【DC】恋するおまわりさん【安室透/降谷零】休止中
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「ドア、閉めますね」
「あ、はい」
彼が運転席に回り込んでいる間にシートベルトを締める。私がシートベルトをしっかり締めたのを確認した彼は、すぐに車を発進させた。いつもより大きく聞こえるエンジン音と早く感じるスピード感に、思わず車のメーターを見てしまう。法定速度をきちんと守った運転にも関わらず、なぜこんなにも胸騒ぎがするのだろうか。大丈夫だと思っていても、なんだかソワソワしてしまう。
「そんなに見られると照れますね」
「あ、ごめんなさいっ……」
「いえ」
安室さんに指摘され、咄嗟に視線を窓の外へと向ける。すぐ隣で微かに笑い声が聞こえた。込み上げてくる羞恥心を押さえようと、無意識に唇がきゅっと引き結ばれる。流れる景色をぼんやりと見つめては、時折窓に映る自分の顔見ては小さく肩を落とした。
――どうせなら、もっと可愛く生まれたかった。
今まで自分の顔について深く悩んだことはなかった。強いて言えばもう少し身長が欲しかったな、くらいだ。けれど、気になる人の顔がこうも端正な顔立ちをしていると話は別だ。
「どうかしましたか? 鼻、まだ痛みます?」
「いえ……ちょっと考えことをしてただけです」
赤が光る信号の前でゆっくりと車が停車する。この交差点を曲がれば病院はもうすぐそこだ。
そういえば、安室さんって彼女はいるのだろうか? そういった浮ついた話は梓ちゃんやおば様方の井戸端会議でも聞いたことはない。かと言って聞く勇気は無いし、例え聞けたとしてもその後の会話とかどうしたらいいのだろう。そもそも恋愛話を持ちかける時点で私が安室さんに気があることがバレてしまうのでは?
「……。……さん。悠月さん? 病院着きましたよ?」
「えっ!? あ、はいっ、ごめんなさい」
「ずっとぼんやりしていましたけど、体調優れませんか?」
「いえ、元気です。すっごく元気です。早く戻って報告書を作成しないと」
何度か名前を呼ばれ、ようやく我に返った私は急いでシートベルトを外した。心配そうな表情を浮かべる安室さんには悪いが、本当に体調は問題ない。
再度、「考えことをしていただけです」と答えれば「悩み事があるようでしたら相談に乗りますよ」と返されてしまった。貴方の事を考えていただけです、とは口が裂けても言えない。
「報告書の内容について考えていただけです」
そう言って笑い飛ばすと、安室さんは納得いかない、とでも言いたげな顔をしながらも身を引いてくれた。誤魔化せていない気しかしないのだが、今回は逃げた者勝ちである。
「送ってくださってありがとうございました。お帰り、気をつけてください」
「何言ってるんですか? 帰りも交番まで送りますよ」
「いえ、そこまでお世話になるわけには……。適当にタクシー拾って交番まで帰るので大丈夫ですよ」
お別れとお礼を言って、ゆっくりドアを開けて、後はもう病院に行くだけなのになかなか事が進んでくれない。ちっとも折れてくれない安室さんは、さっさと車から鍵を抜いて降りると私の方のドアを開けて手を差し出してくれた。まるで王子様のようなエスコートも今の私からしてみればとてもご遠慮願いたい。だって、もうこの時点で心臓が苦しい。
ちらりと安室さんの顔に目を向ければ、安室さんは私の視線にすぐに気がついたようでにっこりと目を細めた。その瞬間、ぎゅう――っと心臓が締め付けられ今まで味わったことのないような痛みを覚えた。駄目だ。心臓に悪すぎる。
お兄ちゃんやその友達も、顔面偏差値というものは上位に食い込んでいたとは思うが、ここまでトップレベルを生で拝見するのは安室さんが初めてなのだ。圧倒的経験値不足である。彼と初めて会った時は、確かにカッコイイとは思っていたが、ここまでじゃなかった。なるほど、恋ってやつはとてつもなく恐ろしいもののようだ。
だって、目の前のセカイが凄く輝いてみえる――。
真っ赤に火照った顔を隠すように俯く。車から降りるために差し出された彼の手はわざと取らなかった。座席に手をつき、体を支えてから立とうとしたまさにその時だった。ぐっと力強く腕を引かれ、その一瞬の為だけに浮遊感が体を襲った。咄嗟の出来事に声を出す暇なんて無く、飛び跳ねた心臓が鋭い痛みを訴える。
「っ……!」
「さ、行きましょうか」
「え、ちょ、ええっ……!?」
ネコ探しの時も、さっき鼻血を出した時にも思ったが、安室さんはこちらがツッコミを入れるタイミングを与えてくれない。腕を掴まれたかと思えば、さっさと離して車のドアを閉めて鍵をかける。病院へと向かう安室さんの背中を、私は慌てて追いかけることしかできなかった。
