振りで脱いだ服を床へと抛り捨てていく。ベストにシャツに、スラックス、と順番に脱いでいき、露わになった下着の中で膨らんでいる情欲の漲りを目にしてしまう。咄嗟に視線を逸らしたユウが目にしたのは、哀れにも引き千切られてしまったボタンと抛られたシャツ。
「……ラギー先輩が怒りますよ」
前に聞いたことがある。レオナが着ている制服のボタン付けは、どうやらラギーが行っている……と。面倒見の良い彼は非常に手先が器用らしい。もしかしたら自分よりも裁縫や料理が上手いのかもしれない。……なんてことを考えていると、下着も脱いで同じように全裸になったレオナに頬をぎゅっと掴まれた。
小顔とも言えない大きさだが、レオナの大きな手にかかれば片手で頬の肉を潰すことなど余裕らしい。なにするんですか、と潰された口内の中で必死に言葉を紡げば、何を言っても、どんな行動をしても、怒ることなく優しく窘めてくれていたレオナの表情が曇った。
「ベッドの上で他の男の名前を出すのは感心しないな」
「ご、ごめんなさい……」
怒らせたくて言った訳じゃない。気恥ずかしさを誤魔化そうと、咄嗟に口を衝いて出てしまったのだ。だが、それはレオナの地雷を踏んだらしい。再びベッドの上へと押し倒されて、やや乱暴気味に口づけられる。呼吸を分かち合うような穏やかなキスでも、粘膜を蕩かすような甘い口づけでもない。咥内を踏み荒らすような深く激しいキスは、息継ぐ暇さえ与えてくれない。にも関わらず、なぜか身体には喜悦が走る。
「んっ、んんぅぅ……!」
男の指が剥き出しになった秘裂をなぞった時に奏でた、くちゅりという淫らな水音。それがユウが悦楽を享受している何よりの証拠だった。花弁を広げてみれば、あわいの裡に蓄えられていた蜜液が一気に溢れ出す。どろり、と零れる愛液を指で掬い取られたかと思えば、レオナの指先がゆっくりと泥濘へ沈んできた。
痛くはない。ただ、体の中に入り込んでくるものへ対しての違和感が凄まじい。自身の指一本すら受け入れたことのない隘路は、たっぷりの蜜液で潤っており難なく男の指を受け入れたが、初めての挿入物に驚きやや抵抗を見せていた。
緊張で息が詰まる。はくはくと浅い呼吸を繰り返していると、胎内に埋められた指がぐっと腹の内側を押してきた。ぐっ、と何かを探るように恥骨の裏側辺りを圧迫される。
「……力抜け。……そう、息はちゃんとしろ」
上手だ、と褒めるように頭を撫でられ、唇を優しく吸われる。嵐のような先程のキスとは全然違う甘やかな口づけに、ユウの思考はどんどんと蕩けていった。と同時に、指の先まで力が抜けていく。
下着越しでも強烈な快楽を感じていた敏感な肉粒は、蜜を絡めた指で優しく撫でられた。まだ皮を被ったままの粒を上下左右に弾かれる度、どぷりと胎内から蜜が溢れ出しているのが自分でも分かる。
レオナの指を雄根のように見立て、きゅっと締め付けたかと思えば、娼壁は舐めしゃぶるように吸い付いて収斂した。蜜壺の入口を丹念に解されて、快楽の実を外からと内側からの刺激される。違和感が少しずつ快感へと姿を変えていき、二度目の絶頂へと押し上げられた後、レオナが小さく笑ったことに気が付いたユウは、彼の唇を啄み返しながら「……な、に?」と艶を帯びた息吐きをこぼしながら尋ねた。
「……気付いてんのか? もう三本入ってる」
え、と小さくこぼした後に、散り散りになってしまっていた意識を掻き集める。レオナに言われた通り、下肢に意識を注いだ時、中で彼が三本の指をそれぞれバラバラに動かしたのが分かった。いつの間に、と目を点すれば、くすりと微笑ったレオナは「痛くないな」と確かめるように訊いてきて、こくんと頷く。