「あ、はい」
彼が運転席に回り込んでいる間にシートベルトを締める。私がシートベルトをしっかり締めたのを確認した彼は、すぐに車を発進させた。いつもより大きく聞こえるエンジン音と早く感じるスピード感に、思わず車のメーターを見てしまう。法定速度をきちんと守った運転にも関わらず、なぜこんなにも胸騒ぎがするのだろうか。大丈夫だと思っていても、なんだかソワソワしてしまう。
「そんなに見られると照れますね」
「あ、ごめんなさいっ……」
「いえ」
安室さんに指摘され、咄嗟に視線を窓の外へと向ける。すぐ隣で微かに笑い声が聞こえた。込み上げてくる羞恥心を押さえようと、無意識に唇がきゅっと引き結ばれる。流れる景色をぼんやりと見つめては、時折窓に映る自分の顔見ては小さく肩を落とした。
――どうせなら、もっと可愛く生まれたかった。
今まで自分の顔について深く悩んだことはなかった。強いて言えばもう少し身長が欲しかったな、くらいだ。けれど、気になる人の顔がこうも端正な顔立ちをしていると話は別だ。
「どうかしましたか? 鼻、まだ痛みます?」
「いえ……ちょっと考えことをしてただけです」
赤が光る信号の前でゆっくりと車が停車する。この交差点を曲がれば病院はもうすぐそこだ。
そういえば、安室さんって彼女はいるのだろうか? そういった浮ついた話は梓ちゃんやおば様方の井戸端会議でも聞いたことはない。かと言って聞く勇気は無いし、例え聞けたとしてもその後の会話とかどうしたらいいのだろう。そもそも恋愛話を持ちかける時点で私が安室さんに気があることがバレてしまうのでは?
「……。……さん。悠月さん? 病院着きましたよ?」
「えっ!? あ、はいっ、ごめんなさい」
「ずっとぼんやりしていましたけど、体調優れませんか?」
「いえ、元気です。すっごく元気です。早く戻って報告書を作成しないと」
何度か名前を呼ばれ、ようやく我に返った私は急いでシートベルトを外した。心配そうな表情を浮かべる安室さんには悪いが、本当に体調は問題ない。
再度、「考えことをしていただけです」と答えれば「悩み事があるようでしたら相談に乗りますよ」と返されてしまった。貴方の事を考えていただけです、とは口が裂けても言えない。
「報告書の内容について考えていただけです」
そう言って笑い飛ばすと、安室さんは納得いかない、とでも言いたげな顔をしながらも身を引いてくれた。誤魔化せていない気しかしないのだが、今回は逃げた者勝ちである。
「送ってくださってありがとうございました。お帰り、気をつけてください」
「何言ってるんですか? 帰りも交番まで送りますよ」
「いえ、そこまでお世話になるわけには……。適当にタクシー拾って交番まで帰るので大丈夫ですよ」
お別れとお礼を言って、ゆっくりドアを開けて、後はもう病院に行くだけなのになかなか事が進んでくれない。ちっとも折れてくれない安室さんは、さっさと車から鍵を抜いて降りると私の方のドアを開けて手を差し出してくれた。まるで王子様のようなエスコートも今の私からしてみればとてもご遠慮願いたい。だって、もうこの時点で心臓が苦しい。
ちらりと安室さんの顔に目を向ければ、安室さんは私の視線にすぐに気がついたようでにっこりと目を細めた。その瞬間、ぎゅう――っと心臓が締め付けられ今まで味わったことのないような痛みを覚えた。駄目だ。心臓に悪すぎる。
お兄ちゃんやその友達も、顔面偏差値というものは上位に食い込んでいたとは思うが、ここまでトップレベルを生で拝見するのは安室さんが初めてなのだ。圧倒的経験値不足である。彼と初めて会った時は、確かにカッコイイとは思っていたが、ここまでじゃなかった。なるほど、恋ってやつはとてつもなく恐ろしいもののようだ。
だって、目の前のセカイが凄く輝いてみえる――。
真っ赤に火照った顔を隠すように俯く。車から降りるために差し出された彼の手はわざと取らなかった。座席に手をつき、体を支えてから立とうとしたまさにその時だった。ぐっと力強く腕を引かれ、その一瞬の為だけに浮遊感が体を襲った。咄嗟の出来事に声を出す暇なんて無く、飛び跳ねた心臓が鋭い痛みを訴える。
「っ……!」
「さ、行きましょうか」
「え、ちょ、ええっ……!?」
ネコ探しの時も、さっき鼻血を出した時にも思ったが、安室さんはこちらがツッコミを入れるタイミングを与えてくれない。腕を掴まれたかと思えば、さっさと離して車のドアを閉めて鍵をかける。病院へと向かう安室さんの背中を、私は慌てて追いかけることしかできなかった。