入口をたっぷり解されたお蔭か、隘路を拡げるようにレオナの指が動いても痛みは感じられない。それどころか、外側からの刺激が無くても陰核の裏側を擦られるだけで、躰は快楽を受け入れるようになっていた。
「ッ、あっ……そ、れ、きもちぃ……かも」
「かも、ってなんだよ。こうか?」
ゾクゾクと愉悦が背筋を駆け抜けていくような気がして、言葉にしてみる。多分、と付け足したのは、まだよく分かっていないから。
するとレオナは、小さく笑った後、十数分もの間愛撫し続けて見つけ出した、ユウの弱点でもある箇所を指腹で少し強めに擦り上げた。鉤爪状に折り曲げられた指先が、柔らかく蕩けだした蜜襞を掻き毟るように動く。じゅぷ、じゅく、と蜜窟を攪拌される度に鳴り響く水音に、ユウは唇をわななかせながらも蕩けた嬌声を上げた。
「あ、んんっ……あ、んぁ、アッ、それ、きもちぃ、あッ、あんんぅッ」
次から次へと溢れ出す声を我慢することができない。トントン、とリズミカルに快楽の実を叩かれて、あまりの気持ち好さに頭の中が白んでいく。ぎゅっと瞑った瞼の裏側ではチカチカと星の瞬きが見えたかと思えば、腫れ上がったその場所をぐっとさらに強く押し上げられて、ユウは呆気なく高みへと引っ張り上げられた。
「~~~~ぁあッ‼ あっ、はっ、ん、ぁ……」
絶頂にわななく女筒がレオナの指をこれでもかと食い締め、吐精を強請るように蠕動する。止めどなく溢れ出る愛の蜜は、激しく掻き混ぜられたせいか白く粟立ったものが蜜孔から噴きこぼれてシーツや、レオナの手を汚していた。手首にまで垂れたそれを、レオナはぺろりと舐め上げる。
「ッ、あ……や、やだ、そんな舐めないで……」
それを目撃したユウは、ぎょっと目を瞠る。信じられない、と小さくため息を吐くが、何故かレオナは機嫌良さそうにユウの股座へと顔を近づけていく。何をする気だ、と狼狽えるユウが彼の名を口にして呼び止めるが、男は彼女の下肢を大きく押し開き、暴かれた蜜部に舌を這わせた。
「ひゃ、ああっ……や、やだっ…あ、レオナさ、ああっ」
指で散々嬲られた敏感な花芽をじゅるりと音を立てて啜られ、ビリビリと強烈且つ甘やかな快楽がユウに襲い掛かる。あっという間に快楽の坩堝へと引き摺り込まれて、ユウは藻掻くように手足をばたつかせた。シーツを掻き毟り、丸めた爪先で蹴り飛ばし、強すぎる愉悦をなんとか逃そうとする。
端正な顔立ちをした男が、秘めたる場所に顔を埋めて、溢れ出る体液を啜っている。昨夜入浴をしただけで、洗ってもいない場所に口づけられて、ユウは泣きたい心地に苛まれた。
「あっ、やあぁ……やめ、アアッ」
やめてほしいのに、やめてほしくない。だって気持ちが好いのだ。皮を剝かれて神経が剥き出しになった肉粒を舌先でねっとりと舐られて、肥大したそれを窄められた唇で扱かれる。どろり、と溢れた蜜液を飲み下されて、指で柔らかく解されていた蜜孔に潜り込んできた舌が得体の知れない生き物のように蠢く。そうして刺激された官能が、背徳感に苛まれていたユウの理性を灼き切った。
「アアッ――! い、くっ……イクッ、イクッ、んああっ……‼」
腹を波打たせながら、狂ったように女の声を迸らせる。ビクビクと身体を痙攣させながら気を遣る。だが、レオナの猛追は止まらない。反射的に逃げる腰を押さえ込まれてしまい、ユウは悲鳴のような声を上げて蜜を噴きこぼした。
「いやああっ……! あっ、アッ、れおな、さ、ああっ……やめっ、あ、おかしく、なるっ……」
絶頂を極めて敏感になった肉粒は、強く吸われれば痛いだけのはずなのに、それを上回る快楽に塗り潰されていく。頭が馬鹿になりそうなほど強烈な愉悦が恐ろしくて、狼狽える口は「やめて」と拒絶の言葉を吐くのに、躰はもっとと貪婪に悦を求めてしまう。レオナの口に陰部を押し付けるように腰は上がり、彼の顔を引き剥がそうとした手は男の髪の毛をくしゃりと掴むだけに終わる。
可愛げも何も感じられない、もはや嬌声とも言えないような声を上げながら、ユウは続けざまに頂きへと昇り詰めた。
「んあっ……アッ、れおなさ、れおなさんっ……」
果てた後の収縮を繰り返す陰部をぺろりと舐められて、びくぅっ! と身体が大きく跳ね上がる。縋るように男へ手を伸ばせば、息を乱したレオナがやや雑に唇を貪ってきた。下唇、上唇と交互に食まれて、伸ばした舌を唾液ごと吸われて、甘い電流が全身を駆け巡った。
パンパンに腫れ上がって膨張した熱塊が、陰部に擦り付けられている。綻んだ淫裂に切っ先を擦り付けられれば蜜窟が切なげに蠢き、すぐ上にある尖りを弾かれれば、押し出されたように甘い声がユウの口からこぼれだす。
熱を帯びた吐息に頬や唇を撫でられ、ユウは「れおなさん、きて……」と甘い声で強請った。淫らに腰を揺らして、充てがわれた肉棒を切望する。擦り付けられただけでも、蜜壺からはとろとろと淫水が溢れ出すし、指でも届かなかった最奥が先程から疼いて仕方が無いのだ。
下腹の奥にある臓器が、きゅんきゅんと甘く切なげな声を上げ続けている。それに、レオナの眉はずっと我慢しているように悩まし気に顰められていた。
それに応えるかのように、レオナはユウの顔中にキスの雨を散りばめた。目、閉じてろ。そう言いながら優しく瞼に唇を落とす。その間に彼がやっていたことに、ユウはちゃんと気が付いていた。
物を引き寄せる魔法で、引き出しの中に入っていたコンドームの箱を取り出し、レオナは慣れた手付きで己の雄根に薄い膜を被せる。痛いくらいに張り詰めたそれを、よく解れた蜜孔の入口に押し当てれば、蜜窟は緊張で強張ることなく奥へ誘うように蠢いた。
「――っ、ぁあ……」
そうして泥濘に沈められた楔に、ユウは呻きにも似た声を上げながら眉根を寄せた。
三本の指で入念に解されたとは言え、レオナの雄茎は比べ物にならないほど長大である。蜜孔周りの肉が引き裂かれる痛みと、男根を受け入れ慣れていない隘路が押し拡げられていく感覚に、身体は勝手に慄いてガクガクと震え出した。ぽろり、と眦に浮かんだ涙が零れるよりも前にレオナの舌先によって透明な珠雫は舐め取られ、痛い、と口にするよりも前に口を口で塞がれる。
舌を搦め取られて、上顎の感じる部分を突かれて。つんと上向く両方の乳首を摘ままれて、こりこりと指腹の上で転がされて。レオナはユウの冷めてしまいそうになっていた官能を刺激してきた。そうして呼び起こされた欲情のお蔭か、脈打つ度に鈍痛はするものの我慢できない程ではない。
「ゆっくり呼吸しろ」
と、言われた通りに、深呼吸を心がける。大きく吸って、吐いて……。レオナの呼吸に合わせるようにして、ゆっくりと深く息を吸って吐く。吐いた時に身体の力が緩んだのを見計らって、レオナは腰をゆっくりと押し進めてきた。指で届かなかった膣奥を押し拡げられ、また別の痛みが生まれた。
「……もうやめておくか」
「……嘘、まだ全部入ってないんですか……?」
恐怖を煽るだけだからあまり見るな、と言われたせいで、触るどころかこの目でしっかりと見ることさえ許されなかった。そのせいで、具体的な彼の大きさが分からない。口振りからするに、まだ全部を埋め切れていないようだが、胎の中は既に苦しいくらいいっぱいいっぱいだ。
自分の躰ではあるが、どこまで奥に受け入れることができるのかさっぱり分からない。必ず行き止まりはあるはずなのに、際限なく貫かれてしまいそうな気がして、ユウは狼狽える。
「んな焦んなくても、数を重ねりゃ挿入るようになるさ」
宥めるような口づけが額や鼻頭、唇や頬へと降ってきて、ユウはそれを返すように男の顔中に唇を押し付ける。ゆっくりと進めてもらえるのであれば、その方がありがたいに決まっている。是非ともお願いしたい、と力強く頷けば、くつくつと愉しげに喉奥で笑ったレオナが、トン、と指先で下腹部を軽く叩いた。
「いつかここで、死ぬほど善がらせてやるから覚悟しておけ」
いいな、と念を押されたが、なかなか素直に頷くことができない。死ぬほど、ってどんなの。
口淫だけで気が狂いそうなほど気持ちが好かったのに、この上があるのだろうか。ならば、最上級はどこにあるのだろう。
そんな疑問がぐるぐると頭の中で彷徨い出す。だが、しばらくじっとしていたレオナがゆっくりと動き出したことによって、すぐにそれは霧散した。
ぬちゅり、ぐちゅり、とレオナが抽挿を繰り返す度に聞こえてくる粘着質な音がユウの情欲を駆り立てる。嵩高が腹の内側を引っ掻くように抉る度に、彼女の細くしなやかな肢体が小刻みに震えた。
引き抜かれた時に感じるゾクゾクとした愉悦と、挿入された時に感じる内臓を押し上げられる時に感じる悦楽。そして、無意識のうちに雄根を締め付けることによって味わうことのできる充足感に、躰はどんどんと蝕まれていく。
「んっ、あっ…あっ、んんッ……」
ゆっくりだった律動が次第に早くなっていく。痛みを覚えた最深部ギリギリのところを亀頭で小突かれ、腫れぼったくなった女の弱点を掻き毟られる。
穿たれる度に声を上げているのは、突き上げられる度に自然と溢れ出してしまうから。甘く上擦った声は、快楽を得るたびに艶を帯びていく。
れおなさん、と男の名前を呼ぶユウの声は舌足らずで、どろりと蕩けていた。そんな声で呼ばれてしまえば、レオナはますます情欲を己の中心部に集めてしまう。
「あっ、んッ……おっ、きく…なった……?」
「お陰様で」
苦笑いを浮かべるように呟いたレオナが、困ったとばかりにため息を吐く。悩ましげに寄せられていた眉根に唇を寄せれば、さらに刻まれていた皺は深くなった。
「お前は随分と男を煽るのが上手いらしいな」
「なっ、そんなこと、ない……です」
だって知らないもん。レオナさん以外に、知らないから。
甘ったるく爛れた空気の中に溶け込むようにして消えてしまいそうな、そんなか細い声で呟く。知ってるくせに、と蕩けた瞳を細めれば、レオナは「あぁ、知ってる」と、たっぷり時間をかけてユウの口を甘く吸い上げた。
「もう少し動いていいか?」
そう問いかけてくる男の声に、ぞくりと背筋が震える。今までと何が決定的に違うのか、ユウにはよく分からなかったが、見上げた先にある眸の中に情欲の翳りがみえた。
興奮した獣のような、熱くて湿った吐息が頬や唇を撫でていく。大きな背中に縋るように手を回して、彫刻のように整った隆起を撫で上げる。少し擽ったかったのか彼の身体が震えて、胎内に埋められていた巨杭がさらに質量を増した。
こくこく、と何度も頷いて返事をする。――が、レオナが動き出したのはそれよりも先だった。
「んああっ! あっ…んんぅ……! アッ、んっ、んんっ」
突然の衝動に脳が激しく揺さぶられた。がくん、と背中から奈落の底へと墜ちていくような落下感に襲われ、ユウはレオナの背中に回した手にぎゅっと力を籠めて縋り付く。しっかりと背中はベッドに付いていて、吸い込まれることなど絶対にないのに。何故だか引き摺り込まれるような気がしてしまう。
「あ、んっ、あッ……や、れおなさ、あ、んんっ!」
自分よりも一回り以上大きな体躯にしがみ付いて、助けを乞うようにレオナの名を呼ぶが、男の激しい抽挿は止まらない。今まで丁寧にユウの感じる所を擦り上げていた動きは、ただ蜜窟をしゃにむに掘削するだけのものに変わってしまっている。愛蜜を掻き回し、好き勝手に暴れまわる雄根だが、手厚く愛でられていた肉筒はどこを擦られても愉悦を感じるようになっていた。
陽根を舐めしゃぶるように蠕動する蜜襞を乱暴気味に擦られ、柔らかく解れだした最深部の膣壁を穿たれ、かと思えば、陰核の裏側を力強く切っ先が引っ掻いていく。強弱を付けるように女筒を蹂躙されて、ユウは何度も小さく快楽を弾かせた。
「や、あんっ……アッ、あ、ああっ」
激しい快楽の波から逃れようと、のたうち回る腰を上から押さえ込まれて、迸った嬌声が潰れる。ユウが絶頂を迎えても、レオナの律動は止まらない。根元を喰い締めて、射精を誘うように媚肉が蠕動しても、レオナは噛み締めた唇の隙間から乱れた吐息をこぼすだけで達する気配をみせない。
ぎゅうぅ、と娼壁が雄根を締め付ければ、今にも弾けそうなほど膨らんだ漲りの太さや形がハッキリと伝わってくる。浮き出た脈の数まで分かりそうなほどなのに、依然としてレオナを果てへと導くことができない。腹に力を籠めて意識的に強く締め付けてみれば、彼の喉からはグルルルルと低い獣の唸り声が響いた。
「んあっ、アッ、れおなさ…んんぅ……好きっ、すき……」
背中に絡めていた腕を首回りへと移動させ、引き寄せた顔に何度も唇を押し付ける。我慢することなど到底できない喘ぎ声を洩らしながら、拙いキスを幾度となくほどこしていく。目尻や頬、鼻頭、顎先。見た目よりもふっくらとして柔らかい唇を、歯で傷つけてしまわないよう細心の注意を払いながらも、親鳥に餌を強請る雛鳥のようなキスをした。
「あっ、んッ…あっ、だ、してぇ……!」
精一杯のおねだりのつもりだった。挿入してから男の人が一回果てれば、それで性行為というものは終わりだと思っていたから。
「――ぐ、あッ……」
艶を帯びた低い呻き声と共に、薄膜越しに熱い飛沫が吐き出される。何度か緩く腰を打ち付けるようにして、全てを吐き出し切ったレオナが、深く息を吐きながら倒れ込んでくる。その重みと腹の中に広がる熱に、胸の裡には多幸感が満ち溢れた。
はぁ、はぁ、と乱れた呼気を分かち合うようにして、口を吸い合うだけの甘いキスを繰り返す。少しばかり質量を失った雄根が外へと出て行くと、ユウの蜜部からは蜜液と破瓜の血が混じり合った、粟立った薄桃色の液体が溢れ出してシーツを汚した。
「……痛むか?」
体調を気遣う優しい問いかけに、ユウはふるふると横に首を振る。
「少しヒリヒリするけど、痛くは無いかな……」
胎内を満たしてくれていたものを失い、陰部は切なげにヒクヒクと収縮を繰り返している。とろり、と蜜が溢れた淫裂を優しく指先で擽られて、反射的にピクピクと身体は随喜に震えてしまった。
汗ばんだ額にもキスをほどこされ、幸せいっぱい気分で離れていくレオナを見上げる。雄茎に取り付けていた薄膜を外し、慣れた手付きで口を結ぶと、それをベッド脇のゴミ箱へと抛り捨てる。
これで終わりか……。
そう思うと、ほっとしたような気分にもなるが、同時に心寂しくも思ってしまう。しゅん、と眉を下げていると、レオナは二袋目のスキンを開封している最中だった。
「――え」
「んだよ。物足りねえ、って顔してるくせに。不満か……?」
くすり、と笑うレオナの表情に綺麗な言葉を当て嵌めるなら、まさしく〝妖艶な微笑み〟といった言葉が相応しいだろう。餓えた獣のような獰猛な瞳に、収まったはずの欲情が芽吹いてしまう。
「――あ、や、うそ……」
「だから、そんな顔すんなって言っただろ?」
そうして瞬く間に雄槍で貫かれ、ユウは白い喉許を男の目の前に曝け出した